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「Thief / シーフ」ファーストインプレッション[PS4]※訂正・追記 [ゲーム]

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開発 Eidos Montreal
販売 Square Enix
エンジン Unreal Engine 3

※音声部分についての訂正
詳細は別項で書くがとり合えず本記事での音声について書いている部分は全て無視して欲しい。

本記事を書いた後、MGS5を購入し起動して冒頭のカットシーンを観てみたらキャラクターの音声が再生されない現象が発生し、その時点で今まで何が起こっていたのかがはっきり分かったのでここに書いておく。

MGS5の冒頭のカットシーンは予告編として公開された「Metal Gear Solid Ground Zeroes Trailer」と同じモノなのだが以前にこれを観ていたお陰で製品版で再生される音声が違うことに瞬間的に気付けたのである。そして「Thief」に関しては予告編等は特に見ず比較材料が無かったため「そういうもの」だと納得してしまい、結果としてそれがそのまま以下の感想になってしまった。

では何が起こったのか。それは「HDMI出力の音声をヘッドホンで聴いていた」事が原因である。詳細を書くと長くなるので省くが、HDMIでは無く光デジタル出力からヘッドホンに繋いでみたところMGS5は勿論Thiefの音声もまともに再生されるようになったという話である。「まとも」にというのは本記事で書いていた音声の不具合、サウンドデザインに関する不満は無くなったというワケであり、足音もしっかり聴こえているという事である。なので本記事にある音声についての部分は全て無視して欲しいのと、もしヘッドホン使用で同様の症状が出たような人はHDMIでは無く光デジタルで出力すれば問題ないので試して欲しい。多分「KNACK」でキャラクターの声が聴こえないという人は結構いたはずなので。

それと「Trueaudio」についてだが恐らくPS4版では実装はされていない。これについてはPC版のTrueaudio対応パッチがつい先日配信されたばかりである事、そしてPS4に搭載されているチップはTrueaudio対応ではあるが「PS4版のThiefが実装タイトルである」という事は全くアナウンスされていないからである。要は私の早とちりである(猛省)。
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ステルスアクションゲーム「thief」シリーズ第四作目。
PS3、PS4、Xbox360、Xbox oneでのマルチプラットフォームとして開発。

「thief」シリーズは初体験。
「COD:GHOST」「battlefield 4」「KILLZONE SHADOW FALL」「ASSASSIN`S CREED 4」「TOMB RAIDER」がある中何故本作を選んだのか。
それは偏に本作が現状唯一の「True Audio」実装タイトルだからである。


True audioについては以下参照。
AMDがRadeon R9&R7の一部モデルに搭載した「TrueAudio」とは何か。その秘密に迫る

True audioの効果の程についてはyoutubeに公開されている動画からしか分からなかったのだが、音響へのリソースが増える事によってより複雑な処理が可能となり前後左右だけでなく上下への空間表現が可能となっている。とは言っても「ホロフォニクス」の様なモノが期待できるワケではなく、現状ではあくまで「可能になった」程度として考えたほうが良いだろう。そう、察しの通り本作「Thief」もTrue Audio実装タイトルではあったのだが、期待したような音響効果による上下への空間表現が可能になったかというと実際はそれほどでもない。というか音声処理に関しては少々首を捻ってしまう点が幾つかあるくらいで、寧ろ良く「出来ていない」。

先ず、プロローグでの「事件」が起こるカットシーンでvoiceトラックのみが鳴らないバグの発生(再現性については未確認)。次にvoice、SEを問わずプレイヤーの背後に音源が移動した場合、音源との距離に関わらず音量がゼロになる現象。そして窓越しに聴こえる会話が部屋の反響や障害物による音響の変化が無く耳元で話しているかのような雑な処理。他にもカットシーン含め他のゲームであれば鳴っているであろうSEが表現されていない違和感。そもそもプレイヤーの足音が全く聴こえないので臨場感、没入感が無い。

True AudioはCPUの処理を低減するという触れ込みだったが、本作ではそもそもサウンドデザインの根本がおかしいので空間表現以前の問題である。序盤で銀行に侵入するサブミッションがあり、その銀行の金庫内では足音が反響するのが聞こえるのだが何故か音量が異様に小さいという良く分からないデザインになっており、正直意図が全く掴めない。

まあ、まだ序盤なので今後のステージでどの様に音響が変化していくのか分からないが、現状では正直本作のサウンドデザインは失敗していると言わざるをえない。この点「SKYRIM」などは音量のパラメータに「足音」の項目が設定されていたのだが、仮にステルスアクションを名乗るならばそういう細かい点にこそ気を使って欲しかった。ゲーム中の足音を大きめに聴きたいという嗜好をもっているのが私だけなのかもしれんが。

さて、一人称ステルスアクションである本作。
システム的には直近のタイトルとして同じくEidos Montreal開発の「Deus Ex: Human Revolution」(2011年)とArkane Studios開発の「Dishonored」(2011年)をイメージしてもらえば良いだろう。特に19世紀ヨーロッパ的な世界観含めゲームデザインは「Dishonored」に非常に近い。「Deus ex:HR」のようにビハインド視点は無く、終始一貫して一人称視点でゲームを進めることになる。
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タイトル通り本作は「盗む」事が基本となり、主人公ギャレットは町にそびえ立つ時計塔を拠点に盗賊ギルド的な裏社会の人間から仕事を引き受けながら物語を進めていく事になる。
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背後に立ってのボタンの長押しでの窃盗。武器取得後はテイクダウンも可能。
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物を投げて敵の注意を逸らす事が出来る。
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扉や金庫の開錠操作は「fallout3」に近い。
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絵画の裏にある隠し金庫などは額縁にそってボタンを探すというありそうでなかった映画的演出に。
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ステージには高低差があり「アサシンクリード」におけるパルクールの要領で移動することになる。移動手段としての道具は今後増えていくのだろうが、序盤では弓からロープを繋いだフックを発射して移動することが出来る。
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道具は10スロットのイベントリで管理され、PS4ではスロットの配置がタッチパネルにそのまま調整されており直感的な操作が可能となる。
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勿論スティック操作への切り替えにも対応している。
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ギャレットの特殊能力を発動すると利用可能なオブジェクトや宝がハイライト表示される。
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60fps(可変)というだけあって操作性は非常に良く1080Pの解像度と相俟ってステルスアクションとしての臨場感、没入感はかなりのものである。「Dishonored」の時に感じていたのだが、実は一人称視点というのはステルスアクションに不向きであり他のFPSタイトルの様に「走る→撃つ→隠れる」というような単純なルーチンだけで構成出来るモノではない。隠れるという行為は肉体を分節的にかつ微細にコントロールするものであり、二本のスティックと僅かなボタンだけではとても人間の複雑な動きを表現することは出来ない。そして一人称視点というゲームデザインは「物陰に隠れた場合にその向こう側を確認する術が殆ど無い」という構造的な問題を抱えてもいる。これは当たり前の話ではあるのだが単純な話でもない。

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三人称視点である「メタルギアソリッド」(98年)がこの問題を解決して以降、一人称、三人称を問わず「隠れた際のカメラ移動」というシステムは今や当たり前のものとなっている。先に挙げた「Deus Ex:HR」などは一人称視点でありながら上記のような場合はビハインド視点を部分的に採用するなどして、一人称視点でのステルスアクションとしての可能性を広げようとしている。しかし本作「Thief」ではそういった部分的なビハインド視点は採用せず、如何なる場合でも一人称視点のままというストイックな仕様になっている。別にこれ自体は良い。一人称視点であってもハイテク機器、特殊能力などで物陰の向こう側を見る方法は幾らでもある。逆に言うとそういった方法を採らない限り「隠れながら物陰の向こう側を見る」という単純な行為が「出来ない」のである。
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どういうことか。
例えば、廊下の曲がり角に隠れた際に向こうから歩いてくる人間を確認するという映画などでも良くあるシチュエーションを思い浮かべて欲しい。ハイテク機器や特殊能力も無く頼れるのは自身の肉体のみとなった場合、向こう側の様子を確認する方法は基本的には「目視」しかない(スカウトを体得しているような人は別だが)。そのため向こう側から動きを察知されないように壁の切れ目から目視できる程度に僅かに顔を出さなければならない。

この時、人は「この程度ならば向こうからは分からないだろう」と計算しながら顔を出す程度を決めているが、ばれるかどうかは実のところシチュエーション毎に全く異なるもので、運も大きく左右してくるものである。だが、現実的に考えると廊下の曲がり角から顔を出した場合などは、どの程度であれ向こうからは丸見えであり、そもそも相手がどこにいるのか、どの方向を向いているのかが分からない以上は迂闊に様子も見れないのもである。そしてその緊張感こそがステルスアクションというジャンルの醍醐味でもある。

しかし、そのような「見つかる可能性が高い」という構造的な危険性が常に存在してしまうとゲームとしてはストレスフルなモノになりかねない。そのためゲームとして成立させるため「敵AIの反応をある程度まで落とす」という解法を取らざるをえないのだが、こうなると逆に没入感が削がれゲームのシステム的な側面が見えてしまうのである。

「Dishonored」のプレイ中、上記のシチュエーションに似たような状況に置かれたのだが、この時は壁の向こう側の状況が分からずとりあえず角を曲がろうとしたら3m程向こうから敵兵が歩いてきており、現実的に考えれば半身飛び出た私の身体は敵兵から完全に見られていたはずなのだが、その時は特に何事も無く敵兵は決めれたルートを巡回していたのである。この時の「人によって作られたゲームをしている現実」に引き戻された感覚を何と表現したものか。そう、ステルスアクションにおけるゲーム性というモノを考慮するとどうしてもプレイヤーに配慮したレベルデザインにしなければならないため、どうしても「ゲーム的」な作りが浮き彫りになってしまうのである。

前述したように本作は「Dishonored」とシステムが非常に良く似ており、敵の警戒レベルの表現として頭上に三つのアイコンを表示し、三つ共色が染まると発見された状態になるというモノになっている。これは、この視覚的な情報の提供によってプレイヤーが現在どの様な状態にあるかを分かりやすくするという、ステルスアクションにおける敵キャラクターの視覚情報の視覚化の役割を果たしている。これによってプレイヤーへ攻略方法が提示される反面、UIの視覚化に伴う臨場感、没入感の減退という構造的に避けられない問題も発生する。

攻略のためのUIを優先するのか、臨場感、没入感のために情報を制限するのか。この辺り、肉体の義体化(サイボーグ化)とサイバーパンクをテーマにゲームデザインが成された「Deus Ex:HR」は相性が良かったように思える。中世ヨーロッパ的な世界観である「Dishonored」、そして本作「Thief」は画面にUIが表示されているその時点で「作り物としてのゲーム」という意識からは逃れることは出来ない。因みにどちらも設定項目からUI表示を全てOFFにすることは可能ではあるのだが初見では当然無理な話である。

2011年というハードの成熟期から生まれた「Dishonored」「Deus Ex:HR」はステルスアクションとしてどちらも素晴らしい作品だった。マルチタイトルとは言えその前身がある以上「Thief」には前述したような構造的な問題に縛られない、より優れた一人称視点のステルスアクションゲームを期待していたのだが、結果として出てきたのは「グラフィックの良くなったDishonored」だった。1080Pで表示される本作の町並みの空気感は本当に素晴らしい。高精細なグラフィックというのはそれだけで臨場感が増すものであり、一人称視点のゲームにとっては正に水を得た魚の如くである。

だがゲームデザインは旧態依然の代わり映えのしないものだった。面白くないわけではない。事実それなりに楽しんではいる。だが先のサウンドデザイン含め長いロードなど粗が見える事も確かであり、次世代機のステルスアクションかと言われると正直首を捻りたくなる部分も多い。今後ゲームを進めるにつれ多彩なステージが登場するのかもしれないが基本となる「隠れる」というゲームデザインがこの調子ではゲームとしての面白さにはそれほど期待はできないだろう。

以下クリックで拡大
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