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[2017年~2019年] 最近のIMAX事情 [映画]

前回『なぜ『ダンケルク』を観るために海外のIMAXシアターへ行くのか。』

最近IMAXについての記事を書いていないと思ったら2017年の『ダンケルク』以降ほぼ何も書いていなかったのでそろそろ更新。流石に更新をサボりすぎた。『スター・ウォーズ エピソード9』はどの映画館で観ればいいのか。でも多少触れたので重複してしまう部分もあるが御容赦の程を。

 
『ダンケルク』の後はIMAX社も経営上での変動が色々あってか中々面白いイベントが目白押しだった。先ず2018年11月23日に109シネマズ名古屋と川崎を皮切りに各社シングルプロジェクターのIMAXレーザーを導入し始める事となった。IMAXシングルレーザーはGTツインレーザーとは異なり6Pではなく3P RGBの4Kレーザー光源を使用するタイプで1台による4K3D上映(円偏光)が可能となっている。24m以下の小型IMAXスクリーンへの導入を基本とするものなのでGTレーザーの様に2台のプロジェクターを必要としない。そのため導入コストも下がっている。3DメガネもGTレーザーが使用しているドルビーライセンスが必要な高価なものではなく、安価な従来のプラスチックのタイプが使用されている。
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IMAXシングルレーザー

今年の夏にはまさかの(失礼)沖縄にもIMAXレーザーが導入され今年中には北は札幌から南は沖縄までIMAXレーザー館が誕生する事になる。2015年にエキスポIMAXが誕生して以来上映施設の地域格差は広がる一方な印象だったがドルビーシネマ含め各地に様々な映画館、上映施設が誕生しており映画館で映画を観る事の価値がここにきてまた盛り上がってきている様に感じる。

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グランドシネマサンシャイン

そして2019年7月18日に東京の池袋に誕生したグランドシネマサンシャイン。これまではIMAX用の1.43:1の上映を観るためには大阪のエキスポIMAXまで行く必要があったがIMAXレーザーGTプロジェクターが漸く東京にも導入される事となった。スクリーンサイズも25.8m×18.9mとエキスポIMAXとほぼ同じであり、他にもRGBレーザープロジェクターやドルビーアトモスの導入等非常に設備の充実した映画館に仕上がっている。

IMAXレーザーGT
・109シネマズ大阪エキスポシティ
・池袋グランドシネマサンシャイン

IMAXシングルレーザー
・109シネマズ菖蒲
・109シネマズ川崎
・109シネマズ名古屋
・ユナイテッド・シネマ PARCO CITY 浦添(沖縄)
・シネマサンシャインららぽーと沼津 ※10月4日開業
・ユナイテッド・シネマ テラスモール松戸 ※10月25日開業
・ユナイテッド・シネマ札幌 ※11月導入

IMAX社曰く今後日本でIMAXレーザーGTの導入予定は無いとの事で暫くは既存のIMAXデジタルシアターのレーザー改装がメインになっていくらしい。かつてIMAX 70mmを導入していた札幌IMAXが改装されるあたり、今後品川IMAXもレーザーの改装が行われるのだろう。

日本以外のIMAXシアターの動きとしては2017年7月18日に韓国のCG龍山アイパークモールがIMAXレーザーGTを導入してリニューアルオープンを迎えている。こちらは22.4m×31mというアジア圏最大のスクリーンサイズとなる。2020年にはドイツのTraumpalast Leonbergに世界最大となる横幅38mのスクリーンを備えるIMAXレーザーGTシアターが誕生する予定となっている。
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Traumpalast Leonberg完成予想図

2016年に取り壊された世界最大スクリーンのシドニーIMAXは2020年末の完成を予定しておりスクリーンサイズは現段階ではまだ発表されていない。当初の予定では29.42m×35.73mよりも一回り小さくなるという発表があったが今では30m級のスクリーンも珍しくなくなったので同程度の大きさを保持して欲しいところである。因みにIMAX 70mm映写機を再び導入するかどうかもまだ正式に発表されていない。
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THE RIBBON(シドニーIMAX)完成予想図

日本以外でも既存のIMAX館がIMAXレーザーに換装される流れは起きており、それはIMAX 70mmも例外ではない。『ダンケルク』以降幾つかのIMAX 70mm常設館がレーザーに換装されており今後のIMAX 70mm上映作品がどの様な影響を受けるかは分からない。なお日本では鹿児島県に位置する鹿児島市立科学館が唯一オムニマックスによるIMAX 70mm上映を行っており、今年の9月までは『アポロ11』のIMAX 70mm上映が行われている。スクリーンサイズは直径23mだが体感サイズはエキスポIMAXを余裕で超えるくらい大きいので気になっている人は是非。縁あってオムニマックスの映写室内部を特別に見せて頂いたが実物のIMAX 70mm映写機は物凄く大きいし稼動音も凄い。実際に触れてみると成る程確かにこれはランニングコストがかかる事が良く分かる。
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鹿児島市立科学館のオムニマックスドームスクリーンと映写機

IMAX撮影作品については『ダンケルク』以降も相変わらずのペースで制作されておりフィルム、デジタル共にかなりの数になっている。残念ながら2019年はIMAX65mmカメラ撮影の長編作品は無かったが2020年公開の作品では既に3作品がIMAX65mmカメラで撮影されている。

撮影と上映の両方がIMAX用のフィルム(65mm/15p,70mm/15p)で行われた作品。
下記の作品は全て1.43:1に対応している。
・『ダークナイト』(2008)
・『トランスフォーマー リベンジ』(2009)
・『ミッション:インポッシブル ゴーストプロトコル』(2011)
・『ダークナイト ライジング』(2012)
・『ハンガーゲーム2』(2013)
・『スタートレック イントゥダークネス』(2013)
・『インターステラー』(2014)
・『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015)
・『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)
・『ダンケルク』(2017)
・『ファースト・マン』(2018)

・『Daughter of Dismay』(2019) ※秋頃上映予定,短編
・『007 No Time to Die』(2020/04/08) ※予定
・『ワンダーウーマン1984』(2020/06/05) ※予定
・『TENET』(2020/07/17)

『007 No Time to Die』と『ワンダーウーマン1984』については1.43:1に拡大するかどうかは不明だがほぼ確定と言っても良いだろう。しかしながら4月、6月、7月と連続して公開されるのは前代未聞でありスケジュール的にもうちょっと何とかならなかったのかと言わざるを得ない。これは観るほうも大変だ。

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昨年はまさかのデミアン・チャゼルがIMAX撮影を行った『ファースト・マン』が1.43:1で上映され驚いたものだが本作のIMAX拡大シーンは10分程度だったのは少々残念ではあった。とはいえ宇宙モノとIMAXフォーマットの相性の良さは抜群でノイズの無いクリアな映像は正にIMAX向きのものだった。なお昨年は日本でもIMAXカメラで撮影された『アメリカン・ミュージック・ジャーニー』が1.43:1で上映されたが『アメリカ・ワイルド』以降IMAXドキュメンタリーは全く公開されていないのでこれからに期待したいところ。

そういえば『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』では前作に引き続きIMAX65mmカメラでの撮影が行われたが1.43:1拡大せずに全編2.39:1の画郭で統一されての上映となってしまった。公開数ヶ月前にIMAXカメラが使われている旨のアナウンスがあった後IMAXフォーマットの画像が公開されたが結局それはファンメイドによるデマだった事が公開直前に判明する(気付いたのは私自身)という騒動があり公開前から微妙な空気になってしまった。

最新作である『スカイウォーカーの夜明け』では35mmと65mmによる撮影が行われた旨のアナウンスがコダックのツイッターアカウントから正式に行われたが65mm5p(2.20:1)なのかIMAX65mm(1.43:1)なのかはまだ分からない。が、『フォースの覚醒』がそもそも10年振りに復活した『スター・ウォーズ』最新作というイベント性の非常に高い作品という側面があったからこそ、1.43:1というアトラクション的な映像が用いられた可能性が高いので、今作も全編2.39:1に統一して上映する可能性は高い。何より現時点で何もアナウンスが無いのである。シリーズを締めくくる作品という事を考えると1.43:1に拡大する可能性は低いように思える。

因みに上記のリストにある『Daughter of Dismay』とはSodom & Chimera Productionsが制作しているIMAX65mm撮影による自主制作の短編ホラー作品である。個人的に注目していたプロジェクトで昨年から本格的にスタートして今年の秋頃から各地の上映イベント等に出展する予定となっている。自主制作かつ短編なので大手配給による上映が行われないため上映自体は小規模になってしまうが35mm、70mm、IMAX 70mm、IMAXデジタルによる上映を予定している。先日行われたFrightFestのプレミア上映ではIMAXレーザーによる上映が行われたとの事。日本で上映される事は先ずありえないが機会があれば観てみたい。なお日本語で本作についてツイートしているのは世界中で私だけである(寂しい)。


IMAXデジタル撮影作品についてはIMAXデジタルカメラ自体があまり使われないので相変わらず数は少ない。特にIMAX 3Dデジタルカメラは最近では中国やロシアでしか使われておらずハリウッドではもう使われていない。『最後の騎士王』もALEXA IMAXカメラを2台を使い右目用と左目用で3D撮影しており『ロストエイジ』のIMAX 3Dデジタルカメラは使っていない。まああれは4Kでしか撮影出来ないのでやむを得ないのだが。そのため『アベンジャーズ』2作も全編ALEXA IMAXカメラが使用されている。
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上から順にIMAX3Dデジタルカメラ、ALEXA IMAXカメラ、ALEXA IMAX 3Dカメラ

IMAXデジタルカメラで撮影され1.90:1で上映された作品。
・『トランスフォーマー ロストエイジ』(2014)
・『フライト・クルー』(2016)
・『キャプテン・アメリカ/シビル・ウォー』(2016)
・『ハドソン川の奇跡』(2016)
・『トランスフォーマー 最後の騎士王』(2017)
・『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018)
・『アベンジャーズ エンドゲーム』(2019)


非IMAX撮影のIMAXフォーマット作品は相変わらず多い。MCUが1.90:1に拡大する事を興行収入上の利点と考えたのか2017年以降のMCU作品はほぼ1.90:1に拡大するようになっている。そのお陰もあってか『エンドゲーム』は歴代の興行収入で見事1位を獲得するに至った。MCUは今後も続いていくのでMCUが続く限り1.90:1作品も定期的に供給されるのだろう。

さて、2016年に公開された『ゴーストバスターズ』はIMAXレーザーGTで上映された際1シーンだけ1.43:1に拡大したらしいが(私は観れてない)ここにきて漸くデジタル撮影での本格的な1.43:1拡大作品が誕生する事となった。そう、『ライオン・キング』である。
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『ライオン・キング』は劇中の1ショットを除いて全てCGで制作されているため厳密にはカメラで撮影されてはいないのだがデジタル制作の作品でも本格的な1.43:1フォーマットが利用できる事がこれで判明した事になる。本作以外にも池袋グランドシネマサンシャインの開業記念作品として短編の『Transphere』が全編1.43:1として制作されている。日本映画でIMAX1.43:1の作品が制作されたのは本当に久しぶりの出来事である。『ライオン・キング』は劇中の30分のシーンが1.43:1に拡大するがこれは偏に監督がジョン・ファブローだったからだろう。今後他の監督の下で1.43:1に対応する作品が生まれるかどうかは分からないが対応コンテンツの充実のため期待するとしよう。

因みにIMAXデモ映像である『Infinite Worlds』は全編ALEXA IMAXカメラで撮影されており6560×3110のフレーム内で1.43:1にトリミングした映像を使用している(下画像)。近年の高画質なデジタルシネマカメラはセンサーサイズが2:1に近いので1.43:1にフレーミングしても十分解像度が稼げる筈だと常々思っていたが漸くこういった使い方をする作品が出てきたのでこれにも今後期待したい。
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『Infinite Worlds』撮影風景

非IMAX撮影のIMAX拡大フォーマット作品。(1.43:1、1.90:1)
・『アバター』(2009)
・『トロン: レガシー』(2010)
・『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝』(2011)
・『アンダーワールド 覚醒』(2012)
・『タイタニック』(2012)
・『プロメテウス』(2012)
・『アメイジング・スパイダーマン』(2012)
・『スカイフォール』(2012)
・『ホビット 思いがけない冒険』(2012)
・『オブリビオン』(2013)
・『ホビット 竜に奪われた王国』(2013)
・『アイ・フランケンシュタイン』(2014)
・『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)
・『ホビット 決戦のゆくえ』(2014)
・『セブンス・サン 魔使いの弟子』(2014)
・『トゥモローランド』(2015)
・『ゴーストバスターズ』(2016)
・『ドクター・ストレンジ』(2016)
・『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)
・『美女と野獣』(2017)
・『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』(2017)
・『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017)
・『キングスマン ゴールデン・サークル』(2017)
・『ブレードランナー2049』(2017)
・『オンリー・ザ・ブレイブ』(2017)
・『マティ・ソー ラグナロク』(2017)
・『メイズ・ランナー: 最期の迷宮』(2018)
・『ブラック・パンサー』(2018)
・『アントマン&ワスプ』(2018)
・『ミッション・インポッシブル フォールアウト』(2018)
・『アイアンマン』(2018) ※新たにIMAX DMR処理
・『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使い』(2018)
・『バーフバリ 王の凱旋 完全版』(2018)
・『アクアマン』(2018)
・『アリータ バトルエンジェル』(2019)
・『キャプテン・マーベル』(2019)
・『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』(2019)
・『ライオン・キング』(2019) ※1.43:1
・『Transphere』(2019)※1.43:1,短編

・『Top Gun: Maverick』(2020) ※予定

上記の非IMAX撮影作品は日本でIMAX上映されていないものも含めているので悪しからず。個人的には『アイアンマン』のIMAXリマスター版が是非とも観たかったのだが結局日本ではMCU10周年記念上映が行われる事は無かった。まあ『バーフバリ 王の凱旋 完全版』が日本でもIMAX上映されたので十分満足はしているのだが。

今後のIMAX上映作品の目玉は何と言ってもノーラン新作『TENET』だろう。ノーランはIMAX 65mm撮影作品は例外なくIMAX 70mmで上映しているので今回も間違いなくフィルムで上映されるだろう。ノーラン作品が他とは決定的に異なるのはVFXカットを6Kの解像度で制作してIMAX 65mm撮影部分は8Kスキャンを行い、非VFXカットはDIプロセスを経ずに撮影ネガから直接上映プリントの制作プロセスを行っているという点である。『ダンケルク』同様『TENET』でも65mm5pとIMAX65mmカメラによる撮影を行っているので今作でも同じ制作プロセスをとるだろう。まだ作品の内容は全く分からないが楽しみで仕方が無い。

『007 No Time to Die』と『ワンダーウーマン1984』は共にIMAX65mmカメラで撮影されているが『スペクター』が4KDIだった事から007新作も4KDIである可能性が高い。こちらも映像面で期待できそうだ。『ワンダーウーマン1984』は監督と撮影監督が前作から引き続き参加しているので映像の質感の点では心配無さそうである。IMAXカメラを生かした映像になっている事を期待したい。

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そういえば非IMAXフォーマットの作品ではあるが『ブレードランナー ファイナルカット』がこの度日本でもIMAXで上映される運びとなった。当時は北米限定でのIMAX上映だっただけに日本での上映は諦めていたのだが漸く念願叶ったりである。2019年のロサンゼルスの空撮パートは大スクリーンでこそ生きるというもの。『ブレードランナー ファイナルカット』は4KDIであるためIMAXレーザーではネイティブ4Kでの上映となる。残念ながらエキスポIMAXでの上映は無いが可能な限り大きなスクリーンで観てみたい。

参考資料
【独占インタビュー】IMAXはなぜ凄い?IMAX社グローバル・セールス最高責任者がその真髄を明かす
THE RIBBON
World’s Largest IMAX Screen to Open in Germany in 2020
AVENGERS: INFINITY WAR captured with ALEXA IMAX[レジスタードトレードマーク] cameras
‘Tenet,’ Explained: 11 Things You Need to Know About Christopher Nolan’s Action Epic
WORLD PREMIERE - DAUGHTER OF DISMAY
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