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デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム! [アニメ]

名作との呼び声の高い細田守監督作「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」。

細田監督作品としては「オマツリ男爵」の前作に位置づけされる本作であるが、この頃から既に作品全体に「細田色」が出ている。それは演出や脚本に留まらず、作画や配色にまで及び、劇場公開二作目でありながら既に細田監督は自身のスタイルを確立している。そして、それは現在公開中の「サマーウォーズ」の予告編を見る限りでも全く変わっていない事が良く分かる。

私は当時リアルタイムで「デジモン」を見てはいたが、毎週テレビにかじり付いていたようなものではなく夏休みに友人の家に遊びに行った時に観ていた位なので、TVアニメの「デジモン」についてはあまり詳しくはない。そのため、本作を観るにあたってその情報不足が足枷にならないかと危惧していたのだが、結果としてそのような事は無かった(ちなみにゲームは結構やっていた)。

作品内では説明口調にならないように的確にかつ必要最低限に「デジモン」の世界観、キャラクターの人物像、関係性が描かれており、「デジモン」とは10年振り位の再会になる私にも非常に分かりやすいものとなっていた。ただ、行間を読むのが苦手な人にとっては若干の説明不足感はあるかもしれない。

ストーリーはまあ、情報遮断至上主義の私なのでそこは個人で調べて欲しいが、知っても知らなくても楽しめる位の特筆すべき所のない、よくある少年漫画のストーリーであると言いたい。と、いうような事を書くとまるで非難しているように聞こえるかもしれないが、決してそんな事は無い。寧ろ問題なのは前回レビューした「オマツリ男爵」同様その演出方法である。

「オマツリ男爵」ではそのストーリーの必然からか至る所に死のイメージが溢れていたが、実はその傾向は既に本作の頃から出ている事が分かる。

以下ネタバレ

流石に「オマツリ男爵」程多分にあるわけではないが本作には死のイメージだけでなく、ホラー的な演出も幾つか観る事が出来る。例えば30:28での増殖する敵を全て倒す事を提案した後の光子郎が振り向く時の間、音の抜き方、振り向くタイミングなど、これはどう考えてもホラー映画における「恐怖の対象」が振り向く時の演出である。

また作品全体で為されるネット空間と現実での演出の差として、ネット空間では音楽がかかり画面がめまぐるしく動いているのに対して、現実世界では無音状態で太一と光子郎が部屋に座っているのを俯瞰から眺めているショットが続いており、これは現実世界での二人の孤独感や無力感が非常に表れている(意図しているかは分からないが)。

そして32:11での増殖した敵がネット空間での部屋を埋め尽くしている様子は「オマツリ男爵」でのリリー・カーネーションが開花した時のあの非常にグロテスクな感じそのものであり、観ていて結構寒気がした。この場面は配色なども結構似ており、推測ではあるがこれが細田監督にとっての死の何らかに対して有しているイメージではないかと思われる。二作品でこれ程似ているという事はこういうのは多分無意識の内に行っているのだろう。

極めつけは33:40でのウォーグレイモン死亡による太一のネット空間への進入直前の演出である。これはヘッドホンで鑑賞していた人は分かるだろうが、ウォーグレイモンが死亡した事に驚愕した太一が声を震わせる時に無音状態で太一の「あ・・・あぁ・・・」という声だけが聞こえるので非常に気持ちが悪い。幽霊に耳元で囁かれる感じと言えば分かるだろうか。ここでもひたすらに死が強調されている。

その後太一はネット空間に進入しウォーグレイモンと接触するワケだが(34:00)、何故かそこで東京少年少女合唱隊による「レクイエム」が流れるのである。鎮魂歌である。敵がまだ生きているのに。普通逆ではないのか。死に逝く敵に歌った方が演出上もハクがつくとおもうのだが。しかも、画面内ではネット空間の上方から光がさし、それがウォーグレイモンを照らし、光の中から太一が現れるのだがこれはどう考えても「そのもの」だろう。

そして36:46での敵の顔のドUP。これはコワすぎる。

「オマツリ男爵」と本作を観てみると細田監督の死に対するイメージや想いが良く表れている事が分かる(死生観ではない)。意識的か無意識的かは分からないが、細田監督は「死」というモノに対してそれが作品内に出てきてしまう程の強い想いを持っているのかもしれない。細田監督はキャラクターの作画において基本的に影を全く付けないのでそういったのに対して悪く言えばペラペラの紙のような印象を受けるが、そういった見た目とは裏腹に作品内では毎回深い「何か」を感じる事が出来るのでこれはこれでユニークな作家性と言える。

現在絶賛公開中の「サマーウォーズ」ではインタビューの内容を聞く限りはそういった要素は無さそうなのだが(当初は観る予定が無かったので結構聴いてしまった)、「時をかける少女」同様評価は上々らしいので作品のクオリティに関してはかなり期待できそうである(言うまでもないが本作も非常に面白かった)。

因みに「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」の過去放送で細田監督の「サマーウィーズ」対談が聴けるので興味のある人はどうぞ(関係ないけど「アマルフィ」評が面白かったのでオススメ)。
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메이저사이트

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by 메이저사이트 (2023-09-15 17:39) 

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