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『アイカツフレンズ!』 第7話 明日香ミライ「アイデンティティ」の3DCGライブ演出 [アニメCG]

溜まりに溜まっていた録画アニメの消化作業が漸く終わり『アイカツフレンズ!』『HUGっとプリキュア!』『キラッとプリ☆チャン』の3作品共にリアルタイム視聴に追い付く事が出来た。やはり最低でも録画したその週の内に観ておくべきだと痛感。


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『アイカツフレンズ!』の劇中においてトップアイドルグループであるラブミーティアのメンバーの一人明日香ミライ。アイカツ伝統のお約束として今作においても主人公である友希あいねはデビューしたてでありながらトップアイドルと仕事を共にする機会を得る事になる。

『アイカツフレンズ!』ではその名の通り今作ではユニット組むという事がアイドル活動において非常に重要である事を示している。それはトップアイドルのラブミーティアがユニットグループの形をとっている事からも明らかである。しかしもう一人の主人公である湊みおや他のアイドルをみるに現段階では個人での仕事を基本としているためユニットでのライブステージの機会はまだ少ない。他のメンバーの配分も鑑みるとユニットメインで話が進んでいくのはもう少しあとになりそうである。

今回第7話ではラブミーティアのメンバーの一人である明日香ミライのソロライブとなったがこれが中々興味深いものになっていた。今作では前作に引き続き3DCGのライブパートはサンライズのCG制作部である「サンライズ D.I.D.スタジオ」が担当しており、前作ではそれまで担当していたサムライピクチャーズの後釜を務めるという事もあってハードルが上げられてしまう形となってしまい、最初の方こそそのあまりの技術力の差に(というよりノウハウか)不安な部分もあったが2年間に渡る制作期間において徐々にではあったが3DCGライブパートも進歩を見る事が出来た。

二人以上のライブになるとモーションを筆頭にまだまだ不安定な部分が目立つが少なくとも幾つかのソロライブにおいてはサムライピクチャーズ時代に引けをとらないものに仕上がっていると思う。


アイカツフレンズ! 第7話「ミライへ続く道 」
明日香ミライ /「アイデンティティ」
バニーパレードコーデ / Milky Joker

明日香ミライの衣装はその外見とは対照的なポップ系で、従来の系統で言えば『アイカツ!』の傑作衣装の一つである一ノ瀬かえでが着ていたマジカルトイのピエロカーニバルコーデに準じたものになる。派手な色使いで装飾が多くボリュームのあるアンダースカートに多層のスカートを加えており、動きやすくアクティブな印象のある衣装である。
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左が明日香ミライ。右が一ノ瀬かえで。しかしこうしてみるとサムライピクチャーズのモデリングの精度の高さに驚かされる。何せ左はサンライズ D.I.D.スタジオが2年以上制作を続けてきた成果なのに対して右は『アイカツ!』34話の時点であり、サムライピクチャーズが『アイカツ!』に関わってまだ半年程度しか経過していない頃のものだからである。

勿論どちらもセルルックの方向性が異なるので一概にどちらが優れているとは言えないしベースとなる元のデザインセンスの問題もある。だがサムライピクチャーズが結果としてあのレベルまで到達してしまった今となっては寧ろこの差はあって然るべきとも言えてしまうのが恐ろしい。しかしながら今回久しぶりにピエロカーニバルコーデを見たが本当にこの衣装は良く出来ている。全体のシルエットラインが本当に美しい。

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明日香ミライのバニーパレードコーデはボリュームのあるドロワーズ(バルーンスカート?)にスカラップの入った裾のスカートとフレアスカートを上から重ねており、スカートがそれぞれ独立して揺れるようになっている。サンライズ D.I.D.スタジオは『アイカツスターズ!』の最初の頃から揺れ物に関しては問題なく処理されているのだが素材の柔らかさまではまだ表現できないのか、特にスカートのフワっとした表現にはまだまだ完全の余地がある。というかスカートというより厚手のビニールにしか見えないのでこの辺りはそろそろ頑張って頂きたい所。

これに限らずスカートは揺れてはいるもののまだ上下に限定的であり回転した時の左右への揺れや重量表現が少ないのでダンスの動き自体も固い印象を与えてしまう。今までに何度か言っているが衣装が揺れる、または揺れ物が多いという事はそれ自体がダンスの一部となって躍動感に寄与する事になるので揺れて損は無いのである。具体的には『アイカツ!』第123話 大空あかり「Blooming♡Blooming」における3DCGライブ演出。に書いているので暇な人は。それにしても歴代のアイカツ衣装の中でガーターベルトを着用しているのは今回が初なのでは・・・?

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明日香ミライの「アイデンティティ」のライブステージはサーカスがモチーフとなっている。テントを模した建物の中で広い円柱状のステージの周りに観客が集い、外縁のステージでは動物達が玉乗りや火の輪潜りを行う。暗闇の中団長である明日香ミライの頭上からスポットライトが降り注ぎ眩い光と共に幕が上がる。正にサーカス。
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幕が上がる演出とはそれに見合う演者に許されるものでありまさにトップアイドルである明日香ミライに相応しい登場シーンだが、それ以上に幕が上がる事でそれ自体が照明となりミライを逆光で照らしてそのシルエットが浮かび上がるというこの演出はサンライズ D.I.D.スタジオが手がけてきたライブステージの中でも屈指の出来と言えるものになっている。これだけでライブステージが始まる高揚感を高めており何よりビジュアルとして本当に溜息が出るくらい美しい。思わずここだけでも何度でも見てしまう程。

アイデンティティのダンスは表拍で常に身体を揺らしながらステップを踏む運動量の多いものとなっている。ここまで常に動いている振り付けはアイカツ史上でも稀である。その弊害として、特にAメロで頭でリズムを刻んでいる様な細かい動きが非常に多いので観る側が焦点を合わせ難いという問題点もあるがたまにはこういうのも良いと思う。衣装だけでなくダンスもポップ系の振り付けなので事前に抱いていた明日香ミライへのイメージが良い意味で裏切られる事となった。

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アイデンティティの曲は転調が多くCメロでは曲調に合わせて照明が落とされ、サビでは途中から円舞曲に変わりそれぞれで曲調に合わせて振り付けも変化するようになっている。ここで目を引いたのが転調するCメロの「あ~斬新な響き」で左右に身体を揺らす部分なのだが(上画像)、膝の勢いと身体の伸ばし具合、揺れ初めから終わりまでの勢いの加速から減退の自然さ、それらによって表現される重心移動が本当に良く出来ており、ここだけでサンライズ D.I.D.スタジオのライブステージにおける進歩が良く分かるものになっている。以前ならこういうゆっくりとした動きに伴う身体の揺れや重心の移動は不自然さが露になっていたのだが少なくとも今回の様なソロステージでは違和感の無い動きに仕上がっている。ここの動きは本当に素晴らしい。
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上画像の続く「♪きっとあれこれドレミレ カフェ・オ・レ♪」では照明が落ち響き渡る明日香ミライの歌声とスネアだけが刻み続けるこのサビ前の予感を感じさせる静寂が心地良い。曲調が奇抜なだけでなくそれが緩急を生む事に繋がっている。

最初は明日香ミライのダンスだけだが、曲が進むにつれ照明が変化したりエフェクトやオーラが追加され背景では動物達のサーカスが行われるなど一つのライブステージの中でも表情に変化が付けられているのもアイデンティティの大きなポイントである。多彩な表情を持つというのはまさにサーカスが持つ特色そのものでありライブステージそのものに大きな意味性が付与されているという事にもなっている。
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背景のサーカスでは犬やライオン、像などが芸を繰り出す中、猿の様なシルエットが複数確認できるがこれは恐らく猿ではない。これだけ数がいながら鳴き声が全くしないという事もあるがここがサーカスであるという点が何よりの理由になる。これが人間だと仮定したとする。そしてサーカスで芸をする人間が一体何なのかと考えてみるとその答えはおのずと出てくるだろう。

アイカツのアニメのライブステージは基本的にアーケード筐体のライブステージをベースに制作されているのでアイデンティティも基本的には筐体の演出と同じである。だからアイデンティティのサーカスの要素が当初からそれを想定して制作されていたかは分からない。しかし人間を模した複数のシルエットが他の動物とは別のグループとして演出され様々な芸を披露している事、また骨格上でもあれらが猿に見えない事から彼らが「そういうもの」として演出されていると考えるのが自然だろう。何より歌詞にそれが如実に表れている。

アイデンティティの歌詞はアイカツ史上でも稀に見る興味深いものになっている。

 赤色メロン パープルれもん
 ピンクなうどん ワクワク“セ・ボン!”
 ガイコツリボン 目玉のコロン
 パンはシナモン いっぱいだもん

 奇抜!独特! 唯一!特別!
 並べてみるの ホメ言葉なの

アイデンティティ=自己同一性という名の通りその内容は個性に着目したものになっている。只管に韻を踏みながら表面的には奇抜な歌の様に聴こえるがその実は多様性について言及している事が読み取れる。

 あぁ わたしだけのアモーレ
 スキって素敵な I(あい)の合言葉ね
 風(ふう)が変わって ぐるりぐるり楽しい
 ちがっていいんだ ぜんぶ前代未聞
 だからまわって くるりくるり“わたし”

私だけの愛、私だけのI。私を愛する愛(I)。変わっているという事実。そして変わっているという事が自分である事の証拠。だから変わっていても良い。それらが回りに回って自分自身を形成する。

 みんなといっしょ みんなおそろい
 それはとても大切なポリシー
 わたしは異色 わたしだけでいい
 それもとても大事なアイデンティティ

多様性の許容というのはともすれば価値観の押し付けにも繋がってしまう危険性がある。昨今のLGBTQ等の動向を見ている人には良く分かると思う。一人ひとり変わっているとはいえマクロな視点で見ればそれらはマジョリティやマイノリティという大枠で区別、差別されてしまってもいる。だからこそ他人と同じという事に価値を見出すのは悪い事ではないし、自分だけの個性を大事にするという価値観もアイデンティティにおいては重要な事である。どちらか一方を排斥するという事ではなくそれらの価値観は同居するものであり、だからこそ人が集団で居られるものである。

メッセージと言うのは直接的であればある程その分切れ味は増すが使い方を間違えるとその力は思わぬ作用を及ぼす。アイデンティティはポップな曲調と派手なライブステージで一見すると楽しいものではあるがその芯の部分にはとても人間的な要素が隠されている。何よりどちらでも良いしどちらでなくても良い、という個性というものに対する包容力の高さに温かみが感じられるし、その視座の高さはとても女児向けのアイドル曲とは思えないものだ。

興味深いのはアイデンティティの曲が今回意図的に使われたのかどうかという点である。第7話は明日香ミライが主人公のあいねと行動を共にしながらチガカワ=違ってカワイイという言葉を教えたりあいねの個性を暗に示す回なのだが、アイデンティティの曲やライブステージの構成は元々アニメを放映するよりずっと前から既に筐体で流れていたからである。前述したサーカスの「要素」や個性の言及含めてアイデンティティという曲が元々何を想定していたのか、今回第7話の制作において偶然曲と物語のテーマが一致したのか。何にせよこのアイデンティティのライブステージはアイカツ史上でも類を見ないものになっているのは確かである。


今回アイデンティティのライブステージを観た時はその高揚感から思わず顔が上気して言葉に表せないほど感動してしまった。先に書いた様なメッセージ性ではなく単純にライブステージのクオリティが高かったからだ。アイカツのライブステージにこれ程感動したのは実に2年振りである。アイデンティティのステージが終わった時は目頭が熱くなってしまいこの感覚も久しぶりだと感慨に耽ってしまうと同時に直ぐにライブステージを見直したくなる衝動に駆られるくらいの衝撃を受けてしまった。前述したライブステージの要素も大きいが何より自分の心に刺さったのはアイデンティティの曲それ自体でもある。兎に角曲が良い。今回の様なコード進行の曲はアイカツでは珍しいのだが正に自分の好きなメロディーラインだったので転調による変わった曲調も相俟って何度も聴きたくなる様な癖のある曲になっている。歴代のアイカツの歌の中でも屈指の名曲だと思う。多分これのためだけにBlu-ray BOXを買う事になるだろう。


現在第7話まで進んでいる『アイカツフレンズ!』だが、4人の主役キャラクターが揃いあいねが本格的にアイドルデビューした事により漸くアイカツとしてのスタート地点に立った事になる。以前書いたように脚本として見ると相変わらず無難な話が続いているのでそろそろ起爆剤となるようなエピソードが欲しい所ではある。期待していた五十嵐達也色も少々薄いので守る所は守りつつ適度に破壊して頂きたい。




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