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2020年のIMAX事情『1917』から『テネット』まで [映画]

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前回[2017年~2019年] 最近のIMAX事情

2019年、IMAX社は10億3500万ドルを超える同社史上最高の興行成績を出した。『エンドゲーム』を筆頭に10億ドルを超える興行収入作品が幾つも登場し中国の映画バブルもそれに拍車をかけた形となった。中国では現在660館ものIMAXシアターが存在しハリウッド映画業界においては最も大きな市場の一つとなっている。当の中国国内ではハリウッド大作映画を享受するだけでは留まらず近年では国内のVFXスタジオを登用して自国の大作SF映画を製作する流れも起きており、また中国発のIMAXフォーマット作品も登場している。
 
現在中国を含め世界各国でコロナウイルスが蔓延しているが映画業界にもその波は押し寄せている。中国では1月の下旬が旧正月であるため中国国内では大作映画がこの時期に同時公開するようになっており、今年はそういった作品が7作あったとの事だがコロナウイルス発生の煽りを受けて全て公開中止となってしまった。旧正月公開の映画は中国国内での年間の興行収入に大きく関わってくるので大打撃である。そして公開中止となった作品の中にもIMAX上映作品があったのだがこれがIMAX社的にも中々頭の痛い話となってしまった。
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左から順に『唐人街探案3』『紧急救援』『囧妈』。

『唐人街探案3』は日本を舞台にした作品で日本人キャストも多数登場するものだが何と言っても栃木県に渋谷を模した巨大なオープンセットを建設する程の作品であり、またIMAX ALEXAカメラで全編撮影した中国初の作品でもある。上映もIMAXフォーマット版として全編1.90:1の画郭での上映が予定された。
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・中国のメガヒット映画「唐人街探案」第3弾に妻夫木聡、長澤まさみ、浅野忠信らが参戦!
『紧急救援』『囧妈』も共にIMAXフォーマット作品で『紧急救援』は全編1.90:1に、『囧妈』は1時間以上が1.90:1に拡大する形態での上映が予定されていたが結果として3作品とも映画館で公開されずに終わってしまった。まあこれら3作品が日本でIMAX上映される事はまず無いのだろうが折角のIMAXフォーマット作品が日の目を見ずに終わってしまうのは寂しいものである。映画産業そのものも含め今後中国国内の映画業界がどうなっていくのか心配ではあるがこれが悪い流れを生んでしまうのだけは避けてほしい所である。


日本では既存のIMAXデジタルシアターを改装する流れが進んでおり昨年末から今年の初春にかけて幾つものIMAXレーザーシアターが誕生する予定となっている。109シネマズ、ユナイテッドシネマ、TOHOシネマズ、シネマサンシャインと各社足並みを揃えており2020年内で既存のIMAXデジタルシアターはほぼIMAXレーザーに改装されると見て良いだろう。ただT・ジョイPRINCE品川や成田IMAXの様にスクリーンサイズ的に扱いにくい館もあるので特にこの2館はまだ先行き不明と言わざるを得ない。まあ国内最大級だった元IMAX 70mmスクリーンの札幌もIMAXレーザーに改装されたので立地条件的にも品川IMAXは近い内に改装されるとみて良いだろう。浦添(沖縄)や松戸の様に新館のIMAXレーザーも登場し始めたので今後も国内ではIMAXシアターが増え続けそうだ。なお1.43:1のIMAXフォーマットに対応しているIMAXレーザーGTは大阪と池袋以外に建設予定が無いので今後はIMAXシングルレーザーの建設が基本となる。

IMAXレーザーGT
・109シネマズ大阪エキスポシティ
・池袋グランドシネマサンシャイン

IMAXシングルレーザー
・109シネマズ菖蒲
・109シネマズ川崎
・109シネマズ名古屋
・ユナイテッド・シネマ PARCO CITY 浦添(沖縄)
・シネマサンシャインららぽーと沼津
・ユナイテッドシネマ テラスモール松戸
・ユナイテッドシネマ 札幌
・TOHOシネマズ 新宿
・シネマサンシャイン大和郡山
・109シネマズ二子玉川 ※3月20日導入予定
・ユナイテッドシネマ キャナルシティ13※3月下旬頃導入予定
・ユナイテッドシネマ シネマとしまえん ※3月下旬頃導入予定
・ユナイテッドシネマ シネマ浦和 ※3月下旬頃導入予定
・TOHOシネマズ 流山おおたかの森 ※4月24日導入予定


2020年はIMAXフォーマット作品の公開が多数予定されている。

先ず2月14日公開の『1917 命をかけた伝令』。

本作はIMAX撮影ではなく通常のデジタルシネマカメラで撮影されておりIMAX版は全編1.90:1に拡大した画郭での上映となる。サム・メンデスとロジャー・ディーキンスの黄金コンビなので映像には十分期待出来そうだ。

4月10日には007新作の『ノー・タイム・トゥ・ダイ』。
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上は撮影監督のリヌス・サンドグレンとIMAX 65mmカメラ。IMAX社の決算報告でも本編の大部分をIMAXカメラで撮影しているとの報告があったので間違いなく1.43:1に拡大するフォーマットでの上映となるだろう。恐らく『ダンケルク』の様に可能な限りIMAXカメラで撮影する様なスタイルだと思われるので間断なくIMAXシーンが流れるのを期待したい。なおIMAXカメラ以外のシーンは35mmカメラで撮影されているので1.43:1と2.39:1が混在する画郭となる。現時点でIMAX 70mm上映は予定されていないのでデジタル上映のみとなる模様だが4K制作なのでIMAX撮影部分の画質がどれ程のものになるか楽しみである。
※3月10日追記※
コロナウイルスの影響により公開日が11月へと延期されてしまった模様。

6月は『ワンダーウーマン 1984』。

本作は未だ撮影現場の様子が公式に公開されてないのでIMAXカメラは確認できていないがこちらも007同様IMAX社の決算報告でIMAX 65mmカメラによる撮影が行われたとCEO自ら報告していたので本作も1.43:1拡大するフォーマットの上映とみて間違いないだろう。これも1.43:1と2.39:1が混在する画郭となる。なお予告編が4Kで制作されているので本編も4K上映となる。現時点でIMAX 70mm上映は予定されていないが前作は70mm上映が行われていたので今作も70mm上映になる可能性は高いだろう。

7月10日は『トップガン マーヴェリック』

本作はIMAXカメラによる撮影ではなくSONYのVENICEと呼ばれるデジタルシネマカメラで撮影されている。

実機の戦闘機にトムが自ら乗り込みVENICEを6台搭載して撮影しているのだがVENICEは6K撮影が可能なので画質も期待できそうである。まだ公式にIMAXフォーマットである事は発表されていないが上記の様なリーク動画が出てしまっているのでほぼ確定だろう。予告編全編が1.90:1なのでIMAXフォーマット版は全編1.90:1へ拡大する画郭での上映となるだろう。なお予告編が4Kで制作されているので本編も4K上映となる。


そして9月18日の『TENET テネット』。
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クリストファー・ノーラン監督最新作の本作もご他聞に漏れずIMAX 65mmカメラで撮影されている。生憎『ダンケルク』同様全編IMAX撮影という訳では無いが今作でも可能な限りIMAXカメラで撮影してくれるだろう。なお本作は既にGSCAからIMAX 70mmで上映される旨の告知がされている。2017年の『ダンケルク』の時点では全世界37館でIMAX 70mm上映が行われたが『ダンケルク』以降もIMAX 70mm館のIMAX レーザーへの改装は順次行われてしまっているので『テネット』のIMAX 70mm上映がどの程度の規模で行われるかは不明である。なお予告編が4Kで制作されているので本編も4K上映となる。


また、IMAX撮影ではないが2月28日には『地獄の黙示録』がIMAX版としてリバイバルされる事になっている。
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今回は4KリマスターされたものがIMAXの大スクリーンで上映されるのだが私も映画館で観た事が無いので非常に楽しみである。昨年の『ブレードランナー ファイナルカット』に引き続き旧作がIMAX上映される事で大スクリーンで観られるのは嬉しい限りである。因みに本編の画郭はオリジナル準拠である。

さて2016年9月に閉館し取り壊され「THE RIBBON」として生まれ変わるシドニーIMAXシアターだが、2020年末の開業へ向けて現在も着々と工事が進んでおり外装も4割程度まで完成している。
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上は海外の掲示板から拝借した画像だが2月6日現在の様子との事である。シドニーIMAXと言えば世界最大となる29.42m×35.73mのIMAX 70mm巨大スクリーンが有名だったが、新生シドニーIMAXシアターではフィルム映写機は使用せずIMAXレーザーGTのみでの上映が予定されている。スクリーンサイズも25m×30mと以前よりも一回り小さいモノになる予定でありどうやら全世界的にもレーザーへの改装は止められそうにない。

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前回も言及したドイツに建設予定のTraumpalast LeonbergのIMAXシアターだがその後続報が特に無く検索してもそれらしきものが出てこないので現在どうなっているかは不明である。公式の発表では40m×26mのスクリーンとされているが実現すれば世界最大のIMAXスクリーンとなる。開業は2020年11月との事。
Traumpalast bekommt Riesen-Leinwand

IMAX 65mm撮影作品といえば今までは1年に1本程度しか無かったのだが2020年は何と『007』『ワンダーウーマン1984』『テネット』と3本もある。しかも北米では4月6月7月とほぼ上半期に集中している異常事態である。『ダンケルク』級が3本連続で公開されると考えてもらえばこれが前代未聞の事態だという事がお分かりになるだろう。私も初め発表を聞いたときは耳を疑ったがどうやら本当に3本も公開されるらしい。恐らくこんな事は二度と起こらない。

ノーランの新作もIMAX撮影が基本となる大規模な制作なので1本が3年サイクルに入った様で次回作は2023年になるのだろう。IMAX 70mmの上映施設は年々減り続けており鹿児島市立科学館にあるオムニマックスもいつまでIMAX 70mmの上映を続けられるかは分からないがいずれ終焉を迎えてしまうのは避けられない。ノーランの新作がIMAX 70mmで観られるのもあと十年程度か、もしかしたらもっと早いかもしれない。フィルムという物理メディアは現在映画関係者の出資で何とか生きながらえているがフィルムによる撮影は続いても上映はいずれ出来なくなるだろう。

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