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次世代IMAXとIMAXカメラは今後どうなっていくのか。 [映画]

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2015年にオープンした109シネマズ大阪エキスポシティ。日本初の次世代IMAXとして4Kレーザープロジェクターと12.1chの音響を兼ね備えた映画館であり、昨年の12月18日に公開された『スター・ウォーズ フォースの覚醒』によってその名は大きく知れ渡る事となった。

26m×18mという日本最大級のスクリーンは2.39:1のシネスコ、1.85:1のビスタ、そして1.43:1のIMAX15/70mmフォーマットをデジタル上映で映写する事が可能となっている。(因みに日本最大スクリーンは福岡にあるギャラクシーシアターで大きさは28m×21m)

2014年末に『スター・ウォーズ フォースの覚醒』がIMAXカメラで撮影されているという発表が行われて以来、当該シーンの長さ、DIの解像度、上映時の画郭、フィルムIMAX上映の有無、IMAXレーザープロジェクターの仕様といった情報等が順次明らかになっていく、また中々明らかにされない事に一喜一憂していたのが今となっては懐かしい限りである。

そして公開から2ヶ月が経とうとしている現在、エキスポIMAXを取り巻く状況を含めIMAX上映作品は取り敢えず一段落しようとしている。2016年は昨年の様な一年を通した異様とも言える大作、名作ラッシュとリバイバルに継ぐリバイバル上映といった忙しい事にはならなさそうで比較的落ち着いて映画館へ通う事が出来そうではある。

IMAX関係を見てみると『フォースの覚醒』によってIMAX次世代レーザーの仕様がある程度明確になった事により、2016年のIMAX上映作品においてどの作品をエキスポIMAXで観るべきか、あるいは通常のIMAXデジタルで妥協すべきかという線引きを各人が行っているのが見られる。なので、昨年まで錯綜していた、そして明らかになったIMAX関連の情報をここらで一度簡単に整理しておきたいと思う。
 

 
先ずエキスポIMAX以外に設営されている所謂「IMAXデジタルシアター」について。
IMAXデジタルは2機のプロジェクターを使用しておりその解像度は全て2K。24.5m×14mのスクリーンを誇る成田IMAXも映写は2Kで行われている。かつて27m×20mを誇っていたユナイテッド・シネマ札幌のフィルムIMAXも現在は一回り小さくなり、映写もデジタル化され同じく2K上映となっている。

なのでこれら従来のIMAXデジタルシアターでは4Kの上映は出来ない。映写時の画郭は最大で1.85:1、または1.90:1のビスタサイズとなる。そのため所謂フィルムIMAXカメラで撮影された『ダークナイト』などの作品はオリジナルの画郭である1.43:1から上下をトリミング(切り取る)して上映する様になっている。これも成田、札幌は例外ではない。

『インターステラー』上映フォーマット別比較図
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IMAXデジタルシアターの音響に関しては基本的に通常のサラウンド音声だが、109シネマズ二子玉川とTOHOシネマズ新宿にあるIMAXデジタルシアターはIMAXの「ネクスト・ジェネレーション・サウンドシステム」と言われる12.1chでの上映が行われている。

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12.1chに使用されるスピーカー
これは従来の設備に加え天井にスピーカーを設置する事で立体的な音響を可能にするものである。要はDOLBYが行っているドルビーアトモスと似たようなものだと考えればいい(厳密には別物だが)。なおこの12.1chはエキスポIMAXにも搭載されている。

2009年に公開されたジェームズ・キャメロン監督作『アバター』で広く知れ渡ったIMAXデジタルシアターだが、一口に言ってもその形態は様々で既存のスクリーンを改装したもの、新たに設計され新設されたもの、フィルムIMAXを改装したもの等大きさはそれぞれ異なるのが現状である。そのため同じIMAXデジタルシターでも劇場毎で映像、音響に対する感想は大きく異なっていた。

そこで登場したのが昨年11月19日に開業した109シネマズ大阪エキスポシティの次世代IMAXである。
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この次世代IMAXは2014年12月にIMAX社のあるカナダはトロントにある「Scotiabank Theatre」 に初めて誕生して以来、エキスポIMAXも含めて現在世界で約20箇所に存在している。なおエキスポIMAXは世界で15番目位。

次世代IMAX。何やら仰々しい名前だがその構成要素はたったの三つ。
一つ目は先にも挙げた「12.1ch」の音響。
二つ目は「IMAX次世代レーザー」のプロジェクター。
三つ目は「1.43:1」の画郭を持ったスクリーン。

そして唯一それら三つを兼ね備えているのが109シネマズ大阪エキスポシティのスクリーン11となる。

この「IMAX次世代レーザー」。2013年に発表されて以来様々な情報が飛び交い、エキスポIMAXが開業するまでは海外へ行かなければ詳細な情報が得られなかったためその実態は全く不明だった。海外から発信される体験記事なども幾つか存在したが実際に観て見なければ本当の所は分からなかった。そして2016年現在、有象無象の情報から明らかになった情報がまとまりつつあるので幾つか明確にしておこうと思う。なお技術的な部分について詳細を書いているとキリが無いので簡単にまとめる。

先ず、IMAX次世代レーザーでは4Kでの映写が可能となる。一般に言われる所の「4096×2160」という解像度である。従来のIMAXデジタルでは成しえなかった4K上映。

次に、2Kで制作された作品でもアップコンバートにより4Kに近い画質で上映する事が出来る。これは『スター・ウォーズ フォースの覚醒』を観た人ならお分かりだろう。まだまだ2K制作の作品は多いのでこれにより2K作品をIMAXで観る意義が漸く出てきたと言える。なお4K上映時でもアップコンバート的な処理がかかるらしく4Kを超える画質になるとも言われている。つまり『レヴェナント 蘇えりし者』の様な4K2D上映作品こそ真価が発揮されるのかもしれない。

そして、「1.43:1」での映写が可能である事。この1.43:1という画郭は一般的には「IMAXフォーマット」と呼ばれ、映画の撮影に使用される65mmフィルムを従来の縦送りから横送りにしたものとなる。15/70mmとよく表記されているのがこれである。この65mmフィルム横送りは専用のIMAXカメラによってのみ撮影が可能であり、これまで以下の作品に使用されてきた。

・『ダークナイト』(2008)
・『トランスフォーマー リベンジ』(2009)
・『ツリー・オブ・ライフ』(2011) ※上映自体は全編シネスコ
・『ミッション:インポッシブル ゴーストプロトコル』(2011)
・『ダークナイト ライジング』(2012)
・『ハンガーゲーム2』(2013)
・『スタートレック イントゥダークネス』(2013)
・『LUCY/ルーシー』(2014) ※上映自体は全編シネスコ
・『インターステラー』(2014)
・『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015)
・『バットマン VS スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)
・『Dunkirk(仮)』(2017)

前述したように従来のIMAXデジタルでは1.43:1での映写は出来ないので1.90:1のビスタサイズに合わせるために上下をトリミングして上映せざるをえなかった。しかし、IMAXレーザーでは1.43:1での映写が可能であるためオリジナルの画郭をそのまま上映する事が出来る。『スター・ウォーズ フォースの覚醒』公開時にエキスポIMAXで観た人がしきりにIMAXレーザーを周囲に勧めていたのはこういう事である。また、IMAXレーザーは従来のIMAXデジタルから色の再現性が改善されており、特に黒の表現が格段に向上している。

そして3D上映。IMAXレーザーの3Dでの映写はIMAXデジタルとは異なり3Dメガネ含め3Dの方式自体が従来のものとは異なっている。前述した4Kアップコンバートの効果と相俟って立体感は増し明るさも改善されており、クロストークも軽減され良質な3D上映となっているため3D上映の意義が見直される様にもなっている。

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IMAXレーザーで使用される3Dメガネ
ただ、新しくなった3Dメガネについては不満の声も多く上がっており、レンズの大きさ、透過率、反射、重量、など画質以外で改善を望む声が後を絶たない。なお、このIMAXレーザーに使用される3Dメガネについては大人の事情により改良は非常に難しいのが現実。

あと、上記のIMAX撮影作品の次世代IMAXフォーマット用にリマスターされたリバイバル上映についてだが、IMAX側が仄めかしてはいるものの具体的なものは何一つとして発表されていない。現在確認されているのはエキスポIMAXのプレオープン時に上映された『ミッション:インポッシブル ゴーストプロトコル』のリマスターされたIMAX撮影シーンのみ。今後リバイバル常連作品である『ダークナイト トリロジー』や『インターステラー』がリマスターされた後、上映される可能性については正直全く検討もつかない。もしかしたら『バットマン VS スーパーマン ジャスティスの誕生』の直前に『ダークナイト トリロジー』のリバイバル上映があるかも知れない。

なお、この次世代IMAXのフォーマットは2017年に池袋に誕生するシネマコンプレックスのスクリーンにも搭載される予定となっている。池袋の次世代IMAXもスクリーンサイズはエキスポIMAXと同じく26m×18mが予定されている。
池袋に首都圏最大級シネコンが2017年オープン、佐々木興業同一地区で18スクリーンを展開

IMAXスクリーン比較図
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さて、ここからが本題。

2016年3月25日に公開される『バットマン VS スーパーマン ジャスティスの誕生』。
本作はフィルムIMAXカメラによる撮影がされているので『スター・ウォーズ フォースの覚醒』と同じく上映は1.43:1での画郭で行われる。つまり本作もエキスポIMAX案件という事になる(また遠征か・・・)。
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「俺のIMAXカメラが光って唸る!!!」ザック・スナイダー談 IMAX社にて

因みに本作は3D上映作品なのでIMAXでの上映は全て3Dとなる(IMAX2Dの望みは薄い)。オリジナルサイズのスチールすら公開されていない現在、IMAX撮影シーンの長さに関しては現段階でも全く明らかになっていないので151分の上映時間の内1.43:1で映写されるのがどれ程なのかは想像するしかない。もしかしたら全編1.43:1かもしれない(それは無い)。

そして4月29日に公開される『キャプテンアメリカ シビル・ウォー』。
本作はIMAX/ARRI 2Dカメラで撮影されている。このIMAX/ARRI 2Dカメラとは一体何なのか。実のところ何も分かっていない。現在映画業界では大きく分けて三つのデジタルカメラが使用されている。「SONY」「RED」そして「ARRI」。IMAX/ARRI 2DカメラはARRI社が保有する「ALEXA 65」というカメラを元にIMAX社が共同開発としてカスタマイズしたもの、との報道がされている。
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ARRI ALEXA 65
2015年の4月に明らかになってからというものの、それ以上の情報は現時点まで全く公開されていない。

もともとIMAXに関する技術的な詳細については非公開な部分が多いため、このIMAX/ARRI 2Dカメラの詳細が明かされない事についても不思議ではない。『キャプテンアメリカ シビル・ウォー』を監督するルッソ兄弟のインタビュー等から「ラージフォーマット、ワイドスクリーンに対応している」という事は判明しているがそれが果たして1.43:1を指しているのか、単に1.90:1のビスタサイズを示しているのかは定かではない。

IMAX社が何故他社のカメラをカスタマイズするという選択肢をとったのか。
IMAX社にデジタルカメラ開発のノウハウが無いワケではない。『トランスフォーマー ロストエイジ』で新型のIMAX3Dカメラが投入されたのを覚えている人もいるだろう。
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IMAX 3Dデジタルカメラ
IMAXデジタルカメラ自体は存在している。だが1.43:1の画郭となると話は異なる。フィルムIMAXカメラで撮影された映像はおよそ8Kと言われる。1.43:1で換算するとその解像度は約8192×5728。

現在REDのWEAPON DRAGONカメラが8Kセンサーを搭載しており8192×4320での撮影が可能となっている。
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RED WEAPON DRAGON 上は6Kモデル。アップグレードで8Kに
因みに『ガーディアンズオブギャラクシー2』ではこのカメラが使用される予定。

IMAX/ARRI 2Dカメラの元となるALEXA 65のセンサー解像度の最大値は6560×3102(2.11:1)。8Kの8192×5728には全く及ばないが横解像度だけで言えば悪くは無い。問題は縦だろう。このまま1.43:1にフレーミングすると4466×3102になってしまいとてもフィルムIMAXの変わりは務まらない。

なので、これはあくまで個人的な推測に過ぎないが、IMAX側がALEXA 65に施したカスタマイズというのは専用に開発した1.43:1に対応させる「縦の」アナモフィックレンズ、あるいはそれに代替する様な1.43:1で撮影可能な方法ではないかと考えられる。縦解像度3102を維持したまま圧縮して撮影する。心臓部であるセンサーを弄る事は出来ない。何故ならセンサーが変わったらそれはもうALEXA 65ではなく別のカメラだからだ。IMAX側がわざわざ「カスタマイズ」という手法を選んだ事を考えると向かう先はおのずと限られる。

『キャプテンアメリカ シビル・ウォー』のIMAX/ARRI 2Dカメラに関する画郭については現在何も判明していない。分かっているのはIMAX/ARRI 2Dカメラで撮影されたシーンが15分間存在するという情報だけである。なので、本作がフィルムIMAXカメラで撮影された作品の様に1.43:1で上映されるという保障はどこにも無い。誰もそんな事は言っていないからだ。もしかしたらIMDbPROのプロダクション情報に何らかの情報が記載されているかもしれないが可能性は低い。

なお、このIMAX/ARRI 2Dカメラは『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー パート1&パート2(2018年5月4日/2019年5月3日公開予定)』で全編使用されるとの事。つまり全ては『キャプテンアメリカ シビル・ウォー』次第という事になる。まあ、仮にIMAX/ARRI 2Dが1.43:1に対応していた場合『インフィニティ・ウォー』に関わるVFXスタジオでは確実に死人が出る上に制作が間に合わないと思うので、およそ現実的では無いように思うのだが・・・。それと『シビル・ウォー』は4K制作とされているがこれについても実際のところ公開されてみないと分からない。

ただ言えるのはIMAX側が次世代IMAXとして1.44:1のスクリーンを新しく世界展開している事を鑑みるに、高額なフィルムIMAXに変わる1.43:1のデジタル撮影を構想しているのは明らかだという事。もしそれが実現すれば、あるいはIMAX/ARRI 2Dカメラが1.43:1に対応しているならば今後IMAXフォーマットで上映される作品は増えていくのかもしれない(かもしれない)。


IMAX関連過去記事
『スター・ウォーズ フォースの覚醒』はどのIMAXシアターで観るべきなのか。
『スター・ウォーズ フォースの覚醒』IMAXカメラによる15/70mm撮影シーン
[次世代IMAX] 4Kレーザー映写機が提示する新しいIMAXデジタルシアターとは
なぜ「インターステラー」を観るために海外のIMAXシアターへ行くのか。




  
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