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『劇場版 蒼き鋼のアルペジオ アルス・ノヴァ DC』感想。 [アニメCG]

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アニメーション制作 - サンジゲン
原作 - Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』(少年画報社)

動いているアルペジオの映像を今回漸く初めて観た。
ネット上でキャプチャされた画像を目にする事は何度もあったが、腰をすえてきちんと観たかったのでそれまでは動画は一切見ないようにしていた。というのも昨年の2月に放送が開始した『ハピネスチャージプリキュア』を観始めるまではアニメはおろかTVを全く見ない生活をおくっていて(というかTV処分した)、それ以前に放送されていたTVアニメは全く観れなかったからである。なので本作に関してはBDの全巻一気購入を考えていたのでそれまで動画での情報は我慢していた。で、購入を先送りしていたらいつの間にか劇場版が公開されていたので、内容が総集編という事もありどうせなら劇場でお初目にかかろうとなった次第。

あれだけセルルックCGについて語っておきながらアルペジオを観てないんかい!というツッコミに対しては正にその通りで返す言葉もないのだが、当時感じられていた「アルペジオを観ずしてセルルックを語る事なかれ」という雰囲気については本作を観て確かにその通りだと思ってしまった。

『蒼き鋼のアルペジオ アルス・ノヴァ』は深夜枠としては初の本格的なセルルック「フルCG」アニメ作品という事になるのだろうが、こんなものがいきなりTVシリーズとして放送されたら確かに驚く。先ず驚くのが「水」の表現である。第二次大戦時の軍艦同士による戦闘をメインにしているのでアクションシーンは基本的に全て海上で行われるため、本作と水の表現は切っても切れない関係となっている。そして本作はフルCGアニメ作品なのでキャラクターの3DCGモデルは当然の事、背景、小道具やエフェクトなどのマテリアルも全てCGで制作しなければならない。

荒れ狂う波、着弾時、着水時の波、飛沫、衝撃波、潮の流れ、そして「引き波」。
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船の進行に伴って船尾に生ずる白い波である「引き波」が本作ではこれ見よがしに描かれており、水の表現にどれだけ拘っているかがそれだけでよく分かる。ただ、引き波については「どこまでどの程度描写するか」という問題があるのでなかなか難しいのだが。因みに引き波の表現は現在放送中の某軍艦アニメにも見られるのだがあちらは思わず中指を立てたくなるレベルなので別項で言及しておきたい。

セルルックの具体的な話に行く前にとりあえず本作の感想について先に述べておきたいと思う。
1クールのTVシリーズを元に40分の新規エピソードを追加して105分の総集編として劇場公開された本作。12話を65分にまとめるという暴挙とも思えるその構成に観る前は不安を覚えたものだが、案の上TVシリーズ初見の人の感想を見ると「話が分からない」という反応なので、ならば技術的な側面にのみ注意して観ようと思ったのだが、出てきたモノはそうでもなかった。

話の筋は簡単だ。
第二次大戦の軍艦を模した生命体「霧の艦隊」が突如出現し、一方的に侵略される人類は敵の一隻を拿捕し味方につけこれを反撃の糸目にする―。世界観としては『ストライクウィッチーズ』『艦これ』と同じなので初見でも理解はしやすい。本劇場版は105分。その内の65分でTVシリーズをまとめなければならないのでかなりの分量を削る必要があるのだが、本作ではおそらく人類側の世界情勢の一切をカットしている。つまりは主人公である千早群像と旧帝国海軍伊四〇〇型潜水艦二番艦・伊四〇一、通称イオナを初めとする人類側唯一の艦隊戦力「蒼き鋼」、そして敵である「霧の艦隊」による戦闘行為のみを描いているのである。

索敵、会敵、交戦。
世界の情勢は当然の事、日本の司令部の状態すらまともに描写されず主力艦隊である「蒼き鋼」のみに注力する。尺が無いのであれば描くキャラクターを限定しその範囲も徹底的に狭める。結果として本作は蒼き鋼に所属する数人と敵側のキャラクター数人の物語となったため「誰が」「どこで」「何をしているのか」が非常に分かりやすくなっている。SF+ミリタリー作品となるとその世界観やディテールの説明に時間がかかってしまうものだが、戦闘行為よりもキャラクター同士の関係性が重要である本作においてそれらは無くても全く問題はなかった。「ワケが分からないよ。」みたいなのを覚悟していたのだが上記の点においては本作は寧ろよく出来ていると言えるほうである。所々でぶつ切り感がある編集が感じられたが許容範囲と言えよう。

何せとあるキャラクターをどうしようもなく気に入ってしまった位だからだ。


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そう、「タカオ」である。
旧帝国海軍高雄型重巡洋艦一番艦・高雄。1クール作品を65分にまとめ、情報の垂れ流しに終わらず、観る側に身の置き所があり劇場での鑑賞に堪えうるモノに仕上げ、なおかつキャラクターに感情移入出来る様な配慮のある編集。本作は決して手放しで褒めたり、傑作などと評価できるような作品ではないが、この悪条件の中で私みたいな初見の人間にキャラクターの魅力を感じさせる事が出来た時点で本作は成功したと言っても過言ではないだろう。私が何故タカオを気に入ったか(という言葉で済むレベルではないが)についてはここでは詳細は書かない。TVシリーズにしろ本作にしろ既に観ている人にとっては「なんだ、お前もか。」みたい感じなのだろうが、未見でこれを読んでいる人もいるかもしれないのでそういう人には是非本作を観に行って頂きたい次第。

さて、本作のセルルックについては後述するとは言ったがこのままいくと大分長くなりそうなのでここらで一旦切り上げるが「アルペジオ初見の人間に本作はどう見えたか」という点についてははっきりしておきたい。

良く出来ている。

先に言ったように手放しで褒められるモノではないが少なくともサンジゲンは「動かし方」を理解している、またはそこにリソースを投じている。『蒼き鋼のアルペジオ』という作品をフルCGで制作するにあたって何が必要かという事を理解しており、それを行う技術力もある。TVシリーズを観た事が無いのであくまで本劇場版のみの感想ではあるが技術的な側面と物語としての側面、そのどちらも他人に勧めたくなるような作品ではあった、とだけとりあえず言っておきたい。






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