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「花の詩女 ゴティックメード」は何を目指したか。 [映画]

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伏見ミリオン座にて2回鑑賞。

原作コミックを2巻までと「アウトライン」を数年前に一度読んだきりの「にわかFSSファン」である私が本作を観るに至ったきっかけは「映画」の存在があったからだろう。そもそもアレを観ることがなければ漫画を読むことにさほど積極的でない私がFSSと出会う事も無かったからだ。そう、単行本第1巻の内容を劇場用アニメーション作品としてまとめ上げ1989年3月11日に公開された映画「ファイブスター物語」である。

確かDVDを購入したのは高校生の頃だったか、FSSの名前さえ知らない当時の私が購入に至ったきっかけは覚えてはいないが確かあの頃はOVA作品に興味を持ち始めた時でその一環として調べていて行き着いたたモノだったのだろう、見終わった後に戸惑っていたような感覚を覚えている。まあ、その後実はDVDを手放してしまったのだが(当時はそこまで気に入ってはいなかった)。高校を卒業した後、ふと立ち寄ったブックオフで原作の1巻を手にし、先に記したように2巻までは読み進めた後何故かそこで読むのを止めてしまったのだが、別にFSSへの興味が失われたワケでは無かった。多分原作が完結していないという事と、長期休載が何度もあったという点が読むのを躊躇わせてしまったのだろう。どうも休載が多い作品や長期連載されている作品等に途中から入るのは躊躇ってしまう癖が私にはあるようで、おかげで「ベルセルク」は未だ読んだことが無いし「HUNTER×HUNTER」は何年も読んでいない。話題になっていた「シグルイ」も読み始めたのは連載終了後で他にも「マラソン状態」にある作品で何年も読んでない作品がある位である。

閑話休題。
そんな状態で何年か経過した中での「ゴティックメード」の告知である。確かここ2年辺りで何度か「ニュータイプ」の表紙を飾っていた筈だが、店頭でその表紙を見ると原作をさっぱり読んでいない自分に未だFSSへの興味が薄れていない事に気づかされていたのを良く覚えている。結局ニュータイプは一冊も購入していないのだが、自分の中にFSSへの興味が持続していた事を確認した段階で既に本作を観に行く事は確定していたので、あえて情報を仕入れる必要もなかったのだろう。まあ、「予告も観ず事前情報も仕入れず」はいつものことなのでアレなのだが。

しかし今回はちょっと違った。
先日発売された前作のBDの特典ディスクに永野護のインタビューが収録されていたので、作品のディテールに触れない部分で何となしに見てみたらこれがもう何というか。見た人はお分かりだろうが、見栄を切るというかハッタリをかますというか、兎に角ハードルを上げまくるのである。そこまで言うか、と。もともと観に行く事は確定していたのだが、このインタビューの発言を以って個人的には期待値は「Q」を超えてしまったのである。マジで。なので事前情報が一切無い状態で既に2回見る事はほぼ確定していたのだが、そこへさらに面白い情報が入り込んできた。

本作の公開日は1日だったのでもし行けたら3回位行きたかったのだが1日には行けず。そして本作の評価への興味が我慢できずに色々と調べていると一つだけ共通する感想が一つ。

「GTMの起動音がヤバイ」

永野護のインタビューでGTMの起動音について言及していたのだがなるほどこれか、と。普段音響の感想というのはIMAX以外では殆ど聞くことは無い。そしてそのIMAXでさえその作品に固有のサウンドデザインについての感想というのは殆ど無く、あるのは作品そのものではなくIMAXのシステムそのものについてが大半である。だからこその本作である。IMAXでもなんでもない。地方によってはミニシアター系列でしか観られないような作品でありながら音響についての感想が多数出てくるのである。これは本当に珍しいと同時に確度が非常に高いことが分かる。だからこの時点で2回観る「予定」は「確定」になった。そう、本作を観に行く事になった動機の5割はGTMの起動音を聞きに行くため。そして1割は前述したようにFSS関係だから。では残りの4割は何か。

それは本作が 4k 制作という一点に尽きる。

最初は耳を疑った。いや目か。何せ4kである。大手のスタジオが潤沢な予算と人手、そして何よりそれに見合う技術があってこそ始めて扱える解像度の映像である。素人なりにもCINEFEX等を読んでいればそれがどれほど大変なことであるかは想像に難くない。単に絵を描くという行為に留まらない、4kの画像データを扱うラインとう制作の環境自体を見直さなければならないからである。それを予算もそれほど潤沢には無いであろう状態でやろうというのである。正気か、と。しかも公開予定のある映画館で4k対応のハコはどう考えても数える程度というありさま。因みに名古屋ではミニシアター系の伏見ミリオン座のみ。

だが逆に考えれば4k対応のハコでなくとも他の劇場作品よりも圧倒的に綺麗な画を観る事ができるという事である。2kで制作された「ポニョ」以降確定的な情報は知らないがおそらく4k制作の作品は幾つかはあるとは思う。そして本作は公に4k制作である事が発表されているのである。これを観ずにいられようか。

そう、詰まるところ、私のが本作を観るに至った動機というのは何が描かれているかという内容への興味ではなく、その制作工程での技術的な側面に引かれての事なのである。いや、勿論動くGTMと永野絵が映画館で観られるという点については当然期待していたのだが、やはり圧倒的に上記の部分が比重を占めているのは事実。

そしてその期待は見事に叶った。
株式会社IHIジェットサービスの協力の下制作されたGTMの起動音は素晴らしく、誰も聞いたことの無い音と共にロボットが起動する様が確かにそこには表現されていた。心臓の鼓動にも似たハーモイド・エンジンの回転数が上がり、関節毎に部分駆動して徐々にその身を起こしていくGTM「氷のカイゼリン」。その起動音も相俟ってともすれば暴力的な印象さえ受けるその様子は正に人を殺すための兵器そのもの。恐らくロボットアニメ史上でもこれほど馬鹿丁寧にロボットが起動する際に「駆動する」という事を描いた作品は無いだろう。はっきり言ってこのシーンだけでも観る価値はある。というかこのシーンは音響含めて映画館で体感すべきなのだろう。

しかしまあ、アニメーションとしてはかなり不細工な作品ではある。正直技術的な部分はふた昔前といってもいいほどのちぐはぐ観である。少なくとも「2012年作の劇場アニメーション」を期待してはいけない。今現在のアニメの文法で作られていないので何も知らずに観た場合かなり戸惑うはずだろう。永野護は自らを称して漫画家ではなくアニメーターだと言っていたが、いやどう考えてもそこから出てきたモノは間違いなく永野護の漫画の文法によって作られた映像である。なのでこれから観に行く予定がある人はその事を念頭に置いて観た方がいいだろう。そして、この歪で変で稚拙な作品をそれらの部分含めて「そういうものだ」と逆に楽しんで観てほしい。なぜならこれはそういう作品なのだから。

というワケで多分あと2回位観る予定。

因みに前作のブルーレイ。前述したインタビュー等の特典ディスク付。







以下ネタバレ。

中盤の種まきのシーンが素晴らしかった。戦闘シーン以外で唯一手放しで誉められる場面。
GTMボルドックスの弾丸を発射する表現は良かった。が、やはり敵が2対だけでは寂しい。
エストと町が可愛かった。というか久しぶりに見るはずなのに一目で分かってしまったのはやはりあの二人のデザインが印象的だったからなのだろう。
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