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オリジナリティ、アイデンティティ [ゲーム]

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「時限回廊」のPVを見た。

見た感想を一言で言うならば「やっちまったなぁ!」である。どういう事かというと「時限回廊」は「己の信ずる道を征け」と全く同じゲームであるという事である。

では、一体どの部分が全く同じなのか。
両作品のゲームデザインはこうである。「己のゴーストの行動を勘定にいれて行動し仕掛けを解く」。ゴーストというのはプレーヤーの前回の行動パターンを視覚化したものである。「マリオカート64」や「グランツーリスモ」に始まり最近では「ミラーズエッジ」等にも採用されているモノで、黒い半透明の姿をしたキャラクターが動いているそのシステムの多くは主にレースゲームなどに取り入れられている。

そして「時限回廊」「己の信ずる道を征け」ではそれまでの「視覚情報」でしかなかったゴーストのシステムをゲームデザインに組み込んでいる。どの様に組み込んでいるかを説明するのはメンドウなので詳細は以下の動画を見てほしい。


で、問題なのがここからなのだが、先の映像を見た上で今度はこの映像を見てほしい。
http://www.jp.playstation.com/scej/title/jigen/movie/

お分かりだろうか。
両作品のゲームデザインは驚く程よく似ている。というか全く同じである。細かい違いはあれど根幹の部分は同じシステムと言える。そして発売日は「己の~」の方が5ヶ月先である。

別にパクリであるとか、パクリが悪い事であるというような野暮な事は言わない。創作において「完全なるオリジナリティ」などというものは殆どあり得ないからだ。私が言いたいのは「それ以外何もしていない」という点である。

オリジナリティと言えば、最近のTPSのトレンドは言わずもがな「肩越し視点」だろう。「バイオハザード4」が肩越し視点を生み出した後、その要素を取り入れた亜流のゲームが幾つも作られた事はあまりにも有名であるが、その中でも知る人ぞ知る「DEAD SPACE」は「バイオ4」のフォロワーの中でも一際異彩を放っている。

「劣化バイオ4」等と揶揄される「DEAD SPACE」だが、まあ確かにひいき目に見ても似ていると言えるだろう。両作品とも「ホラー+探索」をテーマとしている以上ゲームのテンポが同じになってしまうので、結果として結構似てしまう事になる。だがそれでも「DEAD SPACE」は「優れたゲーム」として評価されている。何故か。

先ず「DEAD SPACE」にはインターフェースが存在しない。TPSでは必須である体力ゲージや弾薬、レーダーの類が「ゲームのインターフェース」として存在しないのである。体力ゲージは主人公の防護服の脊髄の部分にデザインとして、弾薬は現実と同じく記憶と勘で、レーダーはステージ内の施設に設置されているポインタとして、装備やアイテムの管理やログは主人公が扱うディスプレイに表示され、一切の「ゲーム的なモノ」をデザインに落とし込んでいるのである。

次にグラフィック。「DEAD SPACE」はライティングが非常に美しく、全体的に淡い色を使う事で薄気味悪さが際立ち、そのライティングの美しさが暗い船内をライトで照らして進むというゲームデザインにも一役買っている。また敵のデザインも秀逸で、所謂モンスター然としたのではなく、赤を基調とした人とも獣ともつかない生理的嫌悪感を催す「良く分からない肉の塊」的なモノになっており、ホラー要素に即したデザインであり、無機質な鉄製の船内とのコントラストも演出できている。

そして一番特徴的であり最も評価されている点が戦闘である。「DEAD SPACE」では主人公は兵士でも何でもなく只の整備士なので、銃器は使用できず整備用の器具を使って戦う事となる。そして、敵は手が千切れようが足が千切れようがお構いなしに襲ってくるので、基本は敵の四肢あるいは首を切断しなければならない事になる。敵のデザインや部位破壊というゴア要素をただ入れるだけでなくそれをゲームデザインとして昇華する。これが「DEAD SPACE」が「バイオ4」との、強いて言えば他の作品との最も異なる部分だろう。

一見すれば確かに両作品は似ている。それに「DEAD SPACE」が「バイオ4」に対して劣っている部分も確かに存在するし、ゲームとしての完成度は圧倒的に「バイオ4」の方が上だろう。しかしそれでも、フォロワーであっても「DEAD SPACE」は「バイオ4」とは違う魅力もあるし、上記の点等で優れている部分もある。


では先に挙げた作品はどうか。

「己の~」はまず根幹のデザインとして「ゴーストの物理的利用」があり、パズル性を最大限に生かすためにDSでありながらステージを3Dで構成し、さらにそれらをパズルだけの利用に留まらせず「敵との戦闘」という要素と組み合わせ、そしてそれらに時間制限を加える事で緊張感を出す事が出来ている。

対して「時限回廊」の場合、根幹のデザインとして同じく「ゴーストの物理的利用」があるが、それ以外何もない。何もないのである。

「時限回廊」の前作に「無限回廊」という作品があるが(詳細は動画で)、あの作品が優れていたのは錯視、錯覚をゲームデザインに取り入れパズルゲームとして昇華させたという点と、それを初めて行ったという点にある。

しかし「時限回廊」は「己の~」の5ヶ月の発売であるにも関わらず「ゴーストの物理的利用」以外にゲーム性が全く存在していない。そして多分「Braid」にも影響を受けたのだろう。失敗して時間が巻き戻る演出があるが、あれはどうみても「Braid」そのものである。でもそれはゲーム性に何の影響もないし、「Braid」の様な世界観の演出や高度なアクション性や作品の構成力に対して何一つ勝ってはいない。それにせっかく「無限回路」で培った錯視、錯覚の演出があるのだからそれを今作に組み込めばもっと面白くなったはずである。

繰り返すがフォロワーである事は悪い事ではない。真似されて然るべきでもあるとも言いたい。あの「GEARS OF WAR」でさえカバーアクションが賞賛されているがあれは元々「KILL SWITCH」に搭載されていたシステムである。しかし、フォロワーがフォロワーである事に甘んじた時点でその作品はゲームとして終わっているに等しい。義務であるとは言わないが、フォロワーである事を常に自覚しつつそこから新しいモノを生み出していくのがクリエイターたる所以ではないだろうか。



と言いながら上記に挙げたソフトは全て(バイオ4以外)映像でしか見た事がないのであくまで推測の域を出ないモノではあるが、知っている人からすれば大方同意は得られるのではないかと思う(多分)。
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