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劇場版ワンピース オマツリ男爵と秘密の島 [アニメ]

「ワンピース」を最後に読んだのは確か「空島編」(そんな感じの舞台)の辺りだったと思う。島に上陸しようとするルフィ一行が敵に遭遇するのだが、その敵の有する能力が身体を「バット」と「ボール」に変化させるというモノで、そのあまりのご都合主義に呆れ、それ以来読むのを止めてしまった。

おそらく今から七、八年位前の話だったと思うが、当然その後は漫画はおろかTVシリーズや映画も全く観る事はなかった。だから、今回の邂逅は本来ならばあり得なかった、起こりえなかった事だ。そして、それは同時にそれ程本作が私にとっては「観るに値する作品」である事を意味していた。
先月、伊藤計劃氏が亡くなったのをきっかけに氏の事を知ろうと(不純ですみません・・・汗)氏のHP「第弐位相」を最初から読み始めたのだが、幾つか映画のレビューを行われているその中で本作についての分析がなされ、こんな事が書いてあった。

 「冒頭の飛行機雲を模した「パッション」もどきの航跡から、それはすでに漂いはじめている。ここまで書いたんだから、もう言ってしまってもいいだろう。それは彼岸の予感だ。この映画を覆うのは死者の風景だ。後半で突然転調しているかのように見えるこの映画も、しかし前半部からしっかり死の匂いをあちらこちらに貼付けて、それを観客に気取られないように動画は動き回り、巨大な物体はその巨大さをゴリゴリレイアウトで主張し、と煙幕を張りまくって覆い隠す。」

これは果たして「ワンピース」なのだろうか。ワンピースと言えばそれこそ「友情・努力・勝利」を体現していた作品である。しかし、そうは思いながらもその瞬間に自分の中では既に本作に対する溢れんばかりの興味が他の「観たい映画」を押しのけ私の頭の中を埋め尽くしていた。観よう。観るべき。観なければ。次の日即行でTYUTAYAに駆け込んだのは言うまでもない。

ただ、氏はこんな事も指摘していた「映画はテーマを観るためのモノではない」と。その点で言えば私はそれを犯していたし、実際そのために心から楽しんで観る事は出来なかった。そして楽しい映画でも無かった。

本作ははっきり言ってホラーである。ホラーと言い切るのは乱暴かもしれないが、それでも演出されているのは間違いなくホラーのそれである。それを一番感じたのは中盤での「カッパ」がこちらをじっと見る場面なのだが、恐らくどんな人でもこの画を観た瞬間にこれが「ワンピース」では無い事に気が付くだろう。正直寒気がした。

そしてその場面を皮切りに画面は次々と「死」に浸食されていく。いや、本来埋もれていた死が浮かび上がってくると言った方が適切だろう。そうして鎌首を擡げ徐々に表出してくる死は、ラストの戦いで少年漫画ではまずあり得ないようなビジュアルと共にハッキリとそこに映し出される。いや、これはアウトだろ。久しぶりにビジュアルで恐怖したと思う。

といった体を成しながらも、クライマックスの場面ではある人物によって本作での唯一の良心が演出されるが、それは観客に対する情けや親切心からくるモノであり、その描写自体には全く意味はなく、物語自体にも何の関係も持つモノではない。あくまでそれは物語としての落としどころを作るための単なる配慮である。と、書いていて気が付いたが、本作の主役は実はオマツリ男爵だったのだ。ルフィ一行は彼を演出するための舞台装置に過ぎなかったのである。実際、本作では「友情・努力・勝利」が全く描かれていない。

氏の言う通り本作は観て楽しい映画ではない。嫌な映画と言っても差し支えないだろう。何せ「死」しか描かれていないのだから。しかし、それでも観て損のない、少なくとも観た方が良いタイプの作品であるとは言えるし、観て良かったと思う。前回の「RAiM@S」ではないがワンピースに興味の無い人にこそ本作をオススメしたい。

ともあれ、本作について批評を記して下さった伊藤計劃氏に深く感謝。


以下ネタバレ


こういった構造の作品は媒体を問わず幾らでも存在するが、記憶に残ってる限りで確かどこかで観てたはずなんだけどなー、と本作を観終わってからウンウン唸っていたら思い出した。「真・暗行御史」の最初の方に似たような話があったな。最もあれは全員死んでいて尚かつ気づいていない話だった気がするが。
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