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2011年映画総決算 [映画]

2008年
2009年
2010年
今年は新作が37本(重複1回)、リバイバル2本。
4月から8月にかけての新作が殆ど観られなかったのがかなりイタイ。中でも「ブラック・スワン」「127時間」「ソー」を観逃したのはかなりの痛手。まあ、それでも今年は全体的にレベルの高い作品が目白押しだったので十分満足してはいるが。それと今更だが、やっぱり一作品一記事で書いた方がいいんだろうなぁ(遠い目)。というワケで長すぎるので暇な人推奨。





1位 キック・アス
号泣メーン!

2位 トゥルーグリット
正統派かつ王道な西部劇映画をスクリーンで今までに見たことが無かったという事もあるが、それを抜きにしても心の底から楽しんで観る事が出来た作品。ハリウッドアクション映画的なケレン味のある演出は極力抑え、基本主人公マティの視点から見た演出になっており、これが作品全体の緩急や銃撃シーンに独特の緊張感を与えている。そして、そうした抑えた演出が続くことの対比としてラストの撃ち合いが異様な盛り上がりを見せる。主役三人の演技、仇役のジョシュ・ブローリンの小物っぷりも素晴らしく、ジェフ・ブリッジスのどうしようもない酔っ払いっぷりやマット・デイモンの勘違い人間っぷり等演技を観ているだけでも楽しい。

あまりに正統派過ぎてコーエン兄弟が撮る必要がないという意見もあるが、コーエン兄弟作という事は関係無しに一つの作品として本当に素晴らしい作品だと思う。日本と同じくハリウッドでも時代劇映画は本当に少なくなったが、2.3年かかってもいいのでこういった作品は定期的に作って欲しいのだが、どうなのだろうか。ともあれ演技、演出、音楽、音響、美術等あらゆる要素が高いレベルでまとまった傑作だった。

3位 イリュージョニスト
ディズニー作品もそうだが、海外のアニメーション作品は基本的にどれもフルアニメーションなので日本のアニメと比べると画面の密度は圧倒的である。本作はそれが特に顕著であり、画面上の人物全員が常に動いているので情報量が膨大であるため、とても一回の観賞で全てを把握する事は出来ない。それもそのはず、本作では一人のキャラクターにつきそれぞれ専属のアニメーターが作画を担当しており、また本作において画面のレイアウトは常に引き画となっているため、キャラクターのアップになって情報量が落ちるような事が一度としてなく、常に画面上には数人のキャラクターが動いているのである。そのためシーンによるクオリティのばらつきというものが一切無く、また日本のアニメ作品にありがちな個々のアニメーターによる作画の変化も無い。

だが、常に引き絵で情報量が一定というのは悪く言えば単調にもなりがちであり、事実物語的にも一段落する中盤あたりで若干ダレるのだが、これは構造的な必然なのだろう。何せ全編に亘って台詞が殆ど無いのである。映画の作りとしては無声映画そのものであり、物語自体も情緒溢れるものでもなく非常に地味なもので特に派手な演出あるワケでもない。それでもこんなに順位が上なのは偏に私がアニメ好きというのもあるが、本作から往年のディズニー作品にあったようなある種の様式美や色彩設計の美しさを感じ取ったからなのだろう。あと、アリスが可愛い。

4位 悪魔を見た
現時点での理想のリベンジ映画。後味の良い作品ではないが私はこの作品を観たあと勇気を貰ったというか、元気が出た。エロ・グロ・バイオレンス・スプラッター。追う者と追われる者とが交錯する中で生まれる、中盤での圧倒的なまでのダイナミズム溢れる展開。露悪的とも思える様な悪趣味な演出がされる一方で唐突に挟まれる笑い。肉体に留まらず精神的にまで徹底的に追い詰める演出はやはり韓国映画ならではのモノ。単なる復讐モノに収まらず、互いの価値観がせめぎ合いながら勧善懲悪に収まっていないという点も味わい深い。正直、個人的には本作と「冷たい熱帯魚」「アンチクライスト」を観た時点で今年の映画は終了していた。

5位 一命
本当に吐きそうになった。

6位 冷たい熱帯魚
聴こえない不協和音が常に鳴っているような映画。本作も「悪魔を見た」同様に後味は良くないが、これだけ圧倒的な作品に出会えた事それ事態はやはり嬉しい。

7位 スプライス
ああ素晴らしきかなエロ・グロ・ナンセンス。ヴィンチェンゾ・ナタリがまさかバーホーベンやクローネンバーグの系譜にあるとは意外だったが嬉しい誤算である。ドレンの気味の悪い、どことなく居心地の悪いあの造詣によって本作は最高の作品となったワケだが、脚本は言われるように確かにチープではある。

しかし、ここまでお約束を踏襲してくるとそれを楽しむのが本作にとっての正しい姿勢なのだろう。というか私の場合最初から「そういう作品」として観ていたので冒頭から爆笑していたワケなのだが。特に発表会のシーンはもう本当に最高である。子育てが無意識下でテーマとなっていながらここまで観る側に身の置き所が無いというのもすごい話ではあるが、見世物小屋としては十分すぎる位である。

8位 ソーシャル・ネットワーク
心地良い。ただひたすらに観ていて心地の良い作品だった。

9位 シリアスマン
オフビートなコメディ映画はあまり観たことがないのだがこれはいいかも。正直この笑いは癖になりそう。一番笑えるシーンが一番最後というのも珍しい。

10位 アンチクライスト
非常にコメントに困る映画。変な作品である事は間違いないが終始圧倒されてしまうのは確かである。

11位 ミッション:インポシブル/ゴーストプロトコル
シリーズ史上というかトム・クルーズ映画史上一番面白かった。成功した要因は色々あるが、一番は多分従来の路線ではなく「スパイ大作戦」的な路線にシフトした事だろう。今までが徹頭徹尾「トム・クルーズ映画」だったのに対し、今作では最初から最後まで、そう本当に「最後まで」チ-ムプレイが貫かれ、それを強調する様にチームメンバーとして有名どことのであるジェレミー・レナーとサイモン・ペッグが採用されている。そして作戦内容もイーサン・ハント=トム・クルーズの肉体的資質のみに頼るものでなく、その多くをガジェットに頼るようにもなっている。例えば、肉体のみで演出しがちなチェイスシーンにGPSやゴーグル、車等を「物語り内の必然」として仕様している事。

そして、これも従来と大きく違う点なのだが、どれだけ緊迫してシーンになっても常に効果的に笑いをいれてくるのである。これはメンバーの一人がサイモン・ペッグが入っている事からなのだろうが、というより元々そのつもりで入れたのだろう。しかし、これが本当に良い具合なのである。観た後に何より先ず「面白かった」と思えたのは、間違いなく笑いによって緊張感が良い塩梅になっていたからだろう。また脚本もしっかりしており、今何がおきているのか、これから何をするのかという事を順をおって説明し、また多くの事が同時に展開しないように作戦ごとに区切りをつけているので、物語を把握しやすく余裕を持って見る事が出来る。まあ、それ故に話が単純であるという指摘もあるのだろうが、いや寧ろ悪役の造詣が「アレ」ではいくらなんでもノリが80年代過ぎないか、と言われそうだが個人的にはアレ位が本作の雰囲気には合っているのではないかと思ったのだが。

兎も角こちらの期待値以上の作品であり、正直面白すぎる位だったので観てない人には是非オススメしたい。因みに名古屋市内であれば現在ベイシティで8.1×19.4mのスクリーンで観られるのでどうせ観るのなら大きいスクリーンで。蛇足だが、一つ苦言を言わせてもらうならば、本作はILMが担当していながら冒頭の爆破シーンは正直遠めに観ても厳しいクオリティなのでそこだけは残念。

12位 キッズ・オールライト
同性愛を扱った映画でここまでポジティブなモノも珍しい。しかも結構笑える。しかし、本作を観ていると良くも悪くも子供にとって父親は必要だという事を思ってしまう。別に女性蔑視や男性優位というワケではないが、息子にせよ娘にせよ「古きよき父権」というものは父親殺しに代表されるように一定の役割を担うことができるワケであり、理想像、反面教師、乗り越えるべき壁等どのような形態であったとしてもそれは一つの指標となり得るのである。もちろんそういった側面は母親でも担うことは可能ではあるが、問題なのは本作の様にどちらかが欠けているような状態である。

本作では主人公夫婦(レズビアンカップル)に年頃の息子と娘一人づつがおり、彼らが生まれる基となった精子を提供した男性に会いに行く所から話が始まるのだが、息子はその男性に父親としての側面を、娘は父親であると同時に男性としての側面を感じ、二人は父親に会うたびに生き生きしていくのである。そういった事を今までに知らなかったとしても、恐らく生物学的な本能として「それ」は不足しているものであると感じているのだろう。同性愛の夫婦でも父親、母親の役割はある程度は果たせるだろうだがそれもあくまで「ある程度」であり、本質的にはそれが歪な形である事は否定の仕様が無い。

子育てにロールモデルは無く全ては統計に基づくガイドラインでしかない。だからどの形であるべきなどという事は言えない。だが、どこまでいってもやはり「身体が一番良く知っている」という事になってしまうのだろうか。なんて事を考える。

13位 アジョシ
アクションシーンのクオリティだけで言えば個人的には今年No.1と言っていいほど。最初のナイフ奪取から最後のナイフ戦まで個々のアクションシーンで見せ方が工夫されており、直接的に見せたり時には敢えて見せない事で緩急をつけていたりとアクション映画として非常に良く出来た構成となっている。また、クラヴ・マガを基本とした主人公テシクの動きが非常に素早いためアクションシーンが間延びせず、動きが早いことそれ自体が相手との駆け引きで止まっている部分との対比となっているので、最後の大立ち回りのような一つの部屋で10分以上展開するような戦闘シーンでも緊張感が途切れない。

また、それぞれのキャラクターが非常にいい味を出しており、テシクが基本無表情かつ言葉も少ない事と相俟っていいコントラストとなっている。一つ苦言を呈するならばテシクの元特殊工作員という設定がテシクの強さの根拠だけにしか意味が無く、行動が全て行き当たりばったりなのは如何なものか。あらゆる手を使って相手を徐々に追い詰めていく様な展開にすればもっと面白くなったとも思うのだが(そんな映画が最近あったような・・・)。

14位 ザ・ファイター
「ザ・タウン」もそうだったがアメリカ映画は低所得者層の不良やその周辺地域における地元特有の独特の臭いや雰囲気というものを描くのが上手い(実際は兎も角)。本作でもベール演じる兄ディッキーのヤク中っぷりや母親とその取り巻きに漂う内輪で陰気な雰囲気、そしてそれらに画面上からも明らかに息苦しさを感じている弟ミッキーなど、主役二人のキャラクターを際立たせるための土台が非常にしっかりしており説得力が感じられるのである。

そしてその説得力の確かさはボクシングシーンにも現れているわけなのだがこれもまた素晴らしい。急遽対戦相手が交代する最初の1戦目では自分よりも体重が上の相手が登場するわけだが、これがミッキーの心理状態同様どう考えても勝てる気がしないのである。体が一回り近く大きい相手選手が現れた瞬間、観ている側も主人公ミッキーも同時に負けを悟る。勿論肉体あっての説得力ではあるのだが、作品暦と顔の造詣からして、明らかに肉体派ではないマーク・ウォールバーグの表情が何よりもそれを物語っているのを見ると、なるほどこのキャスティングは正解であった。

おそらく今までで一番肉体作りをしたであろうマーク・ウォールバーグの体は誰がどう見ても正にボクサーのそれであり、物語を飾る最後の一線は相手の強さも相俟って思わず拳を握り締め手に汗をかいてしまうような、非常に見ごたえのあるシーンとなっている。

15位 映画けいおん!
改めて後日に。一つだけ言わせてもらうなら「少しでも興味があって以前観ていてなおかつ嫌いではなかった」という人は観た方が良い。TVシリーズ途中でも。私がそうだったから。

16位 イップマン 葉門
対サモ・ハン・キンポー戦しか印象に残らなかったというのが正直なところ。というのも全体の構成が前作と良く似ているので物語的な面白みが幾分薄れてしまっているのである。特に最後の対ボクサー戦では異種格闘技戦という面白さは当然あるものの、戦いの動機が前作と同じく「武道家の誇り」に終始しているため既視感が強く、どうしても盛り上がりにかける。別に面白くないというわけではなく、本作も手堅くまとまっているので見ごたえはあるのだが一本の筋が通っていた前作に対して本作はどこと無く散漫な印象を受ける。とは言ってもドニー・イェン演じるイップマンの詠春拳の動きは相変わらず素晴らしいので、これだけのためにでも見る価値は十二分にあるだろう。

17位 リアル・スティール
「感動の親子愛」みたいな宣伝がされていたので嫌な予感はしていたのだが、案の定中身の無い薄っぺらな人間ドラマが展開されたので正直その部分は大きなマイナスポイントとなってしまったのだが、最後の世界ランク戦でそんな事はどうでも良くなってしまった。もうね、あんな展開をされたら応援せざるを得ないし、正直あの演出は卑怯だが同時にこれ以上無い最高のシーンであり、スローモーションの中拳を振り上げるあのシーンはそれだけで全てが許せてしまうほど最高のシーンだった。

18位 英国王のスピーチ
ジョージ6世個人の物語に終始せず、言語療法士個人の問題を絡める事によって物語に深みが出ている。散々言われていることだろうが主役二人の縁起が兎に角素晴らしく、この二人の掛け合いを見ているだけでも楽しい。作品としては少々こじんまりとしてはいるが良作には違いない。

19位 トランスフォーマー ダークサイドムーン(IMAX DIGITAL 3D)
冒頭のサイバトロンでの戦闘シーンの立体感が素晴らしい。このために2200円払っても良い。前作リベンジから続く脚本の支離滅裂さはここにきて更に拍車がかかり、ヒロインが急遽交代することによっていよいよもって益々意味不明な事になってはいるが最早そんな事はどうでもいい。本作を観にいった目的は只一つ。ILMとDigital Domain、最先端の3Dカメラと湯水の様に使われた金によって作り上げられた「スゲェ3D映像」である。

そして、果たしてそれは期待した通りのモノだった。特にCGのクオリティに関しては予想の斜め上を超えるレベルだった。前作リベンジでは森林でのオプティマス乱戦シーンとデバステーターの一連のシーンにフィルムIMAXでの撮影がなされていたが、本作こそ正にフィルムIMAXに相応しいクオリティと言える。特に「高層ビルねじ切り」シーンは画面内で起こっている事の規模の大きさも然ることながら、CGの精細感が半端ではなく、20m級のスクリーンに映しているにも関わらずブルーレイで観ているかのような密度なのである。

ただ、スクリーンで見る場合ビスタよりもシネスコの方が映る範囲が広がるので問題は無いのだが、ディスクとして観た場合ディスプレイの規格が16:9に限られてしまうためシネスコの作品はどうしてもビスタ作品よりも迫力に欠けてしまうのである。前作リベンジの「BIG SCREEN EDITION」が良い例だろう。まあIMAXの場合撮影自体に手間がかかるので仕方の無いことなのだが潤沢に予算があるなら本作でもIMAXシーケンスは入れて欲しかったのが正直なところである(23型でシネスコは辛い)。

3Dのレイアウトを意識した事によって多少カメラの揺れは抑えられたらしいが、それでもやはりマイケル・ベイはマイケル・ベイである。正直あんまり変わらん。兎に角彼是言ってもしょうがないので本シリーズは祭りとして楽しむべきなのだろう。結論「マイケル・ベイを否定してもしょうがない。」

20位 アンストッパブル
劇場作品としては久しぶりの正統派乗り物パニックモノ。99分という短さも然る事ながら、テンポ良く事態が進行しそれに連なって問題が発生していくので見ていて飽きない作りになっている。主人公男二人について「離婚寸前の妻」と「すれ違う娘との仲」というベタな設定があるがベタなりに物語を盛り上げてくれる。

そして何より爆走する鉄の塊である列車と水を得た魚の様に炸裂するトニー・スコットの演出だろう。オープニングで列車にフォーカスするやいなやエフェクトをかけ、カットを切りまくり、これでもかという程カメラを揺らした後列車を正面に捕らえ「UNSTOPPABLE」の文字。思わず「ガキーン!ガキーン!」みたいな効果音が聞こえてきそう(というか確実に鳴ってた)なカットだが正直これだけで大爆笑である。潔いとは正にこの事。この時点で最早主役はこの列車以外ありえないだろう。

暴走後も自己主張が激しい列車からは鉄味のある素晴らしいSEが鳴り続け、特にブレーキをかけたときに線路との間に火花が散るシーンなどは劇場の音響システム様様である。脚本に関してはスクリプト・ドクターの三宅隆太氏が指摘されたように幾つかの欠点はあるものの、列車が暴走しているという現象それ自体で映画は自然と盛り上がってしまっているのであまり気にはならない。傑作とまでは言わないが乗り物パニック映画としては良作なのでないだろうか。

21位 ザ・タウン
ジェレミー・レナーのチンピラっぷりが素晴らしい本作。明らかに「ヒート」に影響を受けていることは確かなのだが、決して模倣に終わってはいないのがベン・アフレックの才能所以という事なのだろう。主演の男二人の不良感やそれを取り巻く街の「地元感」がうまく表現できており「そう」としか思えない雰囲気、絵作りは素晴らしい。

22位 仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦 MEGAMAX [2回]
MEGAMAXというより、MEGA盛り。何せ「フォーゼ」「オーズ」「ダブル」「昭和ライダー」の4作品で構成されているのだから。なのでそれぞれの世界観、設定を多少なりとも説明しなければならないので若干冗長にならざるを得ない。それでも省略すべき所は省略し、描かれるべきところはしっかり描かれているので、TVシリーズを全く観たことが無い私から観ても全体としては良く出来ていると感じた。特に劇場版Wに引き続き今回も坂本監督による演出がされているのでアクションシーンは十分に見応えがある。

驚いたのが、というか当たり前なのだが、アクションシーンにおいて各ライダー毎に動きに特徴がありそれがアクションシーン毎の緩急にもなっているので、戦闘シーンが多少長くても単調にならず寧ろ違いを楽しめるようになっている。それと本作を観て分かった事なのだが、どうやら自分で思っていた以上に私は「W」が気に入ってしまったらしい。多分TVシリーズ全話観るかも。

23位 スコット・ピルグリム VS 邪悪な元カレ軍団
アニメ・漫画的な表現や数々のオマージュは観ていて楽しいし、マイケル・セラの相変わらずのひ弱そうな物腰にも楽しませてもらったのだが、如何せん私の目には刺激が強すぎたらしく常時ポケモンフラッシュ状態だったので、早々に退場したかったというのが本音。同日の1本目に観た「キッズ・オールライト」が日中の明るいシーンの多い作品だったのが災いしたのだろう。残念。

24位 劇場版 マクロスF 恋離飛翼 ~サヨナラノツバサ~
TVシリーズ全話視聴済み。前作は未見。TVシリーズでは誰もが「お前が言うな!!」と突っ込んでいたであろうランカ・リーだが正直本作では非常に魅力的な印象を受けた。恐らく初めてである。私はTVシリーズの頃から本シリーズに関してはキャラクターに全く思い入れが無かったのだが(というか作品自体に)、本作では初めてキャラに魅力を感じたのである。具体的にはランカのライブシーンなのだが、TVシリーズの頃から賛否の多かったランカのキャラクター故に、本作ではそれらの評価を覆そうかとするかの如く製作側のランカに対する愛情が半端ではなかった。

インタビュー等をみて特に確認したわけではないが、あのライブシーンでは明らかに製作側の「ランカを魅力的に魅せたい」という意思が感じられたのである。演出、カメラワーク、カット一つとっても劇場のスクリーンで映えるようにレイアウトが計算されており、衣装デザインの豊富さもさることながら、効果的に使用されるエフェクトの3DCG部分もセル画に対して違和感も少なく、正直ここまで「映画として」演出できていることに驚いてしまった。何よりも顔の表情の豊かさが素晴らしい。当該シーンでは確かシェリルがライブを観に来ており、歌の途中で「乙女心 勇気出して」という歌詞をランカがまるでシェリル個人に向けて語りかけるように歌うのだが、恥ずかしながらこの時私は心が震えてしまった。恋敵である相手に対して年端も行かない少女が激励するというその気持ちの内、心意気に。

本作については当初見に行く予定が無く、ネットで評判を調べてみると何かと「ライブシーンが凄い」という意見が多かったので物見遊山的な心持で観にいったのだが、結果としてこのライブシーンにすっかり心奪われてしまった。ハッキリ行ってTVシリーズ全26話を計4時間にまとめて再構築したダイジェスト版なのでストーリーに見るべきところは殆ど無く戦闘シーンも相変わらずなのだが、ライブシーンだけは手放しで、いや寧ろ諸手を挙げて素晴らしいと良いたい。観て良かった。

25位 猿の惑星 創世記
まさかの猿版「プリズン・ブレイク」。そして、大盤振る舞い的にこれでもかと披露されるWETAの技術博覧会。研究所に隠れて育てる件は、主人公達と観る側が共犯関係になる「スプライス」の方が緊張感があって良かったのだが、果たして街中で猿を育てて何年も通報されないものなのか。前半は観ていてタルいのだがシーザーが収監されてからは俄然面白くなり、持ち前の頭脳を駆使して猿山の大将に成り上がっていくのは観ていて非常に気持ちが良い。突っ込みどころを挙げればきりが無いのだが、それでも物語全体に一本の筋が通っており、猿を主人公にしておきながらきちんとしたエンターテインメント作品に仕上げているので前半は兎も角、後半からは素直に面白いと言えるし万人に勧めたい作品である。

26位 タンタンの冒険
終盤のチェイスシーンは圧巻。これだけで元はとれる。が、しかしそれ以外に特筆すべき点があまりないので結構タルい。

27位 モールス
改変によって、アイデンティティの問題にまで踏み込んでいた「ぼくエリ」に対して作品として後退してしまっている。オリジナルの素晴らしさをなるべく損ないたくないという監督の熱意は汲み取るが、真似るにしても中途半端すぎる。CGを極力排した「ぼくエリ」に映像的に劣っているというのはどうなんだ。

以前にも書いたが完全オリジナルで作って欲しかった。アメリカを舞台にする以上キリスト教的価値観に根ざしたものになるのは全く問題がないのだが、問題提起をしておいて回答がないというのは何とももやもやするものである。具体的には、中盤に主人公が父親に対して電話口で「この世に悪は存在すると思う?」的な事を聞くのだが、最後までその「悪」が何なのかは明示されず、また主人公が「悪」に対して如何なる選択をとるのかも描かれないので、自ら疑問を提示しておきながら結局最後まで為すがままなのである。折角「キリスト教的価値観」という良いギミックがあるのにそれが物語的に生かされなかったのは残念。

28位 トロン・レガシー(IMAX DIGITAL 3D)
前作は未見。主人公の代替不可能性が希薄なせいで物語が致命的に盛り上がらない(ラスト以外)。ジェフ・ブリッジス一人舞台状態。

29位 キャプテン・アメリカ ファースト・アヴェンジャー(master image)
スーパーヒーロー映画における最も大事な場面となる「着替え」と「初舞台」シーンをまともに描かなかった時点で本作は大失敗作である。古今東西「制服」への着替えとは儀式に他ならず、そこには精神的、肉体的な生まれ変わり、イニシエーションとしての意味合いが存在する。ひ弱な高校生に過ぎないキック・アスでさえそこはしっかり描かれていたし、ヒーロー映画ですらない「アジョシ」に至っては気合が入りすぎているぐらい描かれていた。

そして初舞台に関しては言わずもがなである。映画全体の流れからすれば主人公のキャラクターと強さを最も印象付ける必要な場面なのに本作ではなんとそれを演劇的なダイジェスト映像で見せてしまったのである。これは酷い。肩透かしもいいところである。本作を観終わった後に色々比較して考えていたのだが、スーパーヒーローの誕生を描いた作品としては「アイアンマン」は本当に素晴らしい映画だったと思う。

3という縁起の良い節目のスーツで初陣、装着の様子を丁寧に描き社長の顔のアップでカット。略奪が行われる村の中心部に空から降ってくるという最高の登場をするのだが、特筆すべきはスーパーヒーローの条件である「社会的な承認」がこの1分程度の撃退シーンだけで観客の間と劇中の村人の間に生まれており、また続くミサイル破壊シーンとF-22とのチェイスシーンで、アイアンマンの強さがほぼ明確に説明されているのである。そして、その後スーツの動力源であり社長の心臓でもあるリパルサーの初期型はエネルギーに限りがある事、それ故にクライマックスでの戦闘に緊張感が生まれている事。つまり映画全体がアイアンマンのスーツを中心に回っているのである。

だが、「キャプテンアメリカ」では主人公の強さが分からない。不明とまでは言わないまでも、何が弱点なのか、どの程度力が強いのか、どれくらい打たれ強いのか。人間と比較して生物学的にどのレベルにあるのかが分からないのである。だから劇中火炎放射器で包囲された時も、「まあ流石に火には対抗できないのだろう」と観る側は推察する事しかできないのである。あと、全体の構成にも問題があるのだが、味方の兵士が順当に勝ち進みすぎて全く緊張感が無く、寧ろ映画後半からは敵側が可哀想に思えるほど敗戦ムードが漂っており、オマケに敵の大将も弱いのでキャプテン・アメリカがどう活躍しようとも最早どうでもよくなってくるのである。

正直、第二次大戦の雰囲気を再現した質感は個人的にはストライクであり、各キャラクターも魅力的なので観ていて楽しくはあったのだが致命的なまでに面白く無かった。

30位 世界侵略:ロサンゼルス決戦
既視感を強く感じると思っていたら何のことは無い。演出やストーリー展開が80年代なのである。読もうと思っていないのに先の展開が読めてしまう。まるでエメリッヒ監督作であるかの様に。それと、本作をしてBHDと比較する意見が目立つが、本作がSF版BHDになれなかったのは何故か。それは「暴力の意思」が描かれていなかったからだろう。BHDでは、劇中1,500~2,000人という数の暴力で押し寄せてくるソマリア民兵には一人一人に怒りの感情があり、主人公側レンジャー部隊に対して明確な殺意が存在していた。特に後半の墜落したブラックホークの近くで篭城していた一人の兵士に対して100人近くの民兵が群がっていく場面は「暴力」そのものであったし、あの場面で恐怖した人も多いはずである。

だが、「ロサンゼルス決戦」ではそういった敵側の暴力の意思、恐怖は全く描かれない。中盤まで敵の姿が明確にならないし、明確になっても表情などは読み取れないからである。「宇宙戦争」の冒頭のような圧倒的な破壊力描写があるわけでもなく、恐怖に逃げ惑う民衆が描かれるわけでもない。外宇宙からはるばるやって来て乳母車型ミサイルランチャーをもたもたと動かされてもこちらとしては反応に困るだけである。音は良かったが。

31位 RED
老人版「エクスペンダブルズ」。なのだが、それ故にヌルイ(楽しかったケド)。

32位 50/50
何というか・・・。今更こんな「ガンにまつわるテンプレ」みたいな映画を見せられても何の感想も持ちようが無い。正直セス・ローゲンの下ネタしか印象に残ってない。

33位 永遠の僕たち 
これは「50/50」の逆で「残される者」を描いてはいるのだが、これもテンプレの域を出ないので感想の持ちようが無い。

34位 完全なる報復
オチが腑に落ちない。

35位 マルドゥック・スクランブル 燃焼
前作同様、アニメ化する事の意義を問うてしまう本作。詰まるところ目新しさが皆無なのである。全てが予定調和であり、本作が映像でありながら文字情報に過ぎない小説である原作以上の事が何も起きないので退屈極まりない。これは前作の時点で思っていたのだが、原作の時点で構成が歪なのだから商業、それも劇場で上映する以上はその文法に則った構成にするのが映画のセオリーというものである。

別にセオリーを至上命題にするつもりは無いが、良くも悪くも「セオリー通り」というものは一定の面白さが確保されるか、その可能性があるからである。ハリウッドロジックなどは正にその典型である。本作は原作が3部に分かれているので効率を考えると1部ずつ順当に製作していくのが妥当な選択なのだろうが、二作共観た人は分かるように本作では「それ」は限りなくアウトであった。作画のレベルやクレジットを拝見するに製作資金が限られている事は推察できるが、それにしても「魅せる」シーンがあまりに少ない。原作通りに描くのであれば(構成に問題がある以上)作画にしろディテールにしろ緩急をつけるためにも密度を濃くする場面が必要だったのではないか。演出にしてもそうだが余りにも平坦すぎる。

どちらにせよ監督の技量不足感は否めない。私はまだ原作の3部を読んではいないのでこの先どの様な展開になるかは分からないが、敵であるボイルドとの一騎打ちが確実にクライマックスになる以上、比較的構成しやすい作品にはなるとは思うのでともあれ次に期待である。因みに前作のディレクターズカット版はまだ観ていない。

36位 GANTS
2作目は未見。原作を読む限りでは本作の売りの半分は「エログロ」だったと思うのだが、映画上ではそんなことは露知らず。内蔵どころか腕すら千切れず、あまつさえ血すら出ないのである。ああ、なんたることか。分かリきっていたことではあったが、いざ提供されたモノを観てみるとこれはもうGANTSでは無い。

37位 ウォールストリート
「ソーシャルネットワーク」で十分。


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