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「アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝」レビュー [ゲーム]

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発売:2007年1月19日
開発:NAUGHTY DOG
販売:SCE
ローカライズ:SCE/日本語音声・日本語字幕・英語音声・英語字幕

傑作でも凡作でもない。丁寧に作られてはいるが格別面白いというワケではない。「クラッシュ・バンディクー」「ジャック×ダクスター」を手掛けた「NAUGHTY DOG」のPS3初タイトルは正に「良質なアクションゲーム」そのものであり、それ以上でもそれ以下でもない。

秘宝を巡る遺跡探索モノといえば有名どころでは古くは「インディ・ジョーンズ」に始まり、それがゲームの世界に取り入れられ3Dアクションゲームとしてその体を成してきたのは「トゥームレイダー」からだろうか。3Dの立体的なステージに張り巡らされた幾つもの仕掛けを掻い潜り、パズルを解き、時には襲い掛かる人や異形の者と戦うそのスタイルは正にアドベンチャーそのものであり、当時心躍らせた人も多かっただろう。本作はそのアドベンチャーゲーム「トゥームレイダー」の系譜からの正統進化系の作品であるが、次世代機への移行に伴って諸要素がブラッシュアップされ非常に「現代的な」ゲームへと昇華されている。

「現代的なゲーム」とは如何なるモノか。
ハードのスペックの大幅な向上に伴って高度な処理が可能になった現在、多くのゲームに求められているのはおそらく「インタラクティブ性」だろうか。PS2時代のように予め別に製作されたプリレンダムービーを流すことによって物語を「魅せる」のではなく、可能な限りプレイヤーが操作する時間を増やしそこにスクリプト演出を「組み込む」事によって、あたかもその場所にいる、その出来事を「体感している」様に感じさせること。この文章を書いている時点で私は既に本作の続編を終えており、かのスクリプト演出の帝王「MODERN WARFARE 2」も体験してしまっているのだが、ここ数年でこの類の技術(見せ方含め)は大分成熟してきた様に感じる。

「アンチャーテッド」には3つのパートがある。
「3Dアクションパート」と「TPSパート」と「格闘アクションパート」である。一見するとこの3つの要素は噛み合わないようにも見えるのだが、と言うのも「3Dアクション」「TPS」「格闘アクション」のどれもがゲーム中の視点が異なるからである。キャラクターを中心とした見下ろし型である「3Dアクション」、バイオ4以降の最早常識と化しつつある肩越し視点の「TPS」、3Dで製作したとしても基本が自キャラと他キャラを結ぶ直線の空間だけになる「格闘アクション」。と書いていて気が付いたが、「TPS」は寧ろ従来全く別物として扱われていた3Dアクションとシューティングという二つのジャンルをプレーヤーの視点をキャラクターの肩越しに設定する事によって旨く折衷することの出来た革新的なデザインだったのではないのだろうか。だからこの場合、というかバイオ4以降の「3Dアクションに肩越し視点を組み合わせた作品群」は実は新しいジャンルを創造していたことになるのだが、今更になって気付くことになってしまった(汗)。

話は変わるが、私は当時MGS3に対して一つの不満があった。それは3DステルスアクションとFPS視点でのシューティング要素の噛み合わせの悪さである。MGSは基本がステルスアクションである以上敵に見つからずに進むことが前提であるため、ゲームデザインは当然それに特化した作りとならざるをえない。つまり敵を積極的に排除する事が極端に言えば困難になるような仕様である。隠れて進む事が前提である以上、プレーヤーにとってその効力が最大限に生かされるのは当然見下ろし型の視点である。手前、左右、後ろ。プレーヤーが最も危険を察知しやすく、かつ自キャラが見えることで対処しやすいという点において見下ろし型の始点は最もステルスアクションに適していたと言える。しかし、MGSは2になってから主観視点での射撃を採用することになる。潜入というゲームデザインにおいてプレーヤーがよりミクロなレベルで行動を起こすことが可能になるからである。主観視点を通すことによって、銃撃一つにおいてもどこに、誰に、何で攻撃するかという選択肢の広がりがあたえられたため、結果プレーヤーの数だけプレイスタイルが生まれることとなった。

しかしMGS3になってから話は違ってくる。
まあ、これはあくまで私個人の意見なのだが、MGS2の時は選択肢が広がった事に満足していたので良かったのだがMGS3では前作からのシステムの変更が殆ど無かったため現行のシステムに対する不満が生まれてしまったのである。それが「3Dアクションと主観視点の噛み合わせの悪さ」である。どこが不満ふだったのか、何が不満だったのか。対照的な事例として主観視点のシューティングゲームである「FPS」を挙げてみることにする。

FPSの利点とは何か、それは直感的な操作に他ならない。
FPSでは映っている画面そのものがプレーヤーの視点であるため(現実ではもう少し広いが)、ゲームからプレーヤーに対して、プレーヤーからゲームに対しても直感的な操作が要求される。走る、撃つ、隠れる。FPSでは主観視点のみを採用する事によってこれら一連の動作を途切れされることなく連続で行うことが出来る。レスポンスが命でありそこに「遊び」があってはならないFPSなのだが(『KILLZONE2』は嫌いではない)、だからこそ狙う→撃つというプロセスに重きを置いたシューティングゲームにおいては主観視点は最も適しているのである。

では、従来の3Dアクションゲームに主観視点を組み合わせたMGS2・3はどうか。
先にも書いたがこれが非常に噛み合わせ、組み合わせ、食い合わせが悪いのである。MGSはミリタリーアクションである以上銃器が豊富に登場するのだが、MGS2以降はプレーヤーの選択肢が増えた分、戦略的に考えても主観視点で攻撃するのがセオリーとなっている。しかし、FPSとは違い3Dアクションに主観視点を採用しているMGSでは精密射撃を行う際は必ず一度その場に立ち止まらなければならない。つまり、銃を撃つという行動一つにしても「見下ろし視点で移動→立ち止まって主観視点に移行→銃を構える→狙う→銃撃」という、トップダウンで一々確認と承認を取らなければならないサラリーマン的で非常に面倒なプロセスを経なければならないのである。さらにMGSシリーズには戦略諜報アクションでありながらその伝統として道中に何度かBOSS戦が挿入されるのである。ステルスアクションなのに。

前述した様にMGS2以降は3Dアクション+主観視点が基本形なのだが、これがBOSS戦になるとどうなるか。書いていて思い出したが、BOSS戦においては既にMGS2の時点で私は煩わしさを感じずにはいられなかったのである。BOSS戦では基本的にこちらが攻撃を仕掛けた後、敵の攻撃をやり過ごすというプロセスを繰り返すのだが、相手は常にこちらの位置を把握して攻撃してくるためそれらを避けつつ同時に応戦しなければならない。つまり、こちらも動きながら相手の位置を把握しつつ前述した「サラリーマン的トップダウン攻撃」という事を繰りかえさなければならないのである。

この歪で効率の悪いゲームデザインになてしまったのは3Dステルスアクションであるが故の必然なのだろうが、おそらくこの歪さについては製作側も感じていた節が強い。そう、だからこそのMGS4での肩越しTPS視点の追加である。バイオ4は肩越しTPS視点を生み出したと同時にそれは既にデザインとして完成していたのだが、実はあれはシューティングでありながらアクション性が非常に強い。アクション的な動作とそりが良いと言った方が良いのだろう。人間の主観視点をゲームに取り入れたせいで上下の空間認識が困難になりアクション的な動作に対して精密な反応が出来ないFPSと、空間認識性に優れておりシューティングでありながら立体的なアクションも行うことが(容易に)出来るが精密かつ俊敏な射撃には不向きであるTPS。その中間にカメラを置くことによってFPSの射撃性とTPSのアクション性を併せ持つ事となった肩越しTPS(正式名称があるのかは知らんが)はゲームデザインとして非常に優れていると言える(何という今更感)。

そして、MGS4は肩越し視点を導入した結果、アクション部分と射撃部分の乖離が薄まり「移動→隠密→射撃」のプロセスに「流れ」を生むことができ、私の不満部分でもあったBOSS戦での応戦プロセスでの効率の悪さが解消されたかの様に見えた。そう、かの様に見えたのである。というのもMGS4は肩越し視点を採用しておきながら主観視点も一緒に搭載していたからである。となるとどういうことになるか。三人称視点と肩越し視点の割り振りのためにただでさえボタン配置が大変なのにそれに加えて主観視点のボタン配置も組み込まなければならないのである。これについては当時TGSで初のプレイ動画が公開された時は三つの視点をシームレスに切り替えることが出来ることに感動し「非常にバランスが良い」みたいな事を言っていたのだが、実際はそうではなかった。

先のMGS2・3について、アクションと射撃部分の乖離が不満だったと記したがあれには一つだけ良い点があった(と言ってしまうと誤解を招きそうだが、そもそもMGS2・3はゲームとしてのクオリティ、完成度が非常に高く、何より私自身MGS大好き人間である)。それは、R1ボタンで瞬時に主観に切り替えられる事によっての場の空間認識が容易であるという点である。いちいち立ち止まってボタンを押して切り替えなければならない手間はあるものの、隠密行動が前提であった事を考えると瞬時に切り替えられるという点についてはステルスアクションゲームというジャンルに即したゲームデザインだったように思える。しかしMGS4では主観視点に移行するまでにボタンを「二回押す」という何故か1クッション追加された仕様になっていたのである。個人的にこの仕様はかなり残念だった。

「別に肩越しの時点で十分空間が認識できているだろうに」と思われるかもしれないが、実はそうではない。ゲームで空間を認識するとき、特にFPSやTPSのようにそれが戦術的に意味を持っているとき、それは「見渡す」という行為があって初めて形を成すのである。そして、FPSとTPSでは「視点の位置」が異なる。

視点の構造を扇子に置き換えてみると良く分かるのだが、扇子には束になった和紙を束ねて固定している一点とそこから下に少しはみ出している部分があり、あれがFPSとTPSにおける視点の位置となる。ではどっちがどの部分に該当するのか。もうお分かりだろうが固定している点の部分がFPSではみ出した部分の端の部分がTPS(肩越し含む)である。FPSはプレーヤーの視点と操作するキャラクターの視点の位置が同じなので、感度にもよるがプレーヤーの感覚とほぼ同じように画面内の視点を動かす事が出来る。しかし、TPSの場合、プレーヤーの視点と操作するキャラクターの視点には距離があるため、視点の操作は常に「操作するキャラクターを軸にして行われる」のである。つまり移動する視点とは対称的にプレーヤーの位置も移動するという事になる。そのためTPSにおいては視点を動かすと言うよりも寧ろ「振り回す」という表現の方が適当であると言える(同時に「振り回される」)。

そして、TPSが「自キャラを解しての視点を振り回す」モノであるという事は、すなわちTPSにおける空間認識は常に自キャラを通じて行われるという事になる。つまり、下手に視点の移動速度を速くする事は出来ないという事である。こればかりは感覚的なモノなので実際に体験してみないと分からないのだが、TPSでの素早い視点の移動は非常に落ち着かないのである。酷い時には頭痛がしたり酔ってしまう事さえある。因みに私は乗り物酔いにはかなり強い方なのだが、FPSやTPSにおいて今までにプレイ中に気分が悪くなったことはそれぞれ一度だけである。そしてそのタイトルとは「PREY(2006)」「STRANGLEHOLD(2007)」なのだが、プレイしたことがある人ならば多分分かるだろうと思う。「PREY」(FPS)に関してはまだ良い。あれは重力制御の床が天井や壁に向かって伸びているため、移動する度に上下感覚が狂い三半規管にボディーブローを食らう仕様なので今回の論旨とは関係は無く、また仕掛けとしては非常に魅力的であったからだ(少しだけだったし)。

問題は「STRANGLEHOLD」である。
「STRANGLEHOLD」はTPSなのだが、本作は自キャラの移動速度が速く視点の移動速度も非常に速い。加えて四方八方から敵が出現するため、常に自キャラの状態と周りの状況を把握するために常に画面に注力しておく必要があり目が非常に疲れるのである。そして画面内のオブジェクトの数が兎に角多い事も相俟って(因みにコンセプトの一つは「何でも破壊可能」)、目まぐるしいの事この上ないのである。幸い気分が悪くなったのは1つの章だけだったので「積む」様な事にはならなかったのだが、後にも先にもあれ程のモノは無い。

TPSはFPSに比べて把握しておく(意識に留めておく)べき情報が多い。敵のみに注力しておけば良いFPSとは違い、TPSでは自キャラの状態も含め自キャラが常に画面内に移っているということを否応無く意識させられるようになっている。「プレーヤー→自キャラ→フィールド」という認識プロセスを経る事が不可欠である以上、無闇に視点の移動速度を速くする事は出来ない。だからTPS視点は空間認識には不向きなのである。少なくとも戦術的な観点では。2006年以降肩越し視点を採用したTPSは幾つもあるが、そういった構造的な違いを理解せずゲームデザイン論まで踏み込んで作られたタイトルは少ない。そして未だに「そういったモノ」は存在する。

閑話休題。
最早どこからどこまでが閑話なのか(本当はゲームデザイン論として別枠で書くべきなのだろケド面倒なので・・・)。

さて、「アンチャーテッド」には「3Dアクションパート」と「TPSパート」と「格闘アクションパート」があると書いた。そしてTPSはアクション性が高くテクニカルな操作が要求される3Dアクションとも非常に相性が良い。見下ろし型の三人称視点と肩越し視点はその切り替えにおいてプレーヤー側での視点の移動距離が短いため、MGS2.3の様な乖離がかなり低減されるからである。そのため肩越し視点からのアクションへの移行をスムーズに行うことができる(逆も又叱り)。最近のタイトルであれば「スプリンターセル コンヴィクション」がそれを最も実感できるだろう(因みに「コンヴィクション」はかなり良く出来たゲームなので是非ともオススメしたい一本である)。しかし、残念ながら「アンチャーテッド」は、少なくとも1作目に関しては肝心の銃を撃つことの楽しさ、気持ちよさがあまり感じられなかったため、個人的にはTPSとしては評価することはできなかった。まあ、これも「NAUGHTY DOG」の躍進へと繋がったのだから結果的には良かったと言えるのか。

そんなワケで(どんなワケだ)残る「格闘アクションパート」についても実は出来は芳しいものではなかったりする。正直「格闘アクションパート」と言えるほど大層な仕様ではなく、敵に接近して格闘ボタンを連打するだけの単純なものなのだが、実はこの「連打する仕様」が厄介なのである。

接近戦が可能なTPSにおいて、射撃と格闘のバランスは非常に重要な問題である。一番楽なのは接近戦を仕様に入れない事なのだが、接近戦を組み込む事でプレーヤーの戦術プランに広がりが生まれ(特にマルチプレイ)射撃一辺倒なゲーム性にテンポが生まれるからである。「中~長距離のみ」と「近~長距離まで」のどちらがゲームとして面白いかと言われればそれは言わずもがなだろう。だが言うは安し。事実、接近戦をゲームデザインに取り入れているタイトルはその扱うバランスに苦慮した後を見ることが出来る。特に分かりやすいのが「GEARS OF WAR」である。と、ここで語りだすと他のタイトルにも言及しなければ気がすまなくなるので今回は簡潔に済ますが、「GoW」はチェーンソー無双が出来ないようにチェーンソーの起動のタイミングや条件を非常に限定しているのである。これはプレイした人は大体分かると思う。そしてもう一つが我らが三上真司の「VANQUISH」である。これも「GoW」同様接近戦では一撃で敵が倒せるのだがその発動条件も非常に限定されている。

その他にも接近戦が可能なタイトルとして「バイオ4」「スプリンターセルコンヴィクション」「MASS EFFECT」等あるのだが、特に「一撃で倒せる」様な仕様のモノはかなり扱いが難しい。そこで「アンチャーテッド」なのだが、先にも言ったとおり本作では接近戦が「連打する仕様」であるため一撃かつ一瞬で行うことが出来ない。それどころか途中で止めてしまうと敵の体力がリセットされてしまうため、接近戦を行った場合は最後まで入力しなければならないのである。しかもその間は無防備というオマケ付きである。また「GoW」の様に接近戦独自の面白さ気持ちよさも無い。つまり接近戦を行うことのメリットが殆ど無いのである。だから本作においては「格闘アクションパート」はオマケに過ぎないのだが、となるとどうなるか。

本作を構成する3つの要素の内の2つが「銃を撃つことの楽しさ、気持ちよさがあまり感じられない」TPSパートと「オマケに過ぎない」格闘アクションパートとなってしまうのである。幸か不幸か、残りの「3Dアクションパート」については「トゥームレイダー」の様に建物や遺跡内を縦横無尽かつダイナミックに移動する事ができ、それに謎解きも加わる事によって一定以上の面白さは得られる。何より全体的に非常に丁寧に作られているので快適さに欠けるという事は先ず無いと言える。TPS部分に期待していた人には残念なモノではあるが少なくとも「良作」という点では遊んでみても損は無いだろう。特に先に2作目をやろうとしていた人には尚更1作目をオススメしたい。
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