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2009年映画総決算 [映画]

という事で今年も行う「今年映画館で観た映画ランキング」。
今年は月イチで観れなかったので11本と少なめなのが残念か。まあ、スクリーンで観るべき大作は大体観れたのでよしとしよう。「AVATER」は今年は混みそうなので来年という事でヨロシク。


01位 スタートレック
本作を観る前に映画版の第一作を観たが、それが私の「スタートレック」初体験である。第一作目は「スターウォーズ」とは真逆の映画であり、あちらが宇宙でドンパチやっているのに対し「スタートレック」ではアクションシーンは全くなく終始クルー同士の会話と宇宙遊泳で構成されている。では退屈な映画なのかというとそんなことは無く、構成や世界観はしっかりと構築されているしキャラクターの造形も出来ておりそれらを観ているだけでも楽しい。確かに旧作故の古くさいSF描写はあるのだが逆にそれが良い雰囲気を出しているとも言えるのである。

対して一作目から30年目の本作はというとこれがかなり「スターウォーズ」になっているのだが、やはり本質の部分は変わっておらず世界観やそのディテールも旧作から殆ど変わっていない。最近のSF感を上手く取り込めているように思う。

肝心の作品の出来だが、かなりイケてると言っても良いだろう。
私がエンタメ作品を評価する基準の最も重要な要素の一つとして「バランスの良さ」があるのだが、本作はこれが非常に良くできている。昨年の1位は「アイアンマン」だったがあれもバランスの良い作品だった。世界観の統一、演出、キャラ設定、CG、アクション、全体のテンポ、配分、ストーリー構成。特にアクションパートの量は映画全体に対して適切に配分しないと作品の印象はがらりと変わってしまうので注意が必要なのだが「アイアンマン」も本作もこれが良くできていた。

また、全体に対しての配分量もそうだが各アクションパート内でのテンポやカット割り、カメラワークにも気を付けないと、ただただアクションが展開されても退屈なだけなのでなかなかこれが難しい。今回のランキングの8位と10位は残念ながらそれが出来ていなかった。

旧作のファンも初心者も納得できる、旧新互いに良いところを織り交ぜた本作はハイブリッドと呼ぶに相応しい作品だろう。会心の出来と言っても良いのではないだろうか。あえて難を言うならば、途中の捻ったストーリー展開が少し分かりづらかったという事なのだが、まあそれもたいした減点にはならないだろう。

02位 アラビアのロレンス
リバイバル上映なので本来はこのランキングの対象外なのだが「映画館で観た作品」なので同じという事でヨロシク。

私はいわゆる「古典・名作」といわれる作品を殆ど観た事が無い。「2001年宇宙の旅」「七人の侍」「ゴッドファーザー」「ローマの休日」「スタンド・バイ・ミー」etc・・・。本作「アラビアのロレンス」も当然そこに含まれていたが、ある時近場の映画館で本作が上映されていると知り丁度「映画の日」も近かったのでこれは好機と思い観に行ったのである。

何故TSUTAYAで160円で借りられるのをわざわざ1000円支払ってまで観に行くのか。以前とある俳優のインタビューでこんなことが言われていた。「『アラビアのロレンス』のような作品を家にある小さいテレビで観るのは映画に対する冒涜である。」と。私はかつてから「不朽の名作」と言われるような作品は環境が整った状態で鑑賞したいと考えており、上記の言葉もあって家にある17インチのテレビでは観ないようにしていたのだが、そこへ来たのが「アラビアのロレンス」のリバイバル上映である。

あの「アラビアのロレンス」がスクリーンで観られる。作品の情報を全く知らない私だったがそれだけでも有頂天になり作品への期待度は日を増す毎に高くなっていった。そして当日、期待に胸を膨らませ向かった劇場には何と復刻したパンフレットも販売されており、私のテンションは120%となっていた。

しかし、私には一抹の不安があった。227分という上映時間である。およそ4時間。途中休憩が挟まれてはいるとはいえ正直かなり長くはあるのでダレてしまう心配があったのだ。それに私は「アラビアのロレンス」については名前以外は何も情報がなく「砂漠の話」位しか認識しておらず、いつの時代の話で何をする話なのかも知らなかったのである。そんな状態で果たして約4時間という作品を最後まで観られるのか。

結論から言えばそれは正に杞憂に終わった。
誤解を恐れずに言うならば「これが映画である」と断言したい。私が本作を観たのはこの一度だけだが、恐らくスクリーンでなければ「アラビアのロレンス」の映画としての本質は理解、体感する事が出来ないのだろう。これは物理的な意味でも言える事である。

はっきり言って本作は良く分からない。起承転結が無いし、抑揚が無いし、カタルシスも無い。既存の映画文法に当てはまらず、他人に説明しづらい、形容しがたい映画である。私にはこの作品をレビューする語彙が足りないし、知識も無い。そしてその力量も無い。

しかし、一つ言える事は「圧倒的な映画的体験」とは正にこの作品のためにある言葉であり、それがこの作品が「アラビアのロレンス」たる所以だという事である(多分)。

03位 THIS IS IT
マイケルは神。

04位 ウォッチメン
原作の存在を考慮すると本作の完成度は非難せざるを得ないモノであり、作品単体としてみると良くできているとも言える。また、「あのウォッチメン」を映画化したという事を考えるとそもそも映像化が困難なので及第点はあげたいとも思ってしまう。というように本作の評価はその軸によって大きく変わるものなのでその点では非常に評価しづらい作品である。

「300」のザック・スナイダーが監督した事によって「300」と同じく全体的に陰鬱で暗く、退廃的でありながら艶のある映像によって様式美とも言える様なある種の美しさが映画全体を包み込んでいる。アクションシーン時には刹那的に急激なスローの映像が挟み込まれる事によって独特のテンポが生まれ、原作にあったバイオレンスなシーンやアクションシーンがより派手になる事も162分という長尺である本作のテンポに寄与している。

しかし、映像化するにあたっての原作からの改変は物語のクオリティを大きく損なったと言わざるを得ないだろう。特に物語の核心部分の変更はそれが如実に表れており、それ以外の部分でも細かい点の改変によって原作で上手く伝えられていた情報が伝わらなかったり間違って伝わっていたりしていたのでこの点は非常に残念である。まあ、原作のあの世界観をあれだけ忠実に映像化しているという事に関しては賞賛に値するだろう。

05位 ファニーゲーム U.S.A
映画とは監督の思想を具現化したモノでありその物語は常に人為的に作られている事を前提としている。そういったメタ的な視点、意識を持っていればこれほど面白い映画は無いだろう。映画の中で監督は観る者に対して幾度と無く挑戦を投げかけ、混乱させ、不安を煽り、弄ぶ。しかし、それは映画というツールを使った「表現」であり、理解に務めると作品の印象は全く変わってくる。私の場合、最初から「そういう作品」であるという様な事は聞いていたので終始面白がって観ていたのだが。

そのため、そういった事を全く考えずに観た場合は恐らく大半の人が「良く分からない」といった形容しがたい印象を本作に対して抱くだろう。月並みではあるが正に「観る人を選ぶ」という言葉が相応しい作品ではないだろうか。

06位 サマーウォーズ
以前にレビューを長々と書いたので詳細はそちらを読んで欲しい。

まあ、あえて言うとすればオリジナルの企画でこれだけのエンターテインメント精神溢れる作品が作れれば細かい点へのツッコミは野暮だという事だろうか。

07位 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
「ヱヴァはエクスプロイテーション映画である」という記述を観た時に気付いたのだが、本作にストーリーとか情緒とか演出を期待するのがそもそも間違っていたのではないか。頭の中を空にして無心状態で流れる映像に身を任せただただ楽しむ事こそ「ヱヴァの正しい見方」なのであり、それが「エヴァンゲリオン」なのだろう。

以前のレビューにも書いたが本作のセル画、CGのアニメーション技術は日本でもトップクラスであり、特にCGのセル表現においては右に出る所は恐らくないだろう。前作で培われた技術はさらに洗練され、より多く、より派手になり、登場するヱヴァや使徒も多くなり正に「破」の名に相応しい映像が展開されている。

少々残念だったのは、ゼルエルの強さがあまり感じられずTVシリーズ程の圧倒的な脅威が感じられなかった事と「ザ・ビースト」が名前と共にデザインも正直微妙と言わざるを得ないものだった事だろうか。

08位 トランスフォーマー リベンジ 
前作の方が面白かった。長すぎ。冗長。抑揚がない。そのせいで途中ダレる。「フック」が強すぎて正直冒頭でもうお腹一杯。キャラクター多すぎ。CGすげぇ。何故か「ターミネーター」が出てくる。両親のシーンはよりカオスに。デバステーターは期待していた程の動きをしてくれなかった。ストーリーは相変わらず無い。2グループに分けたせいで緊張感、疾走感、ダイナミズムが途切れる。無駄な部分が多く、圧縮しても全く問題がない。バンブルビー空気。というか前作のキャラの大半が空気。ディセプティコンの方が印象が強い。メガトロン万歳。軍隊の演出が前作と全く同じで新鮮味がなくしかもくどい。冒頭以外の全部の戦闘シーンのテンポが悪い。コンボイに惚れた。

09位 2012
ローランド・エメリッヒも宮崎駿同様映画監督としての体力が落ちてきたのか、CG部分に力が入った分人間ドラマ部分の演出が全くなっていなかったように感じる。というより個々の部分はもとより映画全体として見ると各シーン毎の演出がバラバラで非常につぎはぎな印象が強く、正直完成度はかなり低いように思う。「デイ・アフター~」で出来ていた事が本作では出来ていないのである。

例えばジャンルとして見た場合、「ID4」は泣きあり笑いありアクションありのエンターテインメントとして演出されていたし「デイアフ」は親子愛を主軸に雪と氷の舞台に相応しい全編に緊張感漂う演出が為されていた。

しかし、本作はシリアスとエンタメのどちらにしたいのかが良く分からず、前半ではそういったシーンが全く無かったのに後半での大事なシーンでいきなり笑いをいれたり、崩壊する街から逃げる緊張感溢れるシーンなのに明らかに「ID4」的な演出感溢れる演出がされていたり、中盤の「親父ー!」なシーン(観た人は分かる)では背後で凄まじい事が起こっているのに全く緊張感が無く寧ろ笑いをさそっているような演出がされており(実際笑ってしまった)、観ていて反応に困ってしまった。

また、登場人物の行動にもあまり共感できず、寧ろその他の人物の方に共感してしまう場面がありこれも観ていて非常に反応に困ってしまった。というのも、ある特定の人物に対しては明らかに官僚的で悪そうなイメージを演出しているのだが、その人物のやっている事は寧ろ正しい事が多く、それに反対しているヒューマニストとしての立場である主人公的人物の倫理的な正しさなどが際立たなかったのである。これは正直致命的だと思った。そういう演出ならば仕方がないが。

本作のCG部分は確かに凄まじいもので物量とクオリティ、世界崩壊感でいえば間違いなく現時点での最高峰だろう。予想していたよりもかなりの崩壊っぷりだったのでその点に関しては十分過ぎるくらい満足していると言える。しかし作品全体として見るとかなりバランスが悪く映画としての完成度は低いと言わざるを得ない。

と書いてから2、3日経って気が付いたが、寧ろこれが「エメリッヒ作品」なのではないだろうか。というか今作こそが正にエメリッヒの真骨頂(完成度は低いが)と言えるのではないか。

10位 ターミネーター4
これも2012同様CGの出来は素晴らしいがそれ以外が全く出来ていないので、映画としての出来は残念の一言に尽きる。個人的には冒頭の戦闘シーンでのヘリからクリスチャン・ベールが降りるシーケンスのカメラワークが非常に格好悪かったのでそれだけでテンションが若干下がってしまった。それと戦闘シーンについては冒頭の部分が一番迫力があり、それからは徐々に平凡になっていくのでその点も非常にマイナスである。やはり「フック」はほどほどが一番という事か。もう一つ付け足すと冒頭の戦闘シーンの低音はかなりのモノで、今まで劇場で観てきた60作品以上の中でもトップクラスと言える程の響きだったのは良かった。これだけでも体感する価値はあっただろう。

問題なのは脚本。ツッコミどころ満載であり最早どこをどうつっこんで良いのかも忘れてしまったが、「今の時代にそれをやるか!?」と言える内容だったのは確かであり「それをターミネーターシリーズでやるの!?」とも言えるモノであったとは言いたい。別に「そんな面倒な事」をしなくでも良いし機械側が人間を収集する理由も良く分からないし、そもそも何故機械側のPC(?)にUSBで接続する事が出来るのか、というかインターフェース全般が人間前提なのはおかしいだろうに(これを言うのは野暮か?)。

あと「ハーヴェスター」はどう考えても「トランスフォーマー」だしモトターミネーターがあんなに簡単に捕まえられるのなら人間側がそれを利用して対抗していなければおかしいだろう。脚本にしろ演出にしろデザインにしろ往々にしてディテールが甘いと言わざるを得ない。本作は何やら新三部作の一作目らしいが甚だ不安な滑り出しである。

11位 地球が静止する日
何故この様などうしようもない作品を1月1日というめでたい日に観に行ったのかと言うと、毎年友人と元日に映画を観に行くのがここ数年の慣習となっており今年はこれしか正月気分な作品がなかったからであり、決して好んで観に行ったのではないという事は言っておきたい。まあ、半分ネタで観に行ったので後悔はしていないが。

それにしてもSF大作の体をしておきながら映像だけの中身がまるでない薄っぺらであり、しかもその肝心の見せ場である映像が陳腐極まりないというのは全く以てどうしようもない。観た人は分かるだろうが、最初の巨人が登場するシーンはこれだけCG技術が発達している中でも群を抜く程の底抜けレベルのCGであり「もしかしてこれは笑う場面なのか?」と思ってしまう程クオリティが低く、開始し早々「もはやこれまで・・・」と言わざるを得なかった。

ストーリーも酷いものでネタバレは控えるが(ハッキリ言ってネタバレしても全く問題はない)主人公の宇宙人が何をしたいのか全く分からず、勝手に登場して勝手に消えていってしまうので映画の中の登場人物も観ている側も狐につつまれるが如くポカーンとしてしまうし、主演の宇宙人ことキアヌは相変わらずの大根で(私は気にならない)終始スーツで行動しているので「コンスタンティン」や「マトリックス」と思いっきり被ってしまっている。

さらに間の悪い事に公開当時はオバマが「change!change!」と叫んでいた時で作品内でもキアヌが同じように「change!change!」と何度も繰り返していたので、恐らく感動的なシーンだったのだろうが私は「これはオバマによる選挙前のプロパガンダ映画なのだろう。うん、そうに違いない。」などと考えてしまい全く作品に入り込む事が出来なかった。

また、CMでも流れていたナノマシン集合体による世界崩壊シーンだが、アレの前にそのナノマシンがスクリーンにアップで映る場面があり、そのデザインが「キッチンの黒い悪魔」そのものだったのでクライマックスの一番盛り上がるシーンである筈なのに反比例して私の気分は盛り下がってしまった。正直何故あのようなデザインにしたのか理解に苦しむ。

とまあ、昨年と同じく最下位である作品にはまだまだ言いたい事が色々とあるのだが面倒なのでこの辺で止めておく。本作には微妙にメッセージ性があったがそれのせいで作品が若干破壊されているし、そもそもそれすら演出できていないし、何故今更「地球の静止する日」なんぞをリメイクするのか。あの巨人のデザインの時点で滑稽になるのは目に見えていただろうに。

観てない人には「そういう意味ではオススメです!」(宇多丸風)
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