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『アイカツ!』第133話における五十嵐達也のコンテ・演出について。 [アニメ]

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作画や演出については門外漢なので基本的に記事は控えているのだが、書かずにはいられない位の衝撃だったので。


アーケード筐体であるアイカツのメインのターゲットは女子小学生、中学生。それがそのまま流れてくるTVアニメである本作も当然それらを想定した作りになる。小学生、場合によっては未就学児が観る事も当然考えられるので、いつ、どこで、誰が、何を考えて、何のために、何をするのか。本作に限らず朝や夕方の時間帯のTVアニメというのは多かれ少なかれ「子供向け」に制作されるものである。そのため深夜帯のTVアニメ作品に慣れている人間からするとこれらの作品の演出や脚本には物足りなさを感じる事も少なくは無い。特に善人だけで物語を紡ごうとしている本作の様な場合。

アイカツに限らず、子供向けのTVアニメ作品の演出や脚本においてそれらのコンテクストに依存しない、または馴染みの無い外部の人間が登用されるという事がたまにある。それらがどういった意図で行われているのかは知る由も無いが、多くの場合その登用は非常に効果的な作用を及ぼしている。

アイカツ133話において絵コンテと演出を担当した五十嵐達也(現:五十嵐紫樟)。私はこの人が担当した作品を殆ど観た事が無いのでどういった傾向の演出を行うのかは全く分からないのだが、今作を見る限りでは少なくともアニメーションにおける絵の演出というものを理解しているという事だけは良く分かった。

前述した様に子供向けのTVアニメにおいては「いつ、どこで、誰が、何を考えて、何のために、何をするのか」といった視聴者への理解のためのハードルがかなり低く設定されているので人によっては説明的に見えてしまう事が多分にある。本作も然り。

子供向けアニメのコンテクストに依存しない五十嵐達也にとって、アイカツの133話をいきなり演出するという行為は未知の領域に足を踏み入れる様なものだったのだろうが結果的にこれが非常に良い効果をもたらしている。

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アバンの会話。
「おはよう。」「おはよう・・・。」「あっ・・・、そうだ!」「これ、のど飴。効くんだって。」「ありがとう♪」「よかった、渡せて。」
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このシーン、この会話だけを見ても状況としては早朝の4時であるという情報以外は何も分からない。特にあかりがのど飴を渡した理由については「効くから」という文言意外は不明だ。しかし、この非常に断片的な会話によってそれ自体が親しいルームメイト同士という言葉のいらない間柄を示しており、会話のテンポも含めてアイカツにおいては特異な空気感、ありきたりな表現ではあるがリアリティのあるシーンになっている。

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Aパート冒頭
「(まどかちゃんに私が出来る事って何があるかなぁ?)」

頭で考えている事を台詞で言わせている作品は非常に多い。本作もその一つである。このカットも普段であれば台詞を口に出していたのだろうが、こうしてモノローグとして演出するだけで雰囲気はガラリと変わる。そしてこのモノローグ演出がその後の演出にも大きく影響を及ぼしてもいる。

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「だって大空先輩、いっつも分かりやすいですもん♪」「そう?」

あかりの手元からまどかにピントを合わせているこのカット。手前の被写体をぼかす手法はPOV作品によく見られるが、これによってこのカットは妙に臨場感があり、あかりと視聴者の視点がほぼ同化している。そのため「そう?」の反応で手を動かすあかりの手の動きがまるで自分の手の様に感じられる。そしてこのカットではあかりの表情が見えないので、まどかと口頭で会話しているにも関わらずモノローグが続いているかの様な錯覚も生み出している。

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「はい、すっごく分かりやすいです!」「えへへ・・・(苦笑)。」

そのため、このカットは口が動いているのに台詞を喋っている様に見えずここも「えへへ」だけがモノローグで反応しているようにも見える。

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「そう?」

ここも同じく。特にここは口が全く動いていないので台詞なのかモノローグなのか区別が付きづらい。

ではこの台詞とモノローグの区別が付きづらいこれらの演出、駄目なのかというと全くそんな事は無く、寧ろ先に書いた様にあかり視点からのPOV的、ドキュメンタリック的な効果が出ているためアニメ作品としてはあまり見かけないような会話の生っぽさが演出されているのである。

アイカツ第133話は作画が安定している事も手伝ってか、兎に角「人の反応」が丁寧に描かれている。顔の表情は勿論ちょっとした仕草なども良く見るとキチンと描かれているのが分かる。この辺りは偏にコンテ、演出によるものとは言えないので何とも言えないのだが、五十嵐達也が担当しているこの回ではそれらが顕著に見られるという事は多分そういう事なのだろう。

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Aパート終盤のまどかの表情の変遷。
まどかの内面を全くしらないので一本調子で一方的に会話しているあかりに対して、一つの言葉を話す度に表情が二転三転するここのまどかの表情はアイカツ史上でも稀に見るような演出になっている。上の様に顔のアップが入る辺り、間違いなくコンテ段階で細かく指示されていたのだろう。カットの切り返しやズーム、被写界深度など明らかに演出として意図されていたものである事が分かる。


上記に挙げたような演出は深夜帯のアニメ作品では当たり前の様に行われている。逆に言えばアイカツを含めた女児向けアニメ作品ではこういった様な凝った演出はあまり行われる事が無い。そのため、たまに外部の人間が参入してこういった事が行われると、より新鮮かつ効果的に見えてしまうのである。個人的にはこういった凝った演出は大歓迎なのでもっと見たいのだが、特にアイカツは日常生活が舞台なので作画や脚本だけではどうしても限界がある。とは言っても外部からの登用は頻繁には出来ないとは思うのでなかなか難しい話ではあるのだろうが。




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