SSブログ

『ラブライブ!』2期 第6話挿入歌「Dancing stars on me!」の演出。 [アニメCG]

01.jpg
つい先日、録画していたラブライブ2期全13話分を漸く観終わった。録画しておきながら今まで放置していたのは1期についての感想がまとまっていないという事もあったのだが、正直1期を観終わった時点でラブライブというコンテンツが自分にとってそこまで興味の惹かれるコンテンツにはなり得なかったというのが大きかった。興味が無かったワケではない。でなければ録画などしない。とは言うものの、いずれ観ることが確定してはいたのだが何となく先延ばしにしてしまい、気付いたら1話も観ないまま放送が終了してしまったという仕様も無い有様である。

で、今回何故いきなり第6話のライブパートについて書くことになったのかと言うと、それは偏に「Dancing stars on me!」が素晴らしかったからである。

ラブライブ2期では3DCGによるライブパートが6つ存在する。
 
OPの「それは僕たちの奇跡」、
第3話「ユメノトビラ」の「ユメノトビラ」、
第6話「ハッピーハロウィーン」の「Dancing stars on me!」、
第9話「心のメロディ」の「Snow halation」、
第12話「ラストライブ」の「KiRa-KiRa Sensation!」、
第13話「叶え!みんなの夢――」の「Happy maker!」。

正直2期は良かった。1期より面白かったし、観て良かったと思う。序盤でラブライブ出場という目標の設定と「A-RISE」との対決の構造が明確になった事により話に推進力が生まれ、全体を通して物語に芯が通りその結果としてラブライブという話への興味の持続が生まれたからである。1期の最後で続編が急遽決まった事によりシリーズ全体を通して歪みが発生してしまい、話運びにバランスの悪さを感じつつも3DCGによるライブパートは1期の時よりも物語上の必然性を感じられるものになっていたのが良かった。実はコレ結構大事な話で、ラブライブにおける3DCGのライブパートはなまじPV的であるためライブパート以外の話運びをしっかり行わないと映像としてそこだけ浮いてしまう可能性が非常に高いからである。2期ではそもそもラブライブの演目という名目があり、それに伴う世間へのアピールとしてのライブという理由付けがなされているので、2期におけるライブパートは寧ろ観る側として待ってましたと言わんばかりのものになっている。特に9話の「Snow halation」はライブパートと日常パートが非常に上手くまとまっており、観る側の感情の流れがライブパートで頂点に来るというよく出来た構成になっている。

恐らく2期で一番支持されているのは9話の「Snow halation」なのだろう。これは所謂コアなファン「ラブライバー」ではない私のような人間でも分かる。ピアノソロによるイントロ、Aメロ「♪特別な季節の色が♪」からのベースの刻み、間奏でのギターソロなど曲の構成の見事さ。曲をイメージした統一感のある衣装とサビでの均一な振り付けによって生まれる整然とした美しさ。そしてライティングも兼ねた巨大な舞台装置。正直第9話を観終った時点で個人的にはラブライブ2期は最終回を迎えていた。それぐらい「Snow halation」は良かった。

が、しかし。
実のところ「Snow halation」はそこまで心に響くモノでは無かった。確かに「Snow halation」は良かった。第9話という話全体からすれば、という但し書きが付く限りでは。要は「Snow halation」は第9話とセットになって初めて意味を持つものであり、単体のライブパートとしてはそこまで魅力的でもない。何というか、全てが揃いすぎて映像として完成されているが故に逆に面白みが無くなっているように感じてしまうのである。「Snow halation」自体に何ら罪は無い。これは単に私の趣味の問題なので悪しからず。

そこで今回の表題にある「Dancing stars on me!」である。

『ラブライブ!2nd Season』
第6話「ハッピーハロウィーン」
挿入歌「Dancing stars on me!」
ライブパートCG制作:フレームワークス・エンターテインメント
ライブパート演出:京極尚彦、臼井文明


実はこの「Dancing stars on me!」、第6話を観ている時点では全く印象に残らなかった。全13話を観終わり一息ついた後、復習としてライブパートを順に見ていったのだが、その復習としての二回目を見た時に何か引っかかりを感じ、三回目を見た時2期で一番好きなのはコレだと確信したのである。どうして印象に残らなかったのかといえば、これが本戦では無い事、そして第6話が若干のネタ回でもあったからなのだろう。

「Dancing stars on me!」のコンセプトは本戦の曲目とは異なる。本戦の曲及びパフォーマンスが基本的に「ラブライブで優勝する事」を前提とした自分達を主体としたモノであるのに対して、「Dancing stars on me!」は世間へのアピールという前提がありつつもハロウィーンのイベントへ招かれたμ'sが「イベントを盛り上げる演目」として披露するものになっている。そのため本戦とは違い主体は自分達ではなく観客となる。A-RISEを超えるインパクトを求め、インパクトを与える主体として振る舞い迷走していたμ'sの面々がいつもの自分達でも良いという事に気が付く、という第6話の流れは個々の個性が強調される「Dancing stars on me!」のライブパートの演出の流れに沿ったものになっている。

「Dancing stars on me!」の振り付けを見てみると全体的に歌詞をイメージしたものになっている。

maneiteru
不思議が偶然を招いてる?(招き猫)

CO (2).jpg
会えたのは(二人で手を合わせる)

CO (3).jpg
素敵な運命(小指を交差)
CO (4).jpg
流れる星は(指を指し手を振る)
CO (5).jpg
願いましょう(祈る仕草)

全て挙げるとキリがないので後は各自確認して欲しいが他にも色々ある。
こういった歌詞に沿った振り付けというのは見る人によっては「だから何だ」と思われてしまうので説明しておきたい。振り付けを歌詞に沿ったものにする事の利点とは何か。それは歌を体感できる事にある。歌を、歌詞を、言葉を身体で表現し視覚化したそれらを、観る側は歌を聴覚情報として、振り付けを視覚情報として既知に還元し理解しようとする。言語化された振り付けは聴覚情報である歌と一体化する事によりその理解は促進し、脳内の身体感覚を無意識に呼び起こさせる。歌詞を表現した振り付けには聴覚情報に過ぎない歌(音)を身体感覚へと落とし込む効果がある。そしてこれによって振り付けが「意味を持つ」事が出来るのである。

上のGIFアニメにもある「♪不思議が偶然を招いてる?♪」などは特に、カウントに合わせて手足の振り付けがされるリズミカルなものなっており、またネコの衣装の似合うにことあの堅物だった絵里が行っているという点でも印象に残る良い演出になっている。他にも下にある「♪Dancing stars on me!♪」の場面では穂乃果、凛、希を中心に歌詞が意味するところを示すかのようにその周りを6人が囲んでおり「♪いつか だから♪」でリズムに合わせて時計回りに3歩ずつ回るという動的な印象であるこの曲の中で正に星空をイメージする「静」を感じさせる神秘的で非常に印象的な振り付けになっている。
CO (7).jpg

そして何といってもサビでの手拍子だろう。
11.jpg
歌詞に沿った振り付けは歌の理解への足がかりになるとしたが、歌における手拍子はそこに留まるものではない。最早理解そのものと言っても良い。手拍子が優れている点とは何か。それは年齢、性別、人種、何より能力を必要としない誰もがその場で参加できる楽器という事である。そしてこれだけの数ある楽器の中で手拍子は最も安価であり最も体感的に優れた楽器でもある。

「♪Dancing stars on me!♪」のサビでは歌詞の間の合いの手で手拍子の音が入り、振り付けもメンバー全員が手拍子をするようになっている。歌の中で手拍子が鳴った時、人間というのは本能的に反応してしまうもので、手拍子が聞こえたその瞬間直感的に次の手拍子のタイミングを読み取ることが出来る。「♪もっともっと踊らせて♪」で最初の手拍子が聞こえた時、次の「♪みんなみんなとまらない♪」の同じタイミングで鳴る事を直感的に理解しそして頭の中で鳴らす。手拍子とは誰もがその場で即座に参加できる優れた表現方法なのである。そしてそれは「イベントを盛り上げる演目」という「Dancing stars on me!」のライブパートのが意図するところのそのものでもある。先に「Dancing stars on me!」について3回目の視聴で火がついたとしたが、多分その一番のきっかけはこのサビでの手拍子だったのかもしれない。手拍子の音を意識した瞬間、私の頭の中では既にライブに参加していたのだろう。

因みにサビの「♪みんなみんなとまらない♪」の部分。気付いた人もいるだろうがここだけフレームレート(fps-frames per second)が高くなっている。ラブライブにおけるライブパートでは基本的に手書き部分は2コマ作画で描き、そこに併用される3DCGモデルによるダンスは2コマ作画の手書き部分に合わせるために同じく2コマで演出するようになっている。2コマ作画というのは秒間24コマのアニメーション内において同じコマが二回ずつ描かれ12コマの動画として描かれる手法の事である。手書きとは違い3DCGはPC上で調整できるのでわざわざコマを制限する必要は無い。プリパラ、プリキュア、アイカツ等現在放映されているアニメの3DCGが全て24コマで動いているのにラブライブだけが12コマで動いているのは、ラブライブだけが唯一「同一カット内における手書きと3DCGの併用」を行っているからである。併用する以上は手書きと3DCGの違和を低減させなければならず、そのためのコマ数制限である。
Image and video hosting by TinyPic
ではこのGIF部分だけは何故24コマで動いているのか。

それはカメラのパンの距離が長いからである。
リミテッドアニメを製作体制の基本とする日本のアニメは2コマ作画、3コマ作画が当たり前となっている。そして映画、アニメなどの24コマの動画というのは基本的にパン、要はカメラの横移動に非常に弱い。特にコマ数が制限された2コマ、3コマ作画の場合でパンを行うと場合によっては視聴に支障をきたすほどのコマ落ちが感じられる場合がある。そこにおいて上のGIF部分の本質とは何か。言わずもがなダンスである。最も大事なサビの部分である。恐らくこの部分も最初は12コマで演出されたのだろう。しかし、出来上がったコマ落ちした映像を見て2コマ作画の統一と大事なサビのダンスを見せる事を天秤にかけた結果、24コマでダンスをしっかり見せる演出になったのではないかなどと考えてみる。

しかしながらこうしてラブライブの24コマでの3DCGダンスを見てしまうと俄然「全編3DCGによる24コマのライブ映像」というものが見たくなってしまうのだがまあ叶わぬ夢だろう。3DCG部分のワークフローから推察するにおそらく雛形としての全編3DCGでのライブ映像というのは存在する筈である。というのも該当部分だけモーキャプを行うということは考えられないからである。ライブパートの絵コンテがどの時点で切られるのかは分からないが少なくともカメラワークを決める時点でモーションデータを基にした9人のライブ映像は存在しているのだろう。勿論調整前のプリビズ(Pre Visualization)のような映像だとは思うが。

まあ、こんなことを考えるのは不毛ではあるが、何分普段のライブパートの映像のコマ数が制限されているため、24コマの映像を見てしまうとそのギャップと滑らかさから生まれる気持ちよさが他のアニメの比ではないのである。おそらく今後公開される劇場版でも限定的に24コマの映像は採用されるのだろうが、一度でいいので全編3DCGのライブ映像というものに挑戦してみてもいいのではないのだろうか(いやもしかしたら劇場版だからこそ、その可能性があるのかも?)。

閑話休題。
「同一カット内における手書きと3DCGの併用」だが、2期になってから明らかに意識的に行われている新しい手法が一つある。

それは「同一カット内における同一キャラクターの手書きと3DCGモデルの切り替え」である。

ズームアップまたはズームイン時の僅かなフレームの中で手書きと3DCGを入れ替える。ラブライブは1期の時から「膝下が映る時は3DCG、バストアップ時は手書き」を原則としているためその切り替えが把握しやすく、手書きと3DCGそれぞれの映像の温度差が露骨に出てしまうことがある。その点上記の手法は同一カット内でのスムーズな置き換えができるため、手書きと3DCGでの温度差が生まれにくいようになっている。この手法は「Dancing stars on me!」以外のライブパートにも見られるので探してみると良いだろう。

さて、先にも述べたが「Snow halation」自体は良かった。だが「Dancing stars on me!」その100倍位良かったのである。これはある意味仕方が無いのだが「Snow halation」は本戦の演目である以上そこには勝敗が付きまとい、それ故に遊び心が無くなってしまうパフォーマンスにならざるを得ないのである。対して、イベントを盛り上げるための演目である「Dancing stars on me!」は観客を楽しませるためのライブであり前述した「手拍子」などは正にその最たるものと言える。振り付けにしてもイントロでの個々のカオティックな振り付けやハイタッチなどのメンバー同士での掛け合い、三人一組でのそれぞれのパフォーマンス等「Dancing stars on me!」は遊び心は勿論のこと、何よりメンバー全員が「楽しそうに踊っている」ように見える。まあ、これは私個人の趣味の問題でもあるのだが、プリキュアEDダンスの時でもそうだったがどうやら私はメンバー同士の掛け合いという要素を評価軸の一つとしているらしい。そう考えるとラブライブ2期の中で「Dancing stars on me!」に一番の関心を払ったのも頷ける。第6話が収録されているBD4巻目は確実に購入するだろう。

実際のμ'sのライブではアニメのライブパートと同じ振り付けがそのまま行われているらしいが、正直「Dancing stars on me!」が観られるのであればライブに行くのもやぶさかではない。というか「Dancing stars on me!」のためだけに寧ろ行きたい。行って手拍子がしたい。実際のライブでは確実に手拍子の観客への煽りがある筈なので、ライブ映えするこの曲ならば盛り上がること間違い無しである。残念なのはライブの曲目が現時点では分からないので実際に行くとすると賭けになってしまうのだが何とも悩ましいところである。まあ、それ以前に相当な倍率らしいので先ず行けないのだろうが。

参考資料
マンガ☆ライフ 『ラブライブ!』二期六話に見る「μ's」というユニットの個性について


アニメCG関連過去記事

ラブライブ!
「ラブライブ!」ライブシーンの3DCGの演出について
「ラブライブ!」2期 第6話挿入歌「Dancing stars on me!」の演出。

プリパラ
「プリパラ」における3DCGのライブステージ演出。part.1
「プリパラ」における3DCGのライブステージ演出。part.2
「プリパラ」第22話「HAPPYぱLUCKY」におけるライブステージ演出。

アイドルタイムプリパラ
『アイドルタイムプリパラ』にみる3DCGモデルの変化・変遷

アイカツ!
「アイカツ!」第71話 霧矢あおい「prism spiral」にみる振り付け。
「アイカツ!」アニメ3期における3DCGライブ演出の展望。
「アイカツ!」第103話 氷上スミレ「タルト・タタン」での3DCGライブ演出。
「アイカツ!」アニメ3期の3DCGモデルに見られる変化
『アイカツ!』第118話 藤原みやび「薄紅デイトリッパー」の3DCGライブ演出
『アイカツ!』第123話 大空あかり「Blooming♡Blooming」の3DCGライブ演出
『アイカツ!』第124話 北大路さくら「Blooming♡Blooming」のセルルック表現
『アイカツ!』第160話の3DCGライブステージにおける変化について
『アイカツスターズ!』の3DCGダンスアニメーションについて。
『アイカツフレンズ!』 第7話 明日香ミライ「アイデンティティ」3DCGライブ演出

プリキュア
フレッシュプリキュア! のEDダンスについて
ハートキャッチプリキュア!のEDダンスについて
スイートプリキュア♪のEDダンスについて
スマイルプリキュア! のEDダンスについて
ドキドキ!プリキュアのEDダンスについて
ハピネスチャージプリキュア!のEDダンスについて
補足
Go!プリンセスプリキュアのEDダンスについて
『Go!プリンセスプリキュア』3DCGモデルによるセルルック表現

アイドルマスター
『アイドルマスター プラチナスターズ』におけるモデリングの変化・変遷について
『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』の3DCGモデルについて

アイドルアニメのCGライブパートランキング 2014
『file(N)-project PQ』ダンスアニメーションPVの演出について





nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:アニメ

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。