SSブログ

2013年映画総決算 [映画]

2008年/2009年/2010年/2011年/2012年

imax.jpg
思い返せば休日の度に映画館へ足を運んでいた2013年。数えてみたら劇場鑑賞回数は過去最多の69回。新作映画は47本で重複は12回。残りはリバイバル作品を5本鑑賞してそれら重複が5回。名古屋市内に住んでいると立地条件が良くない場合帰るついでに映画鑑賞というのはまず難しい。そのため1本観るだけで移動時間含め4時間はとんでしまうのでどうしても一度に2作品がデフォルトになってしまう。まあ、最近ではすっかり慣れてしまって一日3作品もざらになっているのだが。

しかしながらこれは毎年そうなのだが上半期の作品はどうしても見逃してしまうことが多い。そのため所謂「見ておくべき作品」が観れなかったことが多々あり、それと今年も単館系の作品は殆ど観れず面白みの無いシネコン公開作品ばかりになってしまった。ホントにもう「47RONIN」とか観てる場合じゃないというのに。とはいったものの今年は全体的に多かれ少なかれ満足できた作品が殆どで、44作品観ていた2010年と比べるとその差は歴然で本当に酷かった作品は僅かである。

今年はVFX的に目覚しい作品が多く評価の基準も自然とそうなったので、話の面白さ、映画としての完成度の高さは勿論ではあるが基本となる軸はかなりVFXよりとなってしまい、見る人によっては首を捻るような作品が上位に来ている事になっているだろう。しかし個人的にはそれらも含めて今年は本当に良い作品が多かった。それと今までに比べ邦画の比率が増えていた事に気付く。


1位 ゼロ・グラビティ IMAX DIGITAL 3D[1回] 通常[1回]
大気圏突入シーンで涙が止まらなかった。

過去記事「ゼロ・グラビティ 」(2013年)

2位 オブリビオン
素晴らしきかなシンメトリー構図。SFはディテールであるとはよく言ったものだが本作の美術にはただただ見惚れるだけだった。「トロン・レガシー」の美術も素晴らしかったが、本作では主人公ジャックの住むスカイタワーを筆頭にパトロール機であるバブルシップや無人偵察機ドローンなど全体に白で統一されており、これらの造形は画面の中心に捉えた際その曲線によってシンメトリーの構図が際立つ素晴らしいデザインとなっている。特にドローン関してはその適度な大きさによって丸っこい機体に似合わない威圧感がありこれが中盤のとあるシーンで素晴らしい絵を魅せてくれる。SF美術設定では文句なしに今年一番の作品である。それらが生きるクラウディオ・ミランダによる撮影も見事なものだった。

3位 風立ちぬ [2回]
庵野秀明の声については正直五分と経たずに慣れた。主人公である二郎が感情の起伏に乏しいという点が功を奏したというのもあるのだろうが、個人的には二郎の第一声を聞いた瞬間にその声色と抑揚から先取りしてキャラクターの性格を先取りできたため声に慣れるというよりキャラクターを知った、自分なりに把握したという方が適切なのだろう。声によるSEに関しては個人的には楽しかったのだが反面勿体無くもあり迫力のあるゼロ戦の音が聞けなかったという点に関しては正直残念でならない。

初めて予告編を観た時、大震災のシーンで驚いたものだがまさか全編あのクオリティで描かれるとは夢にも思わなかった。狂った作画が満載の正に狂気そのものである。カプローニの試作機の処女飛行の際「まさかこれを動かすつもりではないだろうな。」と思っていたらそのまさかである。三段重ねの翼を持つ飛行機を角度を変えながら作画をするなど、考えただけで気が遠くなりそうである。本当にどうかしている。しかしながら念願の(反面最も避けていた)ゼロ戦、もっと言えば戦闘機そのものをテーマにしただけあってその拘りは流石の一言である。特にドイツ軍の爆撃機の金属の光沢感、重量感は圧巻である。

そして何より驚いたのが近年のジブリ作品に無かった生と死、男と女の一つの人生を正面から描ききった事である。各所で言われているように本作は子供向けではない。はっきりと大人向けの作品として作っており、内容も一般向けではない。本作を観た後で感想を聞かれた際、どう説明したものか、果たしてオススメして良いものなのかと悩んでしまい、私は「面白いが人を選ぶ作品」としか言えなかった。だが、人に勧めるのを躊躇してしまう程の強烈な作品であるというのは今までの宮崎作品にはなかったものであり、そういった思いを自分の中に感じてしまう程の作品であるのは間違いない。

本作は宮崎作品の中では間違いなく傑作だろう。「千と千尋」以来宮崎作品は全て劇場で観ているがもう一度観たいと心から思ったのは本作が初である。

4位 かぐや姫の物語
上映時間が二時間以上と知って思わず色んな意味で大丈夫かと思ったが、結果としてそのような心配は全くの杞憂に終わった。風立ちぬも観終わった今、この二作品が同じ年に公開されているという事実には驚きを禁じえない。どちらも作画的には狂いに狂った狂気の作品なのだがその物量たるや凄まじいものである。本作に関しては絵柄が特殊とあって全編兎に角観ているだけで楽しい。極限まで削ぎ落とされシンプルな手書き風の線で描かれたそれらはアニメーションの意味するところの正に動かすことそれ自体の快楽の本質を呼び起こさせる。

予告編に使われた疾走シーンは勿論のこと、雀がとまる木の枝の僅かな動き、琴を弾く際の弦の僅かな揺れなど何気ないシーンでも細部にわたって動きへの拘りが追求されており、とても一度では把握しきれない程。間違いなく二回目も観に行くのだろう。実は鑑賞後数日しか間が無い状態でコレを書いている現在、正直まだ具体的な感想として整理がてきていないのだが、本作は間違いなくジブリ史上の中でもトップクラスの作品であると言える。

5位 イノセント・ガーデン
「ジェーン・エア」の時もそうだったがやはりミア・ワシコウスカは現代以外の舞台の方が似合う。本作の時代は恐らく現代なのだろうが、住んでいる屋敷も含め現代的な明るい色を使ったものが少なく全体的にシックな隔世の感を漂わせる浮世離れした雰囲気があり、「stoker」という原題からも恐らくそれらは意図的に配置されたものなのだろうが主演の三人の佇まいは正にぴったりである。俳優、美術、音楽、音響、演出、照明、レイアウト全てがストライクの最高の映画だった。脚本の穴については目を瞑ろう。

6位 ジャンゴ 繋がれざる者
「タランティーノ」の「西部劇」という時点でもはや何も言う事はない。「トゥルー・グリット」もそうだったが今や希少となった西部劇映画は作られただけでも賞賛モノである。そして本作は当然の如く面白かった。

7位 ゼロ・ダーク・サーティ
物語性が希薄だった「ハート・ロッカー」に対して本作ではそれらが強化され演出は勿論の事、クライマックスが映画的に盛り上がりを見せる事によって娯楽作品としての側面も持ち合わせ、戦時下を描きながら社会性を持つだけに留まらない「面白い映画」となったような印象を受ける。キャスリン・ビグローは一体どこまで行くのか。

8位 ラストスタンド
本国での評価がそれなりだったのでそれなりに期待して観に行ったのだが全くそんなことは無かった。間違いなく歴代のシュワ作品の中で五本指に入る映画である。掛け値なしの傑作というわけではない。だが、西部劇をベースにしたシンプルかつストレートな脚本。ジョニー・ノックスビルを始めとする頼りはないが味のある脇役。細部まで気の利いた演出など、従来のシュワ作品には無かった芸の細かさが各所に見られそれらが映画の面白さに寄与している素晴らしい構成となっている。

何よりシュワ映画における「見たいシーン」がしっかり演出されているので、チームものでありながら同時に「シュワ映画」である事も表現できており、シュワ一人が目立つわけではないのに映画としては間違いなくシュワ印の作品になっているのは見事という他ない。そして最後の橋の上での一騎打ちのシーンだろう。峡谷に架かる橋の上で仁王立ちするシュワの神がかり的なカットは長年シュワ映画、もっと言えば80年代筋肉バカアクション映画の系譜の作品を見続けてきた人にとって正に待ち焦がれてきたシーンだった筈である。

9位 そして父になる
今年観た中で最も「話が面白かった」映画。文句なし。

10位 もらとりあむタマ子
夏頃に公開された「クロユリ団地」が私にとっての初前田敦子だったのだが、二作目となる本作を観て前田敦子のファンになる人の気持ちがちょっと分かってしまった気がする。少なくとも次回作の「Seventh code」は観に行くつもりである。

11位 悪の法則
「世界はお前の都合に合わせて動いているわけではない」映画。
「悪の法則」が「The Counselor」だと知った時の衝撃は未だに覚えている。あのままチェックせずに本作の公開を待っていたら完全にスルーしていたであろう。トニー・スコット亡き後どうなるか心配だったが何事もなく無事公開された本作。「ノーカントリー」同様コーマック・マッカーシーの原作は未読なのだが、「ノーカントリー」同様本作でも理不尽、不条理を根幹に前編にわたって不穏な空気が流れ続ける最高の作品になっている。

特に中盤での「バイク」のシーンにおける店頭でバイクの尺を図ってからの一連の準備をする場面。最初は何をしているのか分からないのだが明らかに「何か」をしようとしている雰囲気がありありと伝わっており、道端で車を止め、導線を取り出し、電柱に向かって伸ばしていく辺りで「もしや」という予感、疑念を徐々に持たせつつギターの弦の様に鳴らす所で確信すると同時にこれから起こることを予感してしまい観客をイヤーな気分にさせるあの一連のシーン。最高である。

12位 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語 [7回]
個別の記事で書くと言っておきながら結局書かなかった「映画けいおん!」の事を踏まえるとこのパターンは完全にフラグなのだろうが敢えてその道を選ぼう。というワケで本作については改めて個別の記事で書くのでしばしお待ちを。というのも本作とは別にもう一つまどマギの話がしたいので書かないわけにはいかない。宣言しよう。絶対書くと。そして、マミさん最高。

過去記事まどマギTVシリーズ評

13位 マン・オブ・スティール IMAX DIGITAL[1回] 通常 [2回]
ニューヨークでの対ゾッド将軍戦におけるデジタルダブルによる戦闘シーンはついにここまで来たかと感動してしまった。スーパーマン映画としてどうなのかという意見が散見されるが対ファオラ戦、ゾッド戦を観たらどうでも良くなってしまった。スーパーマンではなく宇宙人として描かれたクラーク・ケントに関しては賛否両論ありそうだが個人的にはアリだとは思う。まあ、世代的にリチャード・ドナー版にそれほど思い入れがないという事もあるのだろうが。

14位 夢と狂気の王国
観た人は分かる終盤に流れる1分程度の「ありえない映像」。いやはや、よもやスクリーンで観る日が来るとは。

15位 スタートレック イントゥ・ダークネス IMAX DIGITAL 3D [2回]
IMAX万歳。2k上映であってもIMAXはIMAX。魚雷分解シーンの無駄な高画質っぷりに笑いそうになった。兎にも角にもベネディクト・カンバーバッチだろう。私は本作が初カンバーバッチだったのだが冒頭の登場シーンで完全に持って行かれてしまった。たったのワンカットのバストアップでキャラクターの存在を納得させてしまうあの圧倒的な存在感は素晴らしいの一言。クリス・パインもザッカリー・クイントも彼の前では完全に形無しである。独壇場とはまさにこの事。

16位 エリジウム 4K上映[2回]
4k画質のあまりの凄まじさに思わず二回観てしまった。CG部分は間違いなく4k以上の解像度でレンダリングされているのだろうが、ニール・プロムガンプのCGに対するアプローチと4k解像度が合わさるとこれほどのものが表現可能なのか、と。ニール・プロムガンプのCGのライティングに対する写実的なアプローチは私が最も好む表現方法でありCG表現に関しては一番信頼できる監督である。陰影のはっきりしたコントラストの高いライティングはともすればミニチュア的にも見えかねないが、そこには確かな実在感が有り一見すると実写なのかCGなのかは判別が難しいほど。

NHKの技術デモであるスーパーハイビジョンの映像はそれ自体で3Dが不要な程立体感があるらしいが4k上映である本作を観てなるほど納得である。衛星軌道上を回るエリジウムは流石にCGであることが丸分かりなのだが、その精細さ故にCGである事が明らかであるにも関わらず立体的に見える為実在感が感じられる。内容に関しては正直第九地区の焼き直し感が否めないため既視感が強く、脚本もあまりに捻りがなさすぎるので話の面白さはあまりない。長文になるので詳述は避けるが構造的に話の面白さが第九地区以下にならざるを得ないので、特に主人公の設定に関しては明らかに失敗していると言わざるを得ない。

17位 キャプテン・フィリップス
SEALS万歳映画。そして今年唯一酔った作品。

18位 パシフィック・リム
世間での評価が高いのは分かるし評価したくなる気持ちも分かる。日本人は観る義務があるというのは映画史的に考えれば正にその通りだとは思う。けど個人的にはそこまで熱狂するほどのモノでは無かった。本作に熱狂している人というのは要は「細かい点には目を瞑っている」という事なのだろうが私にとっては全く以て細かい事では無く、それらは劇場で鑑賞しながらリアルタイムで何度も何度も脳裏にしこりを残し目についてしまったのであり、満足した点、気に入った点と同じ位不満点が出てきてしまった。

それら不満点は各所で指摘されているのであえてそれらをここで列挙するつもりはないが、敢えて挙げるとすればケレン味の足りなさとCGのショボさである。というかこの二つが一番大きい。特にCGに関しては最初のジプシー・デンジャーの発進シーンにおける凄まじいまでの装甲のハリボテ感に「あぁ・・・。」と色々と察してしまった程。悪い映画ではない、悪い映画では全くないのだがそこまでノれる、アガれるわけでもない。色々と惜しかった作品である。

19位 真夏の方程式
ここまで順位が低いのは偏に「動機」が弱いことによるもの。それ以外は本当に素晴らしかった。

20位 クロユリ団地
終盤の祈祷シーンと超現実的な照明以外はかなり良かった。そういえば日本のホラー映画を劇場で観たのは本作が初かもしれない。海外のカラッとしたホラーも良いが日本独特の湿度の高いジメっとしたホラーもやはり良いものである。

21位 RED/レッド リターンズ
「地味な」老人版エクスペンダブルズだった前作から「地味」がとれた本作。アクションシーン 、ロケーションの物量が共に増えたことによってテンポがよくなり見た目的にも面白くなっている。イ・ビョンホン演じる殺し屋はいなくても良かった気がするがまあこれは大人の事情という事なのだろう。しかし、あっちでもこっちでも脱いでいるのは忙しないというか何というか。それは兎も角個人的にはロータスのエキシージSが出てきただけで5億点なのだが。

かつてこれ程までに大見得を切ってエキシージが大活躍する映画があっただろうか。

22位 TED テッド
くまモン・・・くまモンは無ぇよ・・・!

23位 キャリー
まごうことなきクロエのアイドル映画。そしてそれ故に結構酷い。どう頑張っても「あの」クロエが虐められっ子のキャリーを演じるのは無理があり、肩幅が広く身体的な成長が著しいため文字通りキャリーを「演じている」ようにしか見えないのである。そもそも夜な夜な自警行為と称してギャングやチンピラを血祭りに上げているクロエがキャリーを演じるという事自体無理がありすぎる。クロエに罪はないが明らかにミスキャストである。まあ、クロエ・モレッツをスクリーンで観られるだけで個人的には大満足なのだが(オイ)。

24位 モンスターズ・ユニバーシティ
実は前作を未だ観ていないのだがそれでも十分に楽しめた本作。未見の作品ではあったが続編を作ると聞いたとき嫌な予感がしたのだが流石にそこは天下のピクサー、ぬかりは無かった。

25位 レ・ミゼラブル
ミュージカルだとは分かっていたがまさかこれほどまでに普通の会話のシーンが少ないとは。正直ツッコミどころ満載の脚本ではあるが歌と踊りに身を任せてしまえば些細なものである。

26位 ライジング・ドラゴン
ジャッキーの格闘シーンを観るだけで何故こんなにも胸が踊るのか。

27位 ブリングリング
イズラエル・ブルサード演じる語り手であり主人公マークの垢抜けなさがいい味を出している。どれほど盗みを行いブランド物の服を身に付け、クラブへ行ってドラッグをキメようと最後の最後で引け腰になるマークは小市民そのもの。出所しても周りに流され損な役回りを引き受けて生きていくのだろうかと思うとなかなか不憫である。実際の事件を元にしているためか冒頭から何度もマークの語りを挟んでくるため、事件を知らない人間が見ても結末が分かりきってしまい話自体の面白みが半減してしまっているのは残念。力を手にし全能感に溺れ堕ちていくのは人間の性ではあるが、これでもかと言わんばかりに全能感に浸っている彼女らの奔放っぷりが描かれるのはこれぞ犯罪映画というもの。

28位 G.I..ジョー バック2リベンジ
「Rods from God」がハリウッドの大資本によって映像化された最初で最後の映画(多分)。これが観れただけでもう十分である。まあ実際は打ち込まれた瞬間にあのように広域に衝撃が広がるわけではないと思うが、それでも実際に映像化しようとしたその心意気は表彰モノだろう。観せたい映像、やりたい事がはっきり伝わってくるので観ていて気持ちが良い。

29位 ワールド・ウォーZ
群衆シミュレーションと言えばMassiveがお馴染みだが本作では個別にAIを搭載させてシミュレーションを行うAgentsなるプログラムが使われているそうな。まあ技術の話は兎も角、何はともあれゾンビの壁登りのシーンだろう。あれだけで元がとれたと言っても過言ではない。

30位 言の葉の庭
御存知、新海誠作品最新作である本作。雨をテーマにしただけあって水への表現の拘りは見事なものである。「ほしのこえ」の頃から新海誠のアニメに対する表現のアプローチは一貫しており、本作の様に雨に焦点を絞ったとしてもそこから生まれたものはいつも通りのものだった。アニメーションの本質である「現実の誇張」。「ほしのこえ」の後個人のアニメーション作家が何人も生まれてきたが一貫して「アニメ的」表現の本質を追求してきたのは新海誠だけだったように感じる。と書くと他の作家が劣っているともとられかねないがそういうワケではなく、「ほしのこえ」から10年以上たった今でもアニメーションに対する技巧的なアプローチを続けるその姿勢はアニメーション作家である一方でともすれば職人的でも言えるのではないか、とそんなことを考えてしまう。そういえば「ヨヨ」「パテマ」の感想を書いていて思い出したが、よく考えるとこの三作品のテーマは一緒だったという事に今更ながら気付く。

31位 サカサマのパテマ
りょーちもが参加しているだけあって浮遊感を感じさせる作画は流石に良く出来ている。吉浦康裕によるSF作品という事で作風は「イヴの時間」よりも「ペイル・コクーン」に近い。吉浦作品は全体的に無機質な印象が強くキャラクターが感情的になる事が少ないのだが、本作では主人公パテマが所謂「元気いっぱいの女の子」タイプのキャラなのでそのせいもあってか前二作とは真逆の非常に暖かみのある作品になっている。

重力が異なる二つの世界が共存する世界という作画的な面からすればかなり厄介な題材を劇場長編第一作に選ぶ辺りかなり大胆に思えるが、恐らく予算の面でそれなりの規模の作品が作れそうだったのだろう。キャラデザは若干の垢抜けなさというか古臭さを感じてしまうが背景美術含め世界観の設定がしっかりしているのであまり気にはならない。ただ、パテマにとってのサカサマ側であるアイガの設定が若干テンプレ過ぎて新鮮味がなかったのが少々残念なところ。本作については語れば語るほどネタバレになってしまうのであまり多くは言えないが、吉浦康裕作品という事からも良くも悪くも一見の価値はあると言える

32位 魔女っこ姉妹のヨヨとネネ
ufotable初の劇場長編オリジナル作品。そして魔法少女モノ。
その功罪は兎も角、「まどマギ新編」が如何に「商業映画作品」として優れていたかを思い知らされる事となった。当然予算の問題、スタジオの体力の問題、続編というアドバンテージがある以上あちらの方が圧倒的に有利である事は言うまでもないのだが、単純に演出、脚本のレベルだけでもシャフトに比べて明らかに低い。伏線回収といった単純なものは言わずもがな、魔法少女である主人公ネネがこちら側に来てしまったことによる価値観のズレや異なる常識に直面した際の戸惑い等、表面的には描けている、描こうとしているのは分かるが如何せんツメが甘い。

特に顕著だったのが中盤でビハクに魔法をかけるシーン。
ここでは魔法が効かない事によってヨヨはいきなり泣き出すのだが「それ」についての概念、または感覚が欠落している場合にこの演出はおかしい。では何がおかしいのか。それは何に対して悲しんでいるのか、涙を流しているのかが不明瞭だからである。魔法が効かないという事実それ自体か、「概念」を理解した事による事態の把握か、ビハクに対してか。あの場合、魔法が効かない事によって発露する感情を順にシミュレートしてみると分かるのだが、まず最初に来るのは当然「困惑」であり次に「戸惑い」、それから「焦り」、そして「恐怖」、その後「悲しみ」となる。そして、かのシーンでは「恐怖」が描かれていなかった。「その」概念に直面した時、人はその喪失感からくる恐怖を「理解」してしまうが故に悲しんでしまう。大なり小なり悲しみとは恐怖によってもたらされるモノなのである。本作における重要なシーンでさえこんな有様なので当然他のシーンでもツメの甘い演出が散見されてしまう。

本作を構成する要素を単純化、既知に還元して抽出してみると「魔法少女」「異なる価値観の交流」「ぼくらのウォーゲーム」「サマーウォーズ」となる。まどマギが先行している以上同じ魔法少女モノとして嫌でも比較してしまうものであり、偶然か必然か根幹のテーマが同じであるのも分が悪かった。そして細田守の二作品。もともとウォーゲームの焼き直しに過ぎずあまり出来の宜しくないサマーウォーズに似ており、しかも本作の方が優れているかというとそういうワケでもないのでこれは正直厳しい。

特に本作では終盤の展開における「のろい屋姉妹」である事の必然性が薄いため、結果として主人公が自体を収集してもそのきっかけは主人公であるヨヨが起こしたものではないのでイマイチ盛り上がりに欠けるものになってしまっている。いや、盛り上がりはするのだがきっかけである「あれ」は本作のテーマとして一貫して描かれていたわけではなくクライマックスでいきなり「そういう展開」になったので戸惑いや歯切れの悪さを感じてしまうのである。この辺りが正に脚本、演出のツメの甘さと言える。

決して悪い作品では無いし良い所もある。ヨヨもネネも可愛いしとんがりのツッコミ演出も気持ちがいい。作画の質は劇場長編の名に恥じないクオリティであり、終盤のロボットの3DCGの出来も素晴らしいものである。ただオリジナル作品としてはいささかパンチに欠けるのも確か。悪くないが突出して良いわけでも無い。

33位 ホワイトハウス・ダウン
エメリッヒなのに気が利いてる!エメリッヒなのに!
チャニング・テイタムのダメ親父っぷりが板にハマっていた本作。911以降のテロリスト襲撃モノでありながら終始緊張感や悲壮感が漂うものでなく、あくまで娯楽作品として仕上げてあるのはある意味エメリッヒの作風とも言えるのではないか。「2012」の時は良くも悪くも全てが映像に振り回されていたのだが、本作はまるで人が変わったかの様に映画的演出がそこかしこに見受けられるのである。勿論「エメリッヒ作品にしては」という前置きがある上でなのだが。

だからこそエメリッヒの過去作を見てきた人程本作の(エメリッヒ作品としての)デキの良さには賞賛を贈りたくなるはずであり、贈らずにはいられない筈である。まさかエメリッヒ映画の展開に完全同意する日が来ようとは。そう、「地獄なんかに行かせてたまるか!」のシーンである。あそこで親指が立たない人はいないだろう。そしてクライマックスでの謎の感動。よもやエメリッヒ作品で目頭が熱くなるとは。

34位 アフター・アース
SFアクション映画ではなかった。シャマラン映画なのだからそれを期待するのが間違いだったのだが。それにしても所謂アメリカ映画的なSF美術にはしたくなかったのだろう、無国籍、というよりアジアや中東系の色を感じる内装が多かったが、宇宙に進出していながら妙にアナログチックなのは美術としてはアリなのは分かるが危機意識が低くないだろうか、というのは野暮か。事実、主人公二人を残して全員死亡だったのだから。それにしても銃器はないのか銃器は。

35位 ジャッジ・ドレッド
本当にマスクを取らなかった。それだけで合格。

36位 アイアンマン3
2とどっこいどっこいというのが正直なところ。良い所もあるが文句を言いたくなる所も多い。特にクライマックスでの各アイアンマンスーツの扱いの演出が酷い。というか気が利いてない。仮にも3部作のシメを飾る作品ならば歴代のアイアンマンスーツを何故登場させなかったのか。1のマークI・II・III、2のマークIV・V、アベンジャーズのマークVI・VII。それぞれに遠隔用に改造してスターク邸襲撃時に緊急格納しておけばクライマックスの「援軍」のシーンで歴代のスーツの後ろにマーク42以降の数多のスーツが並ぶという壮観な場面になるというのに。

それに歴代のスーツがあれば最後の止めを刺す場面でマークIから順番に攻撃を重ねていって最後は同じくマーク42で自爆させるといった感じにすれば3作目のクライマックスとしての意味合いも出てくるというもの。そして最後の花火のシーンは言わずもがな。マーク42以降から順に遡って散っていき最後にマークIがその身を咲かせる。ファンが観たかった映像はそういうものではなかったのか。お前が観たいだけだろうと言われればその通りなのだが。兎に角歴代のスーツの扱いには心底納得がいかない。

37位 攻殻機動隊ARISE border:2 [2回]
アクションシーンが増えた事によって退屈はしなくなった。「ロジコマ」の「スパイダーマン」というのは完全に狙っているのだろうが個人的には嫌いではない。というか空間を意識させるアクションは寧ろ大歓迎である。お決まりの戦車戦は歴代で一番地味なものに。逃げる時しか躍動感が出ないというのは戦闘の演出として如何なものか。脚本に関しては本作では休息することなく全てがリニアに進行しており、タイムリミットという要素も含めて物語にスピード感が生まれていたのは60分という構成を考えると良かったのではないかと思う。ただ、オチがSACに良くある話に落ち着いてしまったのは本シリーズの存在意義としては如何なものではいかと。まあ、サイトーのクズっぷりは良かった。

38位 サプライズ
休暇中の山荘で襲撃という今までに百万回位使われたであろうありきたりなシチュエーションなのだが、ムダを省いて冒頭から飛ばしているのは好感が持てる。それと大抵このジャンルでは襲撃される側が少人数である事がセオリーなのだが本作は何と8人もの大所帯である。しかも全員集合している夕食時に襲撃されるというのは結構新鮮。そして明らかに笑わせようとしているスプラッター描写。これ見よがしにスーパースローになった瞬間誰もが悟っただろう。これは見世物小屋だ、と。そんなものだから中盤からの「とある転換」は待ってましたと言わんばかりの展開である。日本版はタイトルが変更されてしまったが正に「You`re next」な内容だった。

39位 47 RONIN
史実をモデルにしたパラレルの物語になると思ったら意外や意外、演出、脚本はそこまで奇天烈なものではなかった。しかしながら妖怪や化け物などの要素が中途半端すぎてどちらにも振り切れていないのが残念な所。要は日本の侍は真面目に演出すればするほど地味になってしまうのでマーケティング上あまり宜しくないというのが制作側の思惑なのだろうが、怪物や妖怪、妖術が存在しながら切腹の描写などは妙に真面目に演出しているので何だかバランスが悪い。クオリティが低いわけではなく刀を使った集団での殺陣もまともなもので、クライマックスの暗殺計画もベタではあるが良く出来ており気分も盛り上がったもの事実。やはりハリウッド映画である事が足枷となったか。

40位 オズ はじまりの戦い
陶器の少女にひたすら萌える映画。

41位 エンド・オブ・ホワイトハウス
「ホワイトハウス・ダウン」のせいで全く内容を覚えていない。これは困った。

42位 クラウド アトラス
中盤までの一点に向かって何かが起こりそうな雰囲気は非常に良かったのだが、そこから一転して終盤までは正に尻すぼみという言葉が相応しい何とも歯切れの悪い幕切れに。異なる時代を同時進行で描く以上、それぞれがある一点へと収束し「何か」が結実するというのは構造的に避けられないと思うのだが、そうならなかった場合というのはこんなにも気持ち悪いものなのか。

43位 ジャックと天空の巨人
ヌルい。色んな意味で。

44位 スタードライバー THE MOVIE
実質TVシリーズの総集編。申し訳程度の新規作画部分はよく動いていて申し分無かったのだが、150分の尺に対して5分程度でありそれを事前に全く告知していなかったのは印象として非常に宜しくない。と言いながら私の場合、対ザメク戦でのタウバーンが地球をバックに飛行する1カットを観る為だけにわざわざ劇場へ行ったので満足していないというワケではないのだが。

45位 オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ
作品そのものに罪は無い。本作、伏見ミリオン座の17時の回で見たのだが、空調の暖気をはっきり感じ取れるほど暖房が効いていたため開始5分で寝落ちするという映画鑑賞体験史上初の異常事態に。恐らく10分程度だったのだろうが、その後も暖房がついたり消えたりを繰り返し暖房がつく度に頭がボーっとして2回程寝落ちするハメに。当然映画の内容はツギハギだらけである。そして6時以降の回に特有の空調から微かに漂う焼肉の香ばしい匂い。ああ、やはり伏見ミリオン座は昼間に限る。

46位 藁の楯
トラック宙返りシーンがピーク。良い部分もあるがそれ以上に悪い部分が突出しているのでどうしたものか。特に「看護婦のカタカタ」の場面は思わずコントか!と言いそうになった程。アクションシーン満載の前半に対して終盤に向かう程人間の内側の話にシフトしていく展開は人によっては尻すぼみだと感じてしまうのだろうが、個人的には良かったと思う。だからこそ勿体ない事極まりない。

47位 攻殻機動隊ARISE border:1
作画レベルはSACと同レベル。もともと「劇場作品」ではないのだから「GITS」(95年)「INNOCENCE」(04年)のような密度の濃い作画と、凝りに凝ったレイアウトや照明は期待してはいけないのだろうが、それにしてもあまりにも絵作りが貧相すぎる。観たあとに印象に残る「絵」が何もない。ややこしい脚本もそれに輪をかけてしまっている。そしてそれは「声」についても同様である。誰がどんな声だったか全く思い出せない。楽曲については言わずもがな。
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。