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「プリキュア」EDダンスから見る技術、演出の変遷と3DCGアニメの可能性 4/5 [アニメCG]

前回「プリキュア」EDダンスから見る技術、演出の変遷と3DCGアニメの可能性 3/5

「スマイルプリキュア!」(12年)
前期(第1話 - 第24話) エンディングテーマ曲「イェイ!イェイ!イェイ!」
登場キャラクター キュアハッピー(ピンク色)、キュアサニー(オレンジ色)、キュアピース(黄色)、キュアマーチ(緑色)、キュアビューティ(青色)
振り付け 前田 健

頭身が高くリアル寄りだった「スイート」から「Yes!プリキュア5」「Yes!プリキュア5GoGo!」でキャラクターデザインを担当した川村敏江による、頭身の低く目の大きいデフォルメされたデザインとなった「スマイルプリキュア!」前期ED「イェイ!イェイ!イェイ!」(凄い曲名だ)。前期から全プリキュアメンバーが揃っているのは3DCG導入後は「スマイル」が初でありしかも人数が5人となっている。光沢が抑えられセル画のベタ塗り表現に近かった「スイート」とは異なり、背景、衣装含め特に髪の光沢表現が目立つ様な処理がなされている。キャラクターそれぞれが統一された発色の良い色でデザインされている事からおそらく意図的に光沢のある表現にしているのだろう。「スマイルプリキュア」という名前から察するに本作では笑顔が肝となっているのだろうが、そう考えてみるとこの発色の良いデザインというのは作品のカラーにあっているのかもしれない。

「スマイル」のEDに特徴的なのが「イェイ!イェイ!イェイ!」のAメロBメロで分かるように、画面端でキャラが踊っているその中央のスクリーンで同じく3DCGのキャラによるアニメーションが展開しているのだが、何とこのスクリーン内のアニメーション、全てアニメーターによる手付けで行っているそうな。となると冒頭で金田作画的に飛び上がるキュアハッピーも当然手付けになるのだろうが、逆に考えるとああいった正にアニメ的な誇張された動きというのはアニメーターが手作業で行っていかなければならないという事にもなる。まあ、モーションアクターにとって物理的に不可能であるという事も当然あるのだが。しかし、さらに言えば集中線やブラー処理含め3DCGモデルをアニメーターが手付けで動かせばここまでのものを作る事が可能であるという3DCGアニメの可能性、将来性に対する証左でもあるとも言えるのではないか、何てことも考えてしまう。ただ、後期も含めこの画面内スクリーンでアニメーションを見せるというのは本末転倒な気がするので正直どうかとは思う。

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同じく冒頭のキュアハッピーがアップになるシーンで顔全体の輪郭線を良く見ると分かるのだが、前髪や頬のラインに顕著になっているように線の太さの調整が「スイート」のときより細かくなり、これによってより手書きに近い表現をすることが可能にもなっている。ただ、これも上記のもの同様「CEDEC 2012」で言われていたようにこれらの調整は全て人の手によるものなのでまだまだ効率化というのは難しいようではある。

「イェイ!イェイ!イェイ!」ではキャラクターのモデリングに関してはクオリティの高かった「スイート」と比べてさらに精度が上がっており、バストアップ時に良く分かる「前髪の揺れ」(地味ながら動いている)やキュアハッピーのツインテール、マーチのポニーテール、ピースのポニー(バナナ?)テールのそれぞれの結んだ先の髪の束の重さの表現が自然になっており、結んでいる付け根の挙動も自然になっていたり、脚を伸ばした際に見える膝の皿の凹凸による陰影表現の追加、「CEDEC 2012」で言及された腕や脚にできた膨らみによって、より肉体的、人間的な「キャラクターの生命」が感じられるようになった「筋肉表現」の取り入れ等モデリングでのデフォルメの程度が近く違和感の大きかった「ハートキャッチ」と比較してもかなり自然な表現になっている。

振り付けは3DCGダンス導入史上最も運動量の大きいダンスとなっており、跳ねる動作で体全体を使って表現する動作が多く、特にサビでの「♪イェイ!イェイ!イェイ!♪」で小刻みにジャンプしてからの「♪ピースで ポーズ~♪」でしゃがんでから間髪いれずに立ち上がってポーズをする一連の振り付けは見た目にもかなり激しい。高いBPMとスパッツを着用しているのも含め「スマイル」ではメンバー全員にアグレッシブな印象を受ける。特にキュアハッピー、サニー、マーチはどう見ても体育会系にしか見えない。そう考えると「スマイルプリキュア」という作品名は正にその通りなのかもしれない。

そして、特筆すべき点としてサビ以降の太陽と月による目を見張る様な巨大かつダイナミックなライティングがある。彼方まで広がる水面に五人だけが立つステージに射す太陽光によって生まれる逆光での陰影表現と大きな虹と波立つ水面。その幻想的な空間表現に初見時では思わず鳥肌が立ってしまった程。このライティングによって3DCG的な質感が浮き彫りになってしまっている部分もあるが、画面の綺麗さとしては歴代随一といっても過言ではないだろう。因みにこのシーン、水面に反射している像が水面の波に合わせて揺らめいていたりと芸が細かい。
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後期(第25話- 第48話) エンディングテーマ曲「満開*スマイル!」
登場キャラクター キュアハッピー(ピンク色)、キュアサニー(オレンジ色)、キュアピース(黄色)、キュアマーチ(緑色)、キュアビューティ(青色)
振り付け 前田 健


前に書いたように「フレッシュ」以降のプリキュアEDシリーズは前期と後期でそれぞれ技術と演出に変化が見られ、その変化の差とキャラクターが増えるという視覚的変化、本編の内容の反映という点が映像の見応えにも繋がっていたわけである。だが、そこにきてこの後期ED「満開*スマイル!」は何故か表現のレベルが後退しているのである。あくまで素人目からの判断となるので専門的な視点からすれば細かく変化しているのかもしれないが、正直良く分からない。

先ず、前期に比べて何故かモデリングの被り物感が増すという謎の事態が起きており、勿論個人差はあるのだが分析的な見方をしなくても感じる生理的、本能的な違和感が何故か「満開*スマイル!」では感じられるのである。恐らく、正面からのアングルが多くかつ正面を向いた振り付けの多さとそれによる眼球の稼動範囲が狭い事により、「フレッシュ」前期EDの時に言及した「張り付いたような笑顔」に見えてしまうのではないかと考えられる。特にAメロでのキュアハッピーが画面手前に視線を固定したまま16小節(64カウント)の間踊り続ける部分は正直気味が悪い。

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笑顔の際に口角は上がっているのだが目の大きさが殆ど変わらないので目だけがハリボテのように見えてしまうのも原因なのかもしれない。「スマイル」では身体に対して顔の大きさが若干大きいデザインなので目のハリボテ感が被り物感に繋がっているとも考えたのだが「イェイ!イェイ!イェイ!」では別にそのような事は無い。というか前期と後期で見比べてみると前期の方が明らかに表情が豊かに見えるのだが一体コレはどうしたものか。また、前期ではキャラ同士でアイコンタクトを行うなどダンス以外の表現も出来ていたのに「満開*スマイル!」ではそういったキャラ同士の絡みもなく全員が終始前を向いて踊っているので全く面白みが無い。

振り付けに関しても、Aメロの16小節(64カウント)は五人それぞれのパターンがあるのだが、それにしても16小節もの間ほぼ左右のステップのみというのは一体どういうことなのか。さすがのマエケンもネタ切れだったのだろうか等と考えてしまいそうなほど手抜き感が漂っている。振り付け全体で見ても「イェイ!イェイ!イェイ!」が激しかったとはいえ前期にあったようなアグレッシブな感じが全く無く変わりに「肘を曲げて回す」という見た目が非常に地味な動作が多くなっており妙に全体的にこじんまりとしてしまった印象は拭えない。背景に関しても前期のようなダイナミックなライティングに変わるような表現や舞台装置も無くいので、ステージに花が咲いていながら映像的に華が無いものになってしまっている。

最初見た時は思わず前期と後期の順番を間違ってしまったのかと思ってしまったほどで、曲、歌詞、振り付け、背景、演出どれをとっても「イェイ!イェイ!イェイ!」の方が後期に相応しいと個人的には思う。いや、サビからのあの幻想的な映像は話がクライマックスへと向かっていく後期にこそ相応しいものなのではないか。もし自分がリアルタイムで観ていたとして40話以降の話が展開する中でこのEDを見せられても反応に困るというか、気分がノれないと思うのだが実際はどうだったのだろうか。

何だか不満点ばかり書いてしまったが正直「満開*スマイル!」は「イェイ!イェイ!イェイ!」と比較した場合、褒められる点は無い。感覚的な表現で申し訳ないが観ていて「気持ち良くない」のである。

続き
「プリキュア」EDダンスから見る技術、演出の変遷と3DCGアニメの可能性 5/5


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